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tayutauao

11月6日、死にたいと思わない夜に、わたしは薬を飲む

2020.11.05 15:00


瞼を開けたら11月になっていた。

なんて、さすがに例えだけれど

陽が差し込みやすくなるのは冬が近づいている証拠だなと思い、

部屋に立ち寄るあたたかな光にそっと足を伸ばす。


今日が埋もれていくような感覚を許せないから

コーヒーを挽いて入れているんだよ。

それは日常のようでもあるし儀式のようでもある。

そこに断絶なんてないんだよ。

タバコの火をつける時に火をそっと守るようにしていると

原始の風景を見ているようで懐かしくなるんだけど、

深呼吸もため息も混ぜこぜの煙が空に溶けてゆくと

タバコをやめた、あなたはどう?と名前を不意に思い出す。


気が付いたら飛行機雲を追いかけて歩いていた。

毎日変わってゆく、吹く風の匂いが際立つ季節の名前を知らないけれど

その風に押された産毛が揺れて、こんなにも世界と溶け合う体が愛おしくて哀しい。

あなたのいない世界は思いの外、寂しくて、わたしは寝起きの合間に時々泣く。

その涙すら乾かそうとする風にあなたを感じた時、この世界のやさしさを感じるのだ。

なんだ、ずっとひとりではなかったのだと思う。

死にたいと思わない夜になんだか泣けてきたりする。

あなたは死にたかったのに、実際去ったのに。

わたしは折りたたみ式の悲しみを脇に挟んで、

それがないと生きていけない気がしている。

撮ることも、書くことも、あなたがくれたのだ。

それが悲しいと思いながらもそれで生きながらえている。

今生きている誰かの表情を見て、それをうつくしく思い

ああ、生きていてよかったとすら思える。

全部ひっくるめたこの悲しみですらも、あなたがくれたのだ。

この生を愛することができるようになったわたしを、あなたがくれたのだ。