しぐさで分かる犬の健康状態
犬は、人間の言葉を話せないため体に何かしらの異変があっても、そのことを飼い主さんへ伝えることができません。しかし、体調に変化があった場合に見られる特有のしぐさが出る可能性があります。犬の様子を日頃からよく観察することで「いつもと違ったしぐさをしている?」と気付き、病気の早期発見につながる場合もあります。
今回は犬の健康状態を表すいろいろなしぐさと、そこから考えられる病気についてお話していきます。
地面や壁に頭を擦りつける
四六時中あちこちに頭を擦りつけたり、振ったり、うしろ足でしきりに掻くしぐさが見られる場合は、耳の痒みが疑われます。犬は耳の構造上外耳炎になりやすく、外耳道が途中で曲がっていて奥まで見ることができないためなかなか気が付きませんが、そのままにしておくと耳の中が化膿してしまうほど悪化してしまいます。そのため、このようなしぐさが見られたらできるだけ早く動物病院で診察を受けましょう。
また、疥癬(かいせん)やアレルギー性皮膚炎など頭部が非常に痒くなる皮膚病になったときや、角膜炎などで目に違和感があるときなどにも頭をあちこちに擦りつける動作がみられます。特に角膜炎の場合、擦りつけることで目の表面を余計に傷つけることもあるため、注意が必要です。
首をかしげている
ものを見る時に、犬や猫は少しだけ正面からずれた視点で見ようとして、頭をかしげることがあります。また、集中して音を聞こうとするときも耳を音の出る方に向けようとして頭をかしげますが、これらは正常なしぐさです。しかし、左右どちらかだけに大きくかしげる場合は、片方の視力、もしくは聴力が弱っていることも考えられますので、一度診察を受けてみるとよいでしょう。
また、何かに集中しているわけでもないのに常に頭を片側に傾けている場合には、耳の奥にある平衡感覚をつかさどる前庭器官に障害がある場合が多く、それに痙攣や眼震(黒目がびくびくと上下左右に動き、止まらない)などの神経症状が加わる場合には、脳に障害がある可能性がありますので、すぐに動物病院に連れて行く必要があります。
食べ方がいつもと違う
ご飯を食べる様子は口の中の状態が表れています。たとえば、もし左右どちらかのみの歯でご飯を食べている場合は、使っていない側の歯が歯槽膿漏などで痛みがある可能性があります。また、よだれが止まらない場合は、口内炎ができて痛みがある可能性や、物を飲み込む神経が麻痺している可能性、異物などの影響で口を閉じることができないなどの理由が考えられます。
自分の体をしきりに舐める
暇さえあれば自分の体を舐めている場合は、その部分が痒いか、精神的に何か不安を抱えていることが多いです。体を舐めて皮膚炎を起こしていた犬が、治っても舐めることが癖として残ってしまい、皮膚炎が再発してしまうことがあります。体の一部をしきりに舐めていたら、まずはそこの皮膚をよくチェックしてみましょう。
また、椎間板ヘルニアなどで神経が障害を受けて手足などが軽くしびれたり不快感があるような場合にも、その違和感からしきりに舐めることがあります。
丸くなって寝ている
あまり寒い日ではないのに、体を丸めて頭をうしろ足の方に向けうずくまるようにして寝ている場合は、お腹が痛い可能性があります。これは野生の防衛本能によるもので、痛みのある場所をなるべく周囲から隠すようにして、誰にもさわられないようにしています。急性膵炎などで腹部の一部に強い痛みがあるときにはうずくまりながらそこの部分を舐めたり、噛んだりすることもあります。
逆に、手足をのびのびとして寝ている場合やお腹を上に向けて寝ている場合はリラックスしている状態だといえます。
座っておしっこをする
今まで足を上げておしっこをしていたオスの犬が、年をとってから両足をそろえて座っておしっこをするようになったら、片足で立てないくらい足腰が弱くなってきたことが考えられます。その他にも、うんちをするときにギリギリまで我慢して便秘気味になったり、おしっこの後に上げていた足を着ける際にふらつくような動きは、腰椎や股関節の異常を推測することができます。
お尻を地面にこする
いきなり犬がおすわりの姿勢でお尻をつき、うしろ足を前に投げ出したまま前足だけでずるずると歩くのを見たことはないでしょうか。肛門の周りに炎症が起きていたり、肛門腺液が貯まっていたり、便秘で肛門直前までうんちが溜まっていたり、条虫などの寄生虫に感染している場合に、このようなお尻を擦り付けるしぐさが見られます。また、お尻をしきりに舐めていたり、お尻やしっぽをさわられるのを嫌がっている場合には肛門周囲に炎症が起きている可能性が高いです。
まとめ
病気の可能性がある犬のしぐさについて、いくつかご説明しましたが、飼い主さんだからこそ普段と違う様子に気付くことができるはずです。ちょっとしたしぐさの違いを見逃さないように普段から愛犬の様子をよく観察して、できるだけ早く病気を見つけられるといいですよね。