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#080.トランペットは最初が肝心

2020.11.30 20:23

レッスンでは「必ず最初のセッティングを大切にしましょう」と話します。それを理解してくださって皆さん丁寧にセッティングをした上で演奏されるのですが、次のステップに進めば当然セッティングについての話題は自然と少なくなります。すると、ついセッティングに対する意識が薄れていき、リップスラーやダブルタンギングなど技術的なところに意識が集中し、不完全なセッティングで一心不乱に吹き続けてしまう、そんなことがよく起こります。


夢中になるのは決して悪いことではありませんが、マンガやアニメのワンシーンによくある血眼になって猛烈に頑張っている状態は現実世界では残念ながら非効率的なだけであり、単に疲労感=満足感なのです。


音楽の上達は「積み重ね」です。最初の基本的な部分が抜け落ちた状態では手に入れられるものはありません。楽譜に書かれていることがどうしてもできない、特定のテクニックが苦手という方は、遡って基本的な部分を再確認してみましょう。解決の糸口が見つかるかもしれません。


トランペットにはリガチャーがない

ところで皆さんは木管楽器、特にクラリネットやサックスと言った「シングルリード楽器」の口にくわえている部分がどのようになっているかご存知でしょうか。


リードとマウスピースの位置を丁寧に調節し、それらがずれないようにリガチャーという道具で固定しています。シングルリード楽器は演奏前にこの3つのパーツを組み立てておくことで、常に安定したサウンドを生み出せるようになっているわけです。


ではトランペットはどうでしょうか。トランペットにはリガチャーに代わる道具は存在しません。すべては人間の体の一部を使うことで音を出しているわけですから、演奏状態を解除したその瞬間、すべてのセッティングはリセットされます。シングルリード楽器だったら、いちいち全部がバラバラになっているわけです。


したがって、金管楽器は木管楽器に比べると演奏開始までの準備に時間がかかるのが当然で、これは言い換えるならば、適当にマウスピースを唇に付けてしまえば、鳴らそうとしている音の高さやイメージした音質が生まれないどころか、不発になるなどミスをするリスクが高くなります。


丁寧なセッティングから確実に音を鳴らすまでの一連の動作というものは「習慣」にすることが大切なので、とにかく音を出す毎回を丁寧にする心がけが大切です。



最初の音も重要

最初が重要なのはセッティングだけではありません。「最初に鳴らした音」そのものも大変に重要です。


というのも、例えば最初に出した音がノイズ混じりであった場合、その先も口をマウスピースから離すまでずっと同じ質のノイズが鳴り続けてしまうのです。他にも、最初の音がくぐもっていれば、唇のセッティングをリセットしない限り、その先もずっと同じくぐもったサウンドが続きます。


万が一不満の残るサウンドでスタートしてしまえばマウスピースから口を離してリセットする以外でリカバリーできる方法はありません。吹き続けていたらだんだん良くなってきた、ノイズが消えた、ということは原則ありえません。


ネガティブなことを言ってしまいましたが、言い換えるならば、最初の音が理想的なサウンドであれば、その先もそれが続くとも言えます。


理論的な側面からのセッティングも大切ですし、触覚を重視した安定感のあるセッティングも大切です。しかし、それ以上に大切なことはやはり音色に対するこだわりと、そのこだわりの音色を具体的に頭や心の中にイメージしておくことです。目指すものが具体的でなければセッティングも当然具体生を失ってしまいますからね。


ということで、今回は、音を出すための「最初」が重要である、というお話しでした。毎回毎回ベストなサウンドを鳴らすというのは結構大変なことです。先ほども言いましたがぜひ「習慣」にしてしまうような丁寧なセッティングを心がけるようにしてください。



それではまた来週!



荻原明(おぎわらあきら)

トランペットオンライン講習会、次回は12月13日(日)「アーバン金管教本について 後編」です。ぜひご参加ください!

トランペットから音を出さない聴講型のオンライン講習会なので、ご自宅からでもご参加可能です。次回はついに最終回!テーマは「アーバン金管教本について 後編」です。


アーバン金管教本の具体的な使用方法例について、今回は主に教本中盤部分から「長音階」「半音階」「半音階での3連符」「音の跳躍」をピックアップして、それを行う意味と練習方法例を解説します。

基礎をじっくりと見据えてスキルアップしたい方にお勧めの回です。


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