家族7人
朝からお雑煮にした
もちろん、らんちゃんがひらったモチまきのもちだ
保育園のお迎えの前に家の方へ回ってみる
大屋根の家が田んぼのこっちからでもよく見える
もう誰もいないと思っていたが、ふたり棟梁と、監督の車が停まっている
素通りしようかとふっと思いながらも、車を入れた
「もうあしたには屋根が終わりますよ」
きのうのお礼を言いながらあいさつをする
あたしでさえ、昨日の疲れがどっと残っているのに
仕事とはいえ、感心しながら大屋根をあおぐ
ふわ~っと切り立ての木のいい匂いに
思いきり深呼吸をする
「あ~~いい匂い」
そうですか?においますかと
自分たちは慣れてしまって匂わないという
ずっと木はこのまま匂うんですよ
住んでいると慣れて匂わなくなる
でも人が来れば「わ~いい匂い」って言われるんです
不思議ですね
この匂いの中にいるだけで
アレルギー
喘息とかアトピーとか消えてしまいそうだと本気で思う
木ってすごいのかもしれない
あれからいろんなヒトから声をかけられたんですよ~
なんか涙が出そうになったって言われる人が多くって。
「ご主人の挨拶が良かったですもん。
熱意が伝わってきました。
じぶんも、うしろで涙ぐみましたもん、いや、ほんとうに」
身内にも、よかったろ~よかったろ~と家でも話をしたそうだ
あしたあいさつするってよ
なんの?おれが?いやったい
いつもの調子だ
何て言うと?
ちょっと練習してみ~
幸い、パパとママはあしたの準備でいなかったかで、
らんちゃんとあおちゃんにGIがあいさつするけん、きいとってくださ~い
なになに~と体が小刻みにゆれる小さなふたり
お~わかったたい!
いや、そういう挨拶はせん
家族ば紹介する
おれ、今までで一番ふとか声ばだすぜ!
やるときゃやるったい。まかせとけ
そうね、じゃあひとりづつ返事ばさせたら
ね。さ~練習するば~い
しらいしみほ!!
はいっ!!
ね、こんな風に大きくいいお返事よ~
手もピシッとあげて!
さとうらんっ!!
ええ~~もじもじくねらすらんらん
さとうあおっ!!
はいっ!!
あおちゃんじょうず~~~!!
そんなことしてたらふたりが帰ってきた
練習に入れようとしたが、本番のたのしみで!ととめられた。
でも言っとかんとわからんやん
で、言ったかどうかは忘れてしまったけど
空高く見上げたステージの上で
監督の「もちまきをさせていただきま~す」で拍手がわき起こり
仕切りであいさつが始まった
はじめ、GIだけが登ると聞いていたがカイトもふたりで登れるようになったから
「それでは挨拶お願いします!!」の合図で
「カイト、先に言え!」で笑いが起きた
「みなさんこんにちわ~」かいとが通る声で挨拶をした
きこえんきこえん~~笑。
「わざわざ足を運んで頂きありがとうございます
これから家を建て、仕事と子育て、
両立できるよう、頑張っていきますので応援よろしくお願いします」
おお~21になったばかりの若大将は
いきなり上がって、50人ほどいるギャラリーを真下に
これだけ言えるとは大したもんだ
盛大な拍手をもらった
「モゴモゴモゴモゴ・・おつかれさまでした、ありがとうございました」
これをあとに、らんちゃんからGI!声が小さかった!とつっこまれるのだ
だんだん声が太くなり
「っと~、来年3月から7人家族でこちらに引っ越してきたいと思います」
おおぉぉ~~の反応
「っでぇ、まず家族の紹介で」
めっちゃ声を張り上げ、
「しらいしみほっ!!」
「は~~い!!!」ピシッと練習通りの手をあげGIより太い声で返事した
あらま、拍手をありがとうございます
「さとうかいとぉ!!」
「はあ~い!」まっすぐ手も上がった
「さとうりおんっ!!」
「はいっ!」短く剣道仕込みの返事
「さとうらんっ!!」
「はーーい!!」
ぴしっと一本の線がとおるしっかりした大きな声で返事をしたらんちゃん
「さとうあおっ!!」
・・・
「さとうれいっ!!」
ママやBAが返事した
あれあれ~
練習ではもにょもにょだったらんちゃんが
みんなバラバラでいるのに
どこからか高い声で返事をしたのには驚いた
あおちゃんは、言ってない~と体をくねらせた
でも、あおちゃんと呼ばれたあとに何やら聞こえて拍手が起きたから
言ったのかも知れない
この地で7人生きていく決意の野太い声だった