食べ方から発見する病気について
ペットがおいしそうにご飯を食べる姿を見ていると、微笑ましくなったり、嬉しく感じることはありませんか?ペットによってご飯の食べ方は、一粒ずつゆっくりと食べる、口いっぱいに頬張る、ほとんど噛まずに飲み込んでしまう、一旦食器の外にフードを掻き出してから食べるなど、その子によってそれぞれ特徴があるでしょう。
しかし、普段と食べ方が変わり、口の端から食べ物をこぼすようになった場合などは何かしらの病気が疑われるかもしれません。
今回は、食べ方で発見するペットの病気についてお話します。
食べながら口を痛がる
ペットがご飯を食べながら鳴き声をあげたり、口元を手で引っ掻くようなしぐさをして口の中のものを吐き出そうとしている場合には、食べ物が口の中に入ることで痛みが生じていることを表しています。口が痛くなる原因としては、歯周病などの口腔内の病気や口内炎がよく知られています。人間でも口内炎になったことのある方ならわかると思いますが、口内炎はほんの小さな病変でもとても痛いですよね。
痛みが左右どちらか一方で、かつそれほど痛みがない場合には、頭を傾けて痛くない片側だけでご飯を食べようとします。痛みが強く、口に少しでも何かが入ると痛みを生じる場合には、お腹が空いているのにご飯が食べられなくなってしまいます。
特に猫の場合、「カリシウイルス感染症」という病気にかかるとひどい口内炎になることが知られています。またそれ以外にも、猫特有の「破歯細胞性吸収病巣」という、歯が溶けてしまう病気を持っている子も非常に多いため、猫で口を痛がるケースはたくさんあります。
また、犬は歯石がつきやすいため、そこから歯周病や歯槽膿漏になるケースがよくみられます。
ご飯を口に入れたあと飲み込みにくい
ペットはご飯を食べる時、口の中に食べ物を入れて飲み込みますが、これは口からのど(咽頭)、食道の運動が絶妙なタイミングで連動することで機能しています。口の中に入った食べ物は舌の動きで適当な大きさの塊にされてのどの方に送られ、のどを通過した食べ物は食道を通って胃まで送られます。のどの部分には肺に通じる気管の入り口が開いていて、食べ物を食道に送るにはそのときだけ咽頭蓋(いんとうがい)と呼ばれる蓋で気管の入り口を塞いで、肺に食べ物が入らないようにしています。これらを動かす舌やのど、食道の筋肉は、神経が病気の影響で麻痺をしていると、食べ物を口に含んでも飲み込めず、食べ物をポロポロとこぼしてしまったり、唾液を自然に飲み込めなくてよだれを垂らすようになります。
あまり多い病気ではありませんが、筋無力症や部分的な神経麻痺の場合にこれらの症状がみられるほか、食べ物の通り道に腫瘍のような、食べ物の通過を邪魔するものができてしまった場合にも飲み込みにくくなってしまうことがあります。
寝たままご飯を食べる
ペットによっては、ふせをして寝ているような姿勢のままご飯を食べる子もいるでしょう。リラックスしている場合であればいいのですが、おすわりの姿勢で下を向けないような場合には、頚椎が損傷していて、下を向くと痛いため、このような姿勢でご飯を食べていることがあります。
例えば、首をどこかにぶつけたり、リードで強く引っ張られたことで首に強い衝撃がかかったときには首の周りの筋肉や靭帯を痛めてしまい、首を曲げるのを嫌がることがあります。また、頚椎同士のつながりが不安定で首を曲げると頚椎の神経を圧迫してしまうような病気の時にも首を痛がることがあります。
食事の嗜好が変わった
口の中が痛い場合には、これまで食べていたフードよりやわらかいものや粒の小さいものを食べたがるようになる傾向があります。
ペットはにおいで美味しさを判断するため、鼻が効かなくなってくると、よりにおいの強いものを食べたがるようになることもあります。ご飯をあげてもフードではなく水ばかり飲むようなときには、糖尿病や子宮蓄膿症といった病気が疑われます。また、今まで口のきれいだった子が食事に対して非常に貪欲になり、食べても食べてもさらに食べたがるようになる場合には、甲状腺や副腎皮質などの内分泌系の病気や痴呆などの脳の病気が考えられます。
まとめ
このように、食事の食べ方や嗜好性の変化がペットの病気を表すこともあります。
ペットの食べ方はひとつの個性ですが、もし今までと違った食べ方を突然するようになったら、それは何かの病気を示す症状かもしれません。些細なことでも気になったらすぐに動物病院へ連れて行きましょう。ちょっとしたしぐさの変化は、飼い主さんだからこそ気付くことができる大切な健康のバロメーターです。