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食の消費と調理用家電

2016.08.20 22:32

 収入の伸び悩み、女性の就業率の上昇、シフト勤務の増加など、調理時間や買い物など調理の準備のための時間を、年々充分に持てないようになっている。その結果、調理済み食品、冷凍食品、即席系の食品の消費される率が、食消費の中で上昇している。


 ■手間の削減

 それに呼応し、保存が効く大型の冷蔵庫、電子レンジの利用価値が高まっている。今後注目すべきニーズを整理すると以下のようになる。

 ①長期保存

 冷蔵庫などの保存機器のみならず、容器や包装による衛生的な保存や小分け利用が容易な仕様の商品の価値が高まる。

 ②調理準備・後片付けが容易

 野菜ならば複数の種類がカットされているパック商品、刺身など加工済みで骨などの廃材が出ない食材が有望。調理器具も調理中に汚れが少ないもの、調理後の洗浄が容易なものなどへのニーズが高まる。

 ③自動化

 難しい課題が多く実現のハードルは高いが、究極は調理の自動化だろう。ロボット技術やIOT(物をインターネットでつなぐ)との連携で、将来に向かって研究が進められれば高齢化時代との相性もいいはずだ。作る自動化よりも片付ける自動化だけでもニーズはある。調理後のフライパンが自動的に洗浄されたらどんなに楽か、と思う主婦は多いだろう。


 ■調理を楽しく・楽にするアイデア

 カロリー計算は誰もが気にしつつも面倒に思う。また鮮度の管理、調理中の器具や油の温度の管理など、IOTの技術やウェアラブル端末、AR(拡張現実)などの技術でわかりやすくデータを処理し、提示する機能は実現性が高い。中でも冷蔵庫の中身が外出先から把握できるアプリケーションなどは利用価値が大きそうだ。買いすぎや買い忘れ、知らぬ間に賞味期限を切らしてしまう食材などを極力減らすことができ、家計と時間の節約につながる。

 コンテンツとしては、新しい料理の提案が、家庭料理を日常的に行っている主婦には受け入られる可能性が高い。スーパーなど身近で手に入る食材を使う料理は、和洋中華食の全種類を駆使しても、それほど多くない。それなのに一年は365日で、それだけ夕飯を作らなければならないのだ。

 ネットで料理・調理の情報が得られる「クックパット」が人気だが、さらに一歩進めたエスニックや創作料理のようなコンテンツも増えてくるだろう。「食」での驚きや感動を、人は意識、無意識にかかわらず求めている。「ジビエ(狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉を意味する)」ブームなどもそのひとつの表れではないだろうか。


 ■ランニングコスト

 調理器具をガスと電力にわけると、IH(Induction heating)の調理器具以外でも、コーヒーメーカーや炊飯ジャーなどもすべて電気器具である。電子レンジの例にあるとおり、火力を使って調理する機会は、徐々に減る傾向がある。


 そこで問題なのは電気料金だ。節電機能のほか、深夜電力を活かした自動化などの考案余地は大きい。毎月のデータ使用量がわかると、料金プランに合わせてスマートフォンのネット利用をセーブ(無駄な利用を減らすなど)することができる。消費電力量も、請求書を受け取った段階では遅く、リアルタイムのデータや解析結果などを見ながらコントロールできるようにならなければ、なかなか節電には結びつかない。そしてこれも自動化のよい対象になる。

 買い物や、料理を考える時間を合わせると、調理は家事の中でも大きなウェイトを占める。食の楽しみへの期待が高まる一方で、その省力化や自動化へのニーズも芽生えていると言えるのである。


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