日光浴と甲羅干し
先日投稿した記事、「オオカナダモで甲羅干し」にコメントをして下さった方々、ありがとうございました。
・甲羅干しではなく、日光浴では?
・水草に子ガメがよく隠れるのを見る
・アカミミガメは水草をよく食べている
・水温との因果関係がありそう
というコメントを頂いた。
※先日投稿した記事は以下参照
このコメントを踏まえて、改めていくつかの疑問を整理してみた。
まずはなぜ、アカミミガメは水草上で「甲羅干し」していたのか?についてだ。
確かに、甲羅を干す目的ではなく、日光を照射する目的であれば、体が半分以上水に沈んでいても良いのかもしれない。
つまり、日光浴をしていたと考えられる。
(これはコメントいただいた方のご指摘通りだ。)
…とここでハッとした。
今まで私は、「日光浴」と「甲羅干し」をごっちゃにして考えていたことに気が付いた。
日光浴、甲羅干し…用語(生物学的専門用語)では、なんと言うのだろうか?
気になって、少し調べてみた。
日本のほとんどの文献では、「日光浴=甲羅干し」という意味で表記されている。
しかし実際は、微妙に概念が違うように思う。
甲羅干しとは、文字通り日光を浴びて甲羅を干すことだ。
その目的は、
①カメ類は変温動物であるために体温を上げる必要があること
②ビタミンDの生成に紫外線を必要とすること
③身体にくっついている寄生虫や細菌を落とすために甲羅(身体)を乾かすこと
の3つだ。
私が今回、水面上でアカミミガメが「甲羅干し」をしている行動に違和感を覚えたのは、③の目的を果たしておらず、体を乾かしていないかったからだ。
ところが、海外のカメの本を読んでいると、水面上でアカミミガメが「basking」している行動はよく見られるとのこと。
英語論文ではこのような生態行動を、上記のように「basking」と表記しており、和訳は「日光浴」となる。
つまり生物学的に正しい用語は「basking=日光浴」であるようだ。
日光浴の目的を整理すると、
①カメ類は変温動物であるために体温を上げる必要があること
②ビタミンDの生成に紫外線を必要とすること
(③身体にくっついている寄生虫や細菌を落とすために甲羅(身体)を乾かすこと)
となり、③は絶対要件ではない、ということがわかった。
つまり「日光浴≠甲羅干し」であり、二つの言葉の意味が微妙に違うということもわかる。
甲羅干しは甲羅を干すことが目的であるのに対し、日光浴(=basking)は「カメは甲羅を干すこともある」というニュアンスにとどまっているのだ。
…どうやら「甲羅干し」という言葉は、日本独自の言葉であるらしい。
日本固有種であるニホンイシガメでは、水面上で日光浴を行う姿を目撃した記録はない。
外来種が移入するよりずっと前。
昔々、日本語を作った日本人はカメを観察していて、「甲羅干し」と言う言葉を使っていても、なんの違和感もなかったのだろう。
しかし外来種が混入している現在、言葉の意味は「日光浴≠甲羅干し」となった。
もしかしたら、外来種が移入したことが「日光浴」と「甲羅干し」の意味をあやふやにした、要因なのかもしれない。
そうであれば外来種問題って、生物への影響だけでなく、文化や人々の言語へも大きな影響を持っているように思える。
外来種問題。
うん。奥が深い。
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