宇宙開発
https://www.afpbb.com/articles/-/3119883?cx_part=related_yahoo 【月周回旅行 ─ 考えられる人体への影響】 より
【3月2日 AFP】民間人2人の月周回旅行を2018年に計画していると、米宇宙開発企業スペースX(SpaceX)が今週発表したが、この計画について専門家らは、健康への影響はあるものの、大半は軽微で、一時的なものになるとの意見で一致しているようだ。
英ロンドン(London)の研究機関「CASE Medicine」のダニエル・グラント(Daniel Grant)氏は「宇宙に旅立つすべての飛行士と同様に、彼らはひどい乗り物酔いに悩まされるだろう」とAFPの取材に語った。無重力状態では、内耳の平衡感覚に混乱が生じるためだという。CASEでは、極限環境における医療と生理機能に関する研究が行われている。
乗り物酔いから回復するまでの時間は人それぞれで、飛行士によっては数日を要するケースもこれまでみられたという。今回の月周回旅行は1週間の計画で行われるため、この影響は小さくない。
自撮りファンにとって残念なのは、地球上では重力によって下方に引っ張られている体液が、無重力環境では上方に広がるため顔がむくむことだ(脚は細くなる)。これは放尿の際にも問題となり得る──無重力の環境では、液体が宙に浮いてしまうからだ。
無重力空間では、骨や筋肉への影響もある。ただ、1週間だけなら持続的な衰えはないだろうというのが大方の見方だ。
宇宙旅行における人体への影響としては、その他にも、突発的な閉所恐怖症や睡眠周期の乱れが考えられる。後者をめぐっては、地球帰還時のひどい時差ボケなどが生じるとされる。■「極めて健康」でない人も
ドイツ航空宇宙センター(DLR)の放射線生物学専門家、トマス・ベルガー(Thomas Berger)氏は、こうした短期間の旅行では宇宙放射線による被ばく線量は低いと考えられるが、「リスクがまったくないというわけではない」と指摘する。
いわゆる「太陽プロトン現象」が起きると、エネルギーの高い陽子の量が突然増加するため、被ばくリスクが高まるというのだ。
1972年に大規模な太陽プロトン現象が観測されている。当時、プロトン現象の発生をまたぐ形で2度のアポロ計画が実行されていたが、ミッション中に起きることがなかったため、飛行士が被ばくすることはなかった。
他方でグラント氏は、これまで宇宙に送られてきたのは、数か月にわたる訓練と健康チェックを施された「極めて健康な人」ばかりだったと指摘する。「宇宙旅行では、健康でない人が宇宙に送られるケースもあるだろう。もし彼らが薬を服用していたり、病歴があったりする場合、宇宙でどのように反応するかは分からない。そうしたケースを過去に一度も経験していないためだ」と説明した。
このような未知の領域についてベルガ―氏は、「もちろんいろいろなリスクがある」と述べた上で、「人々を怖がらせる必要はない。ただ、可能性のあるリスクについては周知させておく必要がある。最初に挙げられるのは、ロケットに乗ることのリスクだ」と語った。(c)AFP/Laurence COUSTAL / Mariëtte Le Roux
https://www.afpbb.com/articles/-/3306645?cx_part=related_yahoo 【月面の宇宙放射線、ISSの2.6倍 「滞在2か月が限度」】より
【9月26日 AFP】米国は今後10年以内に再び人類を月へと送る計画を進めているが、未来の宇宙飛行士が直面する最大の危険の一つが、健康に長期的な影響を及ぼす可能性のある宇宙放射線だ。白内障やがん、神経変性疾患など、さまざまな病気を引き起こす恐れがあると指摘されている。
1960年代から1970年代にかけてのアポロ(Apollo)計画のミッションでは、数日間であれば人間が月面で過ごしても安全であることは証明されたが、宇宙飛行士がどれくらい月に滞在できるのかを計算するのに必要な日々の放射線量を、米航空宇宙局(NASA)は測定していなかった。
だが、この謎は25日、中国・ドイツ合同研究チームが科学誌「サイエンス・アドバンシス(Science Advances)」に掲載した、中国の月探査機「嫦娥(Chang'e)4号」が2019年に実施した実験の結果によって明らかになった。
論文の共同執筆者で、独キール大学(University of Kiel)の天体物理学者であるロバート・ウィマーシュバイングルーバー(Robert Wimmer-Schweingruber)氏は「月面の放射線量は、国際宇宙ステーション(ISS)内よりも2~3倍高い」と話す。
月への往復には約2週間かかるため、その分の被ばく量も考慮すると「月面に滞在できるのはおよそ2か月が限度」だという。
放射線量は、ヒト組織が吸収する量を数値化した単位「シーベルト」で表される。
研究チームによると、月面での被ばく量は1日当たり1369マイクロシーベルトで、ISS乗組員の1日当たりの被ばく量よりも約2.6倍高かった。
この違いは、部分的にではあるが、ISSが地球の「磁気の泡」で守られているからだ。これは磁気圏とも呼ばれ、宇宙放射線の大半を防御してくれる。
また、ウィマーシュバイングルーバー氏によると「月面で測定された放射線量は、地球の表面よりも約200倍高く、米ニューヨーク発・独フランクフルト行きの便よりも5~10倍高い」という。
ただ、もし2~3か月を超えて月面に滞在したい場合、対処法が一つある。住居を建設し、その表面を厚さ80センチの月面の土壌で覆うことにより、放射線の被ばくから身を守ることができるという。(c)AFP
https://www.afpbb.com/articles/-/3309712 【国際宇宙協力の「アルテミス協定」、日本など署名 NASA】 より
国際宇宙協力の「アルテミス協定」、日本など署名 NASA
パナマの首都パナマ市から見た月(2020年10月10日撮影)。(c)Luis ACOSTA / AFP
【10月14日 AFP】米航空宇宙局(NASA)は13日、月など将来の宇宙探査の指針を示した国際合意「アルテミス協定(Artemis Accord)」に8か国が署名したと発表した。
この協定の締結により、原加盟国オーストラリア、カナダ、イタリア、日本、ルクセンブルク、アラブ首長国連邦(UAE)、英国、そして米国がNASAの「アルテミス計画」に参加する道筋が整った。同計画では2024年までに月面への有人着陸を実現することを目指している。
NASAのジム・ブライデンスタイン(Jim Bridenstine)長官は「アルテミスは史上最も幅広く、多様な国際的有人宇宙探査計画であり、アルテミス協定はこの唯一のグローバル連合の設立手段となる」と表明。
「きょうの署名で、われわれは月の探査のためにパートナー各国と団結し、全人類が享受することができる安全で平和、かつ豊かな宇宙の未来を築くことにつながる、非常に重要な基本方針が確立される」と説明した。
アルテミス計画はNASAが主導するものの、月面で持続的に活動する体制を構築するには国際的なパートナーシップが必要だとNASAは強調している。NASAはさらに、このようなパートナーシップは、将来の有人火星探査ミッションに向けて重要だとみている。(c)AFP