バロックの時代23-フランス幻の画家ラトゥール
2020.10.25 10:55
フランスが美の国などと言われるのはもっと後代で、この頃はイタリア、スペイン、ネーデルランドの後塵を拝している。絵画の黄金時代といわれるバロックで、フランスが「威信をかけて」探し出してきた画家が「蝋燭の画家」ジョルジュ・ラ・トゥールである。
ラトゥールは20世紀まで忘れられ、作品は60点ほどしか確認されておらず、生涯は謎である。しかしルイ13世の「国王付画家」であり、評価はされていた。さらに彼の作品が不明になったのは、ロレーヌ公国に居たこともかかわっている。公国は神聖ローマだったが、30年戦争中フランスが侵入、その後も係争の地だった。
ラトゥールのバロックの光も内面を照らす。それも蝋燭の乏しい光だが、赤系の温かさがある。不安な時代に人々が集まり、祈る光だろうか。彼は「いかさま師」で、人間の罪をも描く画家でもある。
彼は少年イエスと養父ヨセフの絵を2枚描いている。彼には息子が居り、その成長を祈るような気持ちで見守る姿が最高傑作「大工ヨセフ」に表れている。残念ながら1652年、この地方を襲ったペストによって、妻、子をなくし、そして自らも亡くなったとされている。
下左は「大工ヨセフ」右は「悔い改めるマグダラのマリア」