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神崎琴音

やっと振り返れるようになった

2020.11.15 23:34

2018/11/18 23:07

一年前には想像もつかなかったところにいる。

「想像もつかなかった」とは言い得て妙だ。どこまででも飛べるはずの想像という概念ですら、及ばなかったところ。というと世界の果てくらい遠いところのように聞こえるが、べつに世界は数直線でもなんでもないから、単純に遠いというわけでもない。そうじゃなくて、ふとしたところ。それに、自分が自分のことを想像する範囲なんてごくごく限られている、と今なら思う。


最近現実になったと思ったらそういえば過去に口に出した願望だった、ということがなんだか増えている。

というより、願望というほど願ってもいなかったり、冗談混じりに言ったことだったりが不思議と巡り巡ってきている感じがある。


例えば来月は恋人が偶然手に入れたチケットで京都旅行に行くのだけれど、去年の今頃は、歌の先生に教えを乞いに京都まで遠出しようかと思っていて、なんなら恋人と一緒に旅行に来なよ、なんて言われていたのが、うつを発症してそれどころではなくなってしまったということが、そういえばあった。とか。ほかにもいろいろ。


うつになった原因は外の出来事ではなく、自分の内側の葛藤が処理しきれなかったみたいなことで、そもそも原因というよりなんでこのタイミングでうつになったんだろうかと改めて時々考えるけど、その考え方生き方だと無理があるよー、と神様がストップかけてくれたってことだと思っている。


実際無理があった。無理をしてた。今よりずっと、「こうでなきゃならない」っていう制約を自分に課しまくっていた。そして、それに当てはまれてないところをあげつらって、「まともな人生」に当てはまれてない=人生うまくいくはずない、って呪いを自分にかけ続けていた。


そんなの、ほんとに、ただの机上の空論、理論のこねくりまわしでしかない。自分がそう思うから人生がそう決まるのだ。


何百個も自分の呪いを許した気がする。許可して、成仏させて、許して、認めて、諦めて、手放して、肯定した。何度も根気強く。自分の中の小さな泣いている子供の存在を認めて、かなしいねって受け止めて、話を聞いてあげた。


気づいたら「こうじゃなきゃダメ」にがんじがらめになって凝り固まって、想像力すら死んでいた。自分の妄想が全部叶った夢の世界を想像してみて、といわれても、なにも思いつかなかったりした。だってありえないから。無理だから。想像するのさえおこがましいから。夢見るなんて傷つきそうで怖い。自分の願望を認めるのが怖かった。


今はだいぶ許せてると思う。まだまだだけど。まだ外に出すのが怖くて具体的に書けないこともあるけど。でもうつを発症する前よりももっと、生きやすくなったかもしれない。だから、うつになってよかったなあ、とまで最近は思えたりする。我ながらすごい進歩だ…。病中は、とにかくつらい、つらい、なんでこんな目に遭うの、しにたい、早く治りたい、治らなくて辛い、もううつ飽きた、やだ、つらい、みたいなことしか考えられなかったんだから。


治ったみたいに書いてるけど、まだ薬も飲んでるし、もしかしたらまた激しく落ち込んだりすることもあるかもだし、まだまだ長い目で、と思ってはいる。でも少しずつ、近況を振り返るときに、うつを起点には考えなくなっていくのかなと思っている。


今書けるのは、このあたりまで。