Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

「なみ」スージー・リー Suzy Lee

2016.08.12 09:45

今日は夏らしい絵本を。スージー・リーの「なみ」です。

文字のない絵本で、絵だけでストーリーを読ませる表現が圧巻の、素晴らしい絵本ですね。

一人の女の子が母親と海へと遊びに来て、波と戯れる。

その様子が描かれています。

それだけと言われればそうなのですが、よせてはかえす波の表現、女の子と海との駆け引き、海/波だけ青く色付けして描き、それ以外をモノクロで描いく、しかしそれはお話の展開で徐々に変わっていき、そして本と言う形には避けられない、見開きの絵を描いた時には、右のページと左のページでどうしても絵が切れてしまう、ということを逆にメリットとして利用した仕掛け、などなど、文字のない絵本にも関わらず、読むべき点が数多くあり、読む度に発見のあるすごい絵本なんです。

幼いころに海へ遊びに行った記憶が甘い感覚とともに蘇る、素敵な絵本でもあります。

前回引用しました長田弘さんの「記憶のつくり方」の中の言葉なのですが、あれは「海を見に」という一篇の最後の部分なのでした。

前回引用文より少しだけ前から再び引用させて下さい。この絵本とも響きあう部分が多くあると感じましたので。

「海を見にゆく。それは、わたしには、秘密の言葉のように親しい言葉であり、秘密の行為のように親しい行為だった。何をしにゆくわけでもなく、ただ、海を見にゆくということにすぎなかったが、海からの帰りには、人生にはどんな形容詞もいらないというごく平凡な真実が、靴のなかにのこる砂粒のように、胸にのこった。

一人の日々を深くするものがあるなら、それは、どれだけ少ない言葉でやってゆけるかで、どれだけ多くの言葉でではない」


当店在庫はこちら

なみ」スージー・リー