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Miura Matsuo PDF Books 2020

熱帯魚電子ブックのダウンロード

2020.10.02 10:32

熱帯魚

10/02/2020 19:32:14, , 吉田 修一


によって 吉田 修一

4.8 5つ星のうち26 人の読者

ファイル名 : 熱帯魚.pdf

ファイルサイズ : 18.23 MB

若い大工の大輔は子連れの美女、真実と同棲している。そこに引きこもり気味の大輔の義理の弟・光男が転がり込み、さらに部屋の大家である先生も家族同然だ。不思議な共同生活のなかで、大輔と真実のあいだには微妙な温度差が生じて……。ひりひりする恋を描く、クールな青春小説。表題作のほか、煮詰まった二組のカップルの微妙な感情のゆれを緻密に描き出す「グリンピース」、外資サラリーマンの奇妙な休暇と出会いが短篇ながら忘れがたい「突風」を収録。

熱帯魚を読んだ後、読者のコメントの下に見つけるでしょう。 参考までにご検討ください。

表題作「熱帯魚」は自分が愛されたい、もっと一般化していうと、実は自分がそうされたいのに、他人が自分にそれを望んでいるから、お節介にならない程度にそうしてやっているのだと自分で信じきっている青年(美人で子持ちの女と同棲中)のお話。なので、普通にイタイ。今回の主人公は無職ではなくガテン系でも高給取りの大工。が、まだ現場を任されたことはない。二年間だけ兄弟だった同居人の飼育している熱帯魚のイメージがラストでプールの底を舞い泳ぐ使い捨てライターの群れに変わる辺りは鮮やかだが、蘆花公園でカラスを捕まえるシーンに見られるように、全体的にはモノクロームで過ぎ去ってしまった夏の印象だった。「グリーンピース」は、理由はないがグリーンピース好きの職探し中の青年が恋人に真剣にグリーンピースをぶつけたことがきっかけで、恋人に家を出て行かれるお話。もっとも出て行けといって車のキーを彼女に渡したのは主人公の方で、しかもそこは彼女のアパートで……といった辺りが巧み。缶コーヒーにマジックペンでそのときの偽らざる(しかし本気ではない)気持ちを書くのが癖だったりするところも……病気の祖父の年金で暮らしている情けなさが秀逸。彼女がキレて出て行って、共通の友人たちと浮気しまくろうと(ただし、実際にはひとり止まり)することころが良い。「突風」は(詳しくは書いてないけど)証券会社勤務の高給取りの青年が休暇でたまたま出向いた千葉の田舎の民宿でアルバイトする様子を描いたお話。最後に少しだけ気の触れた民宿の中年だが美人の奥さんを何とかその状況から救い出そうと夜のドライブに出かけるのだが、主人公自身が自分から逃げ出せないことを悟って、帰りの電車賃(実は当面の生活費)を渡して新宿駅で奥さんを降ろすシーンの優しい残酷さが秀逸。一週間後に同じ場所で会おう、と奥さんの脱出を支援するためにした約束を思い出すのが三週間後という辺りが吉田節。当然、再会するシーンは描かれていない(しかも、待たれることがぞっとするくらいに嫌いという設定の主人公)。これまで読んだ作品で共通していえるのは主人公(または語り手)と、場合によっては主人公周辺の人物の痛さで、続けて読んでいると本当に自殺したくなってくるところが太宰と似ているかもしれない。本当に死ぬ気がなかったのに死んでしまった太宰と違い、予定調和的な死を予感していた三島の作品に死の影がないのが面白い(もちろん登場人物が死なないということではない)。だから、口に出していうと「えっ!」という顔をされる「潮騒」が好きなのかもしれない。いま読めば印象が違うかもしれないが、人工的な生の見事な鮮やかさが、そこにはあった。共通していえるといえば、おそらくそうはしないだろうけど、でも、もしかしたらそうするかもしれないという終わり方が多いような気がする。総じて情けない主人公の将来を読者に心配させる書き方とでもいうか……