秋吹く風と オギ
荻(おぎ)
ふさふさの穂が風になびく姿が、あの世から霊魂を招き寄せるように見えることから、「招ぐ(おぐ)」が転訛して『荻(おぎ)』。
植物のオギ(荻)はススキ(薄)によく似ている。
生えている場所も重なるが、ススキより若干、水辺・湿地を好む(順番に、陸/ススキ→オギ→ヨシ/水)。穂は白銀色で毛足一本一本が長く、小穂(穂の中の一粒一粒)に芒(のぎ)という棘が生えてない。株立ちするススキと違い、地下茎で繋がるオギは一本一本バラバラに生える。
あと、穂の色がススキよりも白銀に近いのと、山地ではあまり見ないのが違いか。
元々は広い湿地だった青森市郊外では、一見ススキだがよく見ると実はオギも結構生えているようだ。
漢字の「荻(オギ)」と「萩(ハギ)」は一見、字の形が似ているし、読み方も似ているので間違えやすいが、まるっきり別のモノ。
「荻」のつくりは「けものへん」に「火」。この「火」、実は炎のことではなく人を表しており、「狄(テキ)」とは中華民族から見て周囲の少数民族(外敵)で東南西北の順に夷・蛮・戎・狄、狄は北方騎馬民族のこと。それに草冠をつけて、稲(米)より劣る(食べられないからね)草の意味に。
「萩」のつくりは「秋(アキ)」。そのまま、秋に咲く代表的な花の意。ハギは秋になると紫の花を咲かせる豆科の植物。
オギはススキ・ヨシと合わせて日本古来からある植物だが、万葉の時代は「尾花」としてススキと一括りにされていたようだ。『新古今和歌集』で、ようやくオギが大々的に取り上げられるようになる。
あはれとて問ふ人のなどなかるらん
もの思ふ宿の荻の上風 (西行法師)
意味:あわれと言って訪れてくれる人が何故ないのであろう。物思いしつつ独りわが家で聞く荻の上葉を吹く風の音。
秋きぬと荻の葉風のつげしより
思ひしことのただならぬ暮 (式子内親王)
意味: 秋がやって来たと、荻の葉を吹く風が告げ知らせてから、予想していたことだが、愁いの尋常でない夕暮だことよ。
荻と来たら秋吹く風とともに詠まれる。和歌の作法の定型化が進んだことで、オギが積極的に詠まれるようになったのだろう。
花言葉:片想い/爽やか/片恨み