L.v.ベートーヴェン 弦楽四重奏曲 第15番 イ短調 作品132
第40回室内楽定期演奏会の終曲。
L.v.ベートーヴェン 弦楽四重奏曲 第15番 イ短調 作品132
当演奏会では3回目の上演です。
前回、2015年の1月では、第3楽章で会場の皆さんで声を堪えて泣いたのが忘れられません。
ベートーヴェンは《第九》交響曲の同時期、それ以降に5曲の弦楽四重奏曲と《大フーガ》を作曲しました。
ところが、このころのベートーヴェンの実生活は、《第九》の第4楽章の人類賛歌とはほど遠い苦境にあったのです。
経済的な困窮、難聴、腸の病気、後見人となった甥の放蕩などによって、心身ともにボロボロだったのです・
さらにはこの第15番を作曲中に、病気が悪化し、生死の境を彷徨うことになります。
しかし奇跡的に生還し、作曲を再開することができました。
そしてベートーヴェンは神への感謝を音楽に綴り、この曲の第3楽章に据えたのです。
第1楽章 独白:重暗い序奏。唐突にヴァイオリンが高らかに歌うと、ベートーヴェンの多くの辛苦が赤裸々に語られていきます。
第2楽章 幸せの回想:流麗で穏やかな舞曲。陽だまりのようなあたたかさに包まれます。辛い時に回想する幸せな思い出は何よりの安らぎです。
第3楽章 《病癒えたる者が神に捧げる感謝の歌》:と題された敬虔で崇高な音楽です。合間には明るい舞曲調の音楽が何度か顔を出し、それには《新しい力を感じつつ》と記されています。病気と全ての辛苦から立ち直ろうとする決意です。
第4楽章 明転:意表をついて無邪気な行進曲。そしてヴァイオリンがオペラ歌手のようにたっぷりと歌い上げ終楽章へ。
第5楽章 再生夢:一転して歌われるメランコリックな主題。実は《第九》の第4楽章に使われる予定だったもので、当初《第九》は合唱付ではなく、器楽作品として構想されていたのです。怒涛。全てを吐き出し、新たな希望を抱いて邁進していくようです。クライマックスの後の終結部に入るとせつな、チェロによる天使の歌が降りてきます(ベートーヴェンの旋律の中で最も美しいものの一つ)。そして浄化されたベートーヴェンの心像風景を描ききり、感動的に幕!