国際税務勉強会5(米国LPSを通じた損失スキーム)
予備審査用の博士論文草稿を昨日何とかギリギリで提出し、今日は国際課税一角塾で判例研究の発表と、なかなかしんどい日が続きました。とりあえず山を越え一息です。
今日は、平成27年7月17日の最高裁判決(米国デラウェア州LPSの法人該当性)について発表しました。LPS(リミテッド・パートナーシップ)というのは、日本には存在しない事業体で、米国ではパス・スルー課税を受けます。パス・スルー課税とは、事業体そのものには課税されず、事業体を通り越してその出資者(パートナー)に対して直接課税される方式です。
納税者はこのLPSにリミテッド・パートナーとして参加し、LPSからパス・スルーされて割当てられた不動産所得の損失を、他の所得と損益通算して申告したところ、税務署から、LPSは日本では法人だからパス・スルー課税じゃなく、損失はLPSに帰属するから損益通算はできないとして課税されたので、納税者がLPSは法人じゃないといって争ったものです。
日本の税法上の法人とは何か、不動産所得とは何か、必要経費とは何かなど、いろいろな論点がからむ事件です。納税者は、地裁、高裁で勝訴したのに、最高裁で逆転敗訴してしまいました。LPSに法人格があるかないか不明確だけど、権利義務の主体なので法人といえるという判決です。僕としてはこの判決に疑問を感じます。
いずれにしても、完全に節税以外の目的がないことが明らかなような、外資系のアドバイザーが用意したスキームに乗ることはとてもリスキーであることを示した事件です。りそな銀行外税控除事件などと同じで、最高裁はそんな極端な節税スキームは許さないという方向に行っているように思います。
最近オフィスの廊下にアートが出現し、華やかになりました。ハッピーアート展だそうです。