フィリピンの英語学校
フィリピンは1521年、スペイン人のマゼランがフィリピンに上陸して以来長らくスペイン領でしたが、1899年に独立し、これを契機にアメリカによる植民地化も同時に進み、アメリカの影響を長らく受け続けてきました。
フィリピンは大小7000以上の島からなる広範囲にわたる島国で、人口は約1億人です。言語はタガログ語といわれる現地言語を始め100近いローカル言語があり、全国で広く通用する共通言語は存在しませんでした。このためスペイン統治時代はスペイン語、アメリカ時代はアメリカ英語が並行して使われてきた歴史があります。
現在のフィリピンの公用語はタガログ語と英語です。
フィリピン人は各ローカル言語と並行し、小学校から英語を学び、ほとんどすべてのフィリピン人は英語を読み書きできるよう教育されています。このためより良い生活を求め、英語圏の海外諸国に出稼ぎに出かけ、国の経済を支えている現実があります。
このフィリピンでの英語教育システムに注目し、2010年ごろから海外の資本がフィリピンにやってきて、非英語圏の人向けの英語学校を始め、多くの語学留学生をフィリピンに呼ぶようになってきました。
最初にフィリピンに目を付けたのは韓国系の資本で、セブ島を中心に多くの英語学校を立て、主として韓国人の留学生を迎えてきました。次に数年遅れて日本資本の英語学校もでき、日本人の学生を迎えています。
この種の英語学校はフィリピン全土に広がっていますが、特に多いのはセブ島を中心にしたエリアです。正確な数は把握できていませんが、現在セブ島および周辺のエリアに韓国系、日本系併せて約300校程度のプライベートの英語学校が営業しています。
現在、安く効率的に英語を身に付けけるには先進国であるイギリス、カナダ、アメリカ、オセアニア(オーストラリアとニュージーランド)よりフィリピン留学が有利だという風潮が主として経済性を重視する若者たちの間で広まっています。
この傾向が始まった当初はフィリピンに進出する組織または個人は自国で実績のある、比較的大資本の人たちでした。しかし最近少ない資本の日本の若者がフィリピンで英語学校を設立・運営するケースが増えています。
一度フィリピンの英語学校で勉強した日本の若者が留学期間後にフィリピンに残り、新しく自分たちの英語学校を作るケースも出てきました。
このように多くの日本人・韓国人がフィリピンに滞在するようになると、英語学校だけではなく、日本人・韓国人相手の飲食店、そしてマリンショップなどを始める人も出てきています。
日本や韓国は既に高度経済成長期を終え、帰国しても有利な仕事にありつけそうにないので、まだビジネスチャンスをありそうなフィリピンで頑張ろうと思っているのかもしれません。
フィリピンで英語学校を運営する最大の利点はコストが安くできることです。
フィリピンの一人当たりGDP は3100ドル(2018年)で、日本の1/10以下です。このため現地で英語教師を雇用する場合、日本でのケースに比べ、1/10以下で済みます。設備費や運営費も安く、結果として安い留学費用で済むのが利用者にとっての最大の魅力になっています。
現地の語学学校で日本人などに英語を教えるのは正規の英語教育の資格を持つ若者です。
国内産業がまだそれほど発展していないフィリピンでは多くの優秀な若者の多くは英語教師を目指して勉強しています。彼らの一番の進路希望はアメリカや日本に英語教師として移住することですが、次に多いのはフィリピン内の小中学校の英語教師になることです。
しかし、英語教師志望の若者の数に比べ雇用機会はそれほど多くないので、多くの大卒の若者がアルバイトしながら雇用機会を探している状況です。
フィリピン内の英語学校はこれらの若い英語教師志望者の中で優秀な人材を採用し、日本人並びに韓国・台湾人などに英語を教えています。
現在はコロナ禍の影響で一時的に留学はできなくなっていますが、代わりにオンライン教育システム(スカイプなど)を利用し、フィリピンから海外の学生向けに英語のレッスンを行っている学校もあります。