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妊活ダイアログ CHIKAさん Vol.4

2020.06.04 08:22

この企画では、経験者の声、お医者さんの言葉、

妊活や不妊治療にまつわるアレコレを綴ります。


どんな未来が待っているんだろう。

あなたのいろんな未来の可能性を見つけてみてください。




これまでの記事

妊活ダイアログ CHIKAさん Vol.1

妊活ダイアログ CHIKAさん Vol.2

妊活ダイアログ CHIKAさん Vol.3




人工授精とそれから


流産から3年経ち、不妊治療で有名な婦人科に通う事になり、様々な検査を終えてみて気づいたことがある。


それは仕事と通院の両立が難しすぎるということ。


今まで不妊治療について調べた時に散々目にした事で、何人もの先輩たちがぶつかってきた壁。覚悟を決めたはずなのに、いざ自分が同じ壁にぶつかってようやく痛感した。

生理の周期に合わせて治療が進むので、1日でも生理予定日がずれると色々な予定が狂ってしまう。


私の働いているアパレル業界の仕事はシフト制なので、毎日出勤時間が違う。そのうえ休みも毎月ランダムで、希望の日に休みをとる場合は1ヶ月前に申請をする。

私が勤務していた店舗は、大型店のためスタッフの人数が多く、多少の融通は効いたが、それでも仲間に迷惑をかけてしまう気まずさや申し訳なさは毎回あった。


前もって会社には「本格的に不妊治療に専念するので大変申し訳ないのですが、日によっては遅れてきたり、シフトを変わってもらったりすることがあるかもしれないです。」と伝えていた。

その際に上司から「治療応援してます。できる限りサポートもします。でも、色々な考えの人がいて中にはそれをよく思わない人もいるので気をつけて下さいね。」と言われていた。


その場では「もちろんです。ご迷惑をおかけしてすみません。」と返事をしたが、厳しい世の中だなと思った。

子供を作れと言われるのに治療費は高いし、時には厳しいことも言われる。

矛盾しているけれどこれが現実だ。とにかくやれるところまでやろうと思い通院していた。



2、3回ほどタイミング法を試した後、すぐに人工受精を提案された。

妊娠の確率は格段に上がるが、今までは保険が適応されていた治療費は全額自己負担になる。


いよいよか。


……ところが人工受精をするにあたって、旦那の血液検査や、私の風疹・麻疹の予防注射を済ませなければならず、さらに予防注射後の2ヶ月ほどは妊娠してしまうとよくないということで妊活の期間を空ける必要があった。

ステップアップ目前で足止めを食らっている様でヤキモキしたが、仕方ない。


そして、予防注射から2ヶ月後。

新型コロナウイルス感染症の拡大は止まらず、まさかの緊急事態宣言。


外出自粛の要請によって様々な行動が制限され、世の中の仕組みがあれよあれよという間に変わってしまった。

私の職場も店を閉めることになり、2ヶ月ほどリモートで仕事をすることになった。

いいのか悪いのか、仕事の時間が固定になったこと、病院が自宅から近かったことで、以前よりも通院しやすくなった。


そして、初めての人工授精にトライすることに。

まず生理が始まると同時に病院へ行き、卵胞の大きさを確認。そこから排卵日を予測して排卵を促す薬を5日間飲む。

排卵日当日に、事前に採取し検査した精子を細い注射器の様なもので子宮の奥に注入する。

人工授精と聞いたときは、ものすごくハードルの高さを感じていたが、いざやってみると普段の診察とあまり変わらず、あっという間に終わった。


そこから着床を促すための薬を12日間飲み続けるのだが、その薬の副作用に一番悩まされることになる。

症状は日によって違うが、体がだるくて起き上がれないことや、吐き気、頭痛などが頻繁にあった。普段の立ち仕事中にこの症状が出たら絶対に辛かったはずだ。リモートワーク中で本当によかったと思った。


できれば、リモートで仕事をしている病院へ通いやすい間に成功させたかった。

しかし人工授精で少しだけ妊娠率が上がるといってもそう簡単にはうまくいかず、第一回目は失敗に終わった。


生理が来ると再チャレンジのために通院と薬を飲む日々がまた始まる。

残念というよりも「またあの副作用と戦うのか…。」という気持ちの方が強くて、覚悟が揺らぎそうになる。



人工授精の2回目が失敗した頃、職場の営業が再開になり少人数ずつ順番に売り場に復帰しなければならなくなった。

お客様ありきの接客業としては、現場への復帰はとても喜ばしいことだが、妊活を優先させたくて「できれば復帰を一番遅くして欲しいです」とお願いした。


ひとまずは、現場への復帰を1ヶ月ほど延長してもらえた。

だがこの先もし体外受精に進んだら今よりももっと仕事との両立が厳しくなる。

妊娠した後のことを考えても、「自宅で出来る仕事にした方がいいんじゃないか」と旦那にも話をして復帰するまでの一ヶ月間、とにかく悩んだ。


復帰した後、一度考え方が変わってしまった私はすぐに上司に相談した。

色々と提案をしてもらったが、妊活に対する考え方など聞くうちに「もうここにはいられない」と思い、辞める決断をした。


仕事も仲間も大好きだが、私の子供を産めるのは私しかいない。そして残酷にも時間はどんどん過ぎて高齢出産と呼ばれる年齢がすぐそこまで見えている。



長年続けてきたアパレルの仕事。本当に大好きな洋服の世界から一度離れて、これからは私たち夫婦の未来のために時間を使おう。

リモートワークが始まって在宅での仕事に魅力を感じ、将来のことを色々と考え始めた時にWebデザインや、ライティングの勉強ができるスクールに通い出していた。幸運にもその関係で新しい仕事も少しずつ始められている。


妊活を通して私が感じた歯痒さやジレンマを共有することで、誰かのどうしようもない気持ちのそばに寄り添えたらいいなと思って始めさせてもらったこの連載。

読んでくれた方々から反響があり、本当に嬉しかった。

本来ならとてもデリケートな内容で、まわりに打ち明けにくいのに色々な体験や悩みを共有させてもらえて、逆に励まされた。



先日3回目の人工授精が終わり35歳の誕生日を迎えた。

これからも妊活という終わりの見えない戦いは続いていくが、できるかぎり戦い続けていきたい。



(文/CHIKA)

※この連載は個人の体験です。治療や薬の処方などに関しては必ず医師に相談してください。