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もしもノアが記憶喪失になったら❷

2020.11.21 23:37

「なんっっっでやねん?!なんで?!ノワール先生はあたしのもんやろ?!今更!ほんま今更!!なんでノア先生なんかに取られないかんの?!」


リビングで響く大声は、当然ノワールに向けられて放たれた言葉だった。


今では同棲しているノワールとアルマ。


そしてノアの記憶喪失によって一時的に一緒に暮らすことを決めたノワールが簡単に説明したと同時に怒鳴られたのである。


隣には記憶をなくしたノアも一緒で、お前邪魔なんだよ!と面と向かって言われている状況に顔を伏せていた。


「アルマ、あんまりじゃないか?ノアは記憶喪失で…、」

「それがなんなん?!散々好き勝手して、姉ねまでたぶらかして!あろうことかノワール先生を自殺に追い込んだ男やで?!!」

「アルマ、」

「不幸な事故やったんは認めるわ。けどな、命あるんやったらそれでええやろ!なんでまたノワール先生がノア先生の面倒見ないかんのよ!!!」


完全なる敵意を見せて来るアルマに、ノアはノワールの背に隠れながら怯えていた。


そしてアルマの話しに記憶がなくとも自分が最低な人間だったんじゃないかと垣間見える内容に顔を青ざめて固まっていた。


「やめろ。それは俺が勝手に決めて行動してたことだ。ノアは関係ない。」

「なんや!みんなしてノア先生に甘すぎるんとちゃうん?!なんも知らんと誰かに守られてのほほんと生きてきたノア先生なんてあたしは大嫌いや!!!」

「アルマ!」

「ええわ!好きにせえや!!あたしが出て行ったらええんやろ!!」

「アルマ、違う。話しを…、」

「いっつもそうや!いっつも…!あたしは二番なんや……!」


涙を滲ませて出て行こうとするアルマ。

その腕を掴みながらノワールは咄嗟に抱きすくめていた。


「離せっ!離せやっ!!、ノワール先生なんか……っ!」

「駄々をこねるなアルマ。嫉妬されるのも悪くはないが、考えてもみろ。今のノアをハリーやアリスに預けたら記憶が戻った時に廃人になりかねない。」

「そんなん知ったこっちゃないわ!!!」

「俺は今まで、ノアの幸せのために生きてきたんだ。あいつが幸せでないと俺は存在価値すら失うんだ。」

「…っ、」

「誰が一番とかじゃない。俺がアルマとこうして生きられるのは、お前が引き止めてくれたからだろう?俺が死なずとも、ノアは幸せになれると示してくれたからだ。でもその根底が覆ってしまっては仕方あるまい。」


ノワールが宥めるようにアルマの緑の黒髪を梳く姿に、


ノアは視線を落としてしょんぼりとしていた。


よくわからないけれど、寂しくてなんとなく悲しくて、ノワールがあんなにも優しい声音で誰かを抱きしめる姿なんて見たこともないから…、


「のあ……、」


小さく小さく呟いて、俺は…?と呟く声は勿論ノワールには聞こえていなかった。


その姿をチラと見るアルマにはハリーやアリスが天使!と欲望渦巻く興奮などありはせず、


しらけたように冷たい眼差しをするものの、ノワールの言い分にため息もついていた。


「それでもや。あたしはノア先生と暮らせる自信ないけん。」

「アルマ…、」

「あたしがおったらノワール先生はあたしとノア先生に板挟みやろ。どっちかが我慢せないかんってことやわ。」


ほんま、やるせ無いわ…とアルマは呟いていた。


我慢して我慢して、待っても誰も迎えになんて来てくれない。だから追いかけるしか無い。


子供の頃からアリスにもそうだったアルマはノワールの胸板を押し退けていた。


「それに、あたしだけやないノワール先生なんか要らん…。」


そこまで大人にはなれなくて、だからって好きな人を取られる我慢を強いられた苦痛を噛み締めるしかない。


選択肢なんて最初からないこの状況に怒るなって方が無理で、諦めるろと言われてるような現状ではこうするしかない。


アルマはノワールに背を向けながら、


「好きにしたらええわ。あたしも好きにするけん。」


それでええやろ、と冷たい言葉が放たれて出て行くアルマに、


ノワールはそれ以上引き止めることができず、玄関から出て行くアルマを見送ることになってしまった。


一部始終を見ていたノアは、ノワールの寂しげな背中を見つめながら泣きそうな顔になっていた。


「の、あ…っ、ごめん。俺の、せい……っ?」


よくわからないけれど、よくわからないなりになんとなく内容を把握したノアがぶるぶると震えて俯くのだ。


子供の頃から頭が良すぎて、人の顔を伺いながら、他人に怯え、けれど人間というものに興味関心も強かったノアだが、


ノワールに手篭めにされてしまう前のノアは素直すぎて、純粋すぎて、他人の言葉を鵜呑みにする傾向も強かった。


それでこの理解の速さだ。

他人と距離を置くことも早くに身につけたものの、ノワールにはそんなことなかった分躊躇っている様子。


「ノア…、そんなこと言うな。これは俺が決めたことだ。」

「でも…っ、だって…!ノアはあの女の人がスキなんだろうっ?!」


俺よりも!と付け足されていそうな言葉にノワールは困った顔をするしかない。


いつもなら当然だろうと言うところだが、今のノアには通用しない。


ノアにはアリスとハリーがいて、ノワールにはアルマがいる。


それで均衡が保たれていた関係だったことを今のノアはすっかり忘れ去って、ノワールだけの記憶しかないのだから。


「ノア…、」

「俺、ノアを、殺しかけたの?」

「違う。それは俺の判断だ。お前は関係ない。」

「でもあの女の人はそうは言ってなかった。」

「アルマは少々物事を大きく言いすぎるんだ。」

「でも…っ、」

「ノア。お前は病気なんだ。他人の戯言を気にする必要はない。俺がお前を選んだんだ。それに不服があるのか?」

「そうじゃ、ないけど…」

「じゃあもう何も言うな。俺以外の言葉を鵜呑みにするな。まだぐちぐち言うようなら仕置きを考えるぞ。」

「だ、だって…!俺だってノアには幸せになって欲しい…!」

「…!」

「だから悩むし怖いんだ!俺が奪ってるなら俺は俺が許せなくなる…!俺がノアの幸せを望んで何が悪い…!仕置きなんてされる謂れはないぞ!!!」


涙をボロボロと溢しながら叫ぶノアに、ノワールは目をぱちくりとしていた。


昔はこんなこと言われたことはない。


当然だ。

その頃のノワールにもノアしかいなかったのだから。


けれど今は違う。


その違いをノアは覚えていないだけなのだ。

そしてその違いを忘れているノアをアルマが受け入れ切れてないだけ。


たったそれだけのことだけれど、それほどのこと。


ノアは、


「俺が邪魔ならそう言ってくれ…!ちゃんと消えるから…ッ!」


ノワールにだけは嫌われたくないのだ。


今も昔も変わらずに。


誰よりも古い付き合いで、誰よりもノアが一番だから。


辛くても寂しくても、ノアはもうひとりのノアの幸せの負担にはなりたくない。


そう言い切る記憶喪失のノアに、ノワールは幼い頃のノアを思い出していた。


二人だけの世界で、お互いにお互いだけが支えだった。


幸せになっていいノアとそうじゃないノア。


ノワールが早くに悟ったその区別は根本的に間違っていたことなんだとこんな瞬間に知ることになるとは思いもよらなかった。


二人のノアに区別なんてないのだ。

お互いが笑い合える狭い世界でいいから、幸せを願いあっていた。


お互い様だったのだ。


お互いに、思う気持ちは同じだったのにそれを伝え合うことはしたことがなかった。


だからすれ違いが起きてしまったのだ。


馬鹿だ馬鹿だと貶していた弟だったけれど、本当に馬鹿だったのは兄のノワールのほうだった。


それを今更気づいたノワールはフッと笑ってノアの泣きじゃくる姿を抱きすくめるのだ。


「やめてくれ…。お前が消えたら俺がどんな目に遭うと思うんだ。」


少なくともアリスとハリーに地獄の底まで追いかけられ、息の根を止める寸前の地獄を味合わされることだろう。


簡単になんて死なせないと、あの二人なら笑顔で共闘しそうである。


「それに、ノアに会えないのは俺が嫌だ。」


アルマのことはどうにかするべきだろうが、だからって無理にこの関係を理解してもらおうとするのも違うのだろう。


ノア二人にはノア二人にしか分からない信頼関係があって、培ってきたこれまでがあるのだ。


それを好きな女ひとりのために壊すなんて生易しい関係でもない。


きっとノワールが記憶喪失になってノアが覚えている側の立場でもそうするはず。


「お、俺だって…っ、おれだって、ノアと会えないのは嫌だっ!だけど…!」


ノアの負担になるのはもっと嫌だとわんわん泣く子供返りしたノアの姿は愛くるしい。


アリスとハリーがつけ狙うわけだとノワールが苦笑するくらい感情に素直で、まだ警戒心もなければ自分の守り方すら身につけていない。


ノワールがそれらを教える前のノアは確かにこうだったなと懐かしく思うくらいだ。


こんな奴だからこそ、誰にも汚されないように世渡りの術を教えたのだが、


「心配するな。負担に思ったことなんて一度もない。アルマのことは、これからなんとかするしかあるまい。」

「仲直り、ちゃんとできてからの方がいいよな?俺がここで住むの…。」

「ん?いや、なんでそうなる。じゃあお前、どこに行くつもりだ?」


ノワールがきょとんとして問いかけた先ではぶるぶる震えるノアが一言。


「ハリーが、なんかあったら連絡しろって言ってたから…。」


取り敢えずそこに行くしかないだろうと、ノアは震えが止まらないままハリーにもらった名刺を握り締めるのである。


すごく怖い。ものすごく怖い。

だってあの目、なんかやばいとしか言えないくらいやばかった。


でもノアのためなら数日くらい我慢できると自分に言い聞かせているのだろう。


ガタガタブルブルしているくせに、その手で携帯を握りしめ、ハリーの連絡先を押しているのだから変なところで頑固である。


「本当に、あいつのところに行きたいのか?」

「行きたいかどうかじゃない。これは人間性と常識を考えた上での行動だ。他人の家に上がり込むのに、同居者の同意がないままなんて気持ち悪いし。」


でも怖い、すごく怖い、俺大丈夫かな…?と泣きべそをかきながらも最後の番号を押して通話ボタンと睨めっこするノア。


中身は小学生でもやはり達観したものの見方や考え方は大人顔負けである。


ノワールはうーん、と考え込みながらノアを連れてアルマに説明しようとしたのが間違いだったかと唸るのだ。


ノアの言わんとすることはわかるのだが、記憶を失う前のノアはアルマが何を言おうとも自分が一緒にいたい相手と居る奴だった。


例え今回のようにアルマが出ていき、ノアを邪険にしたところでそれがなんだと鼻を鳴らしてるような奴だった。


その基本概念があったから連れてきたのだが、今のノアはいつものノアではないのだ。


いつものノアはノワールが自分の好きなことを好きなだけ勝手にすることを貫くわがままで臆病なノアに教えた姿だから。


そして今のノアはそれを教える前の段階なのだ。


面倒すぎる。

額に手を当てるノワールの心境は以下である。


(俺の可愛いノアはもっと傲慢で横柄でいいのに…っ。強がりなくせにつついたら臆病で可愛いのが俺の育てたノアだったはずなんだが……。)


兄もハリーとアリスに負けないほどのノア馬鹿だったようだ。


そんなことなど梅雨知らず、記憶喪失のノアは「えいっ…!」と勇気を振り絞って通話ボタンを押していた。


そうしてワンコールで電話に出たハリーの素早い応答にノアはビクつくことになる。


『おう、なんだよ。もうなんかあったのか?』

「うう…っ、な、なんでそんなに嬉しそうなんだよ……っ。」

『お前のことだからどうせアルマと一悶着あるとは予想してたんだよ。嬉しいのは嬉しいけどな。』

「エスパーか…!」


こいつ実はすごい奴なんじゃないのか?!とノアが目を丸々としている様子すらハリーはきっとわかってるのだろう。


ゲラゲラ笑いながらもやっぱりこの男はノア先生の取扱説明書と言われる男なのだ。


『ノアが頼る男はハリー先生って昔っから決まってんだよ。そうだろ?親友。』


フッと笑う電話越しの声音は自信満々で横柄で、根拠もないのに何故かノアは安堵を覚えていた。


よくわからない恐怖もまだあるが、ハリーに連絡したのは正解だったのだろうと思える安堵だったのだ。


「おい、ノア、本気か?別にアルマのことは気にしなくても…、」

「いいんだ。ちゃんと話しあったほうがいいだろう?それには俺が邪魔なはずだ。よくわからないが、あの女の人に俺は嫌われてるようだし。」

「嫌ってると言うか…、敵対視してるだけだと思うがな…。」


ヒーローならぬ、ヒロイン属性満載のノア先生である。


そこらの主人公気質な美少女より愛くるしさMAXだ。


絶対生まれてくる性別を間違えただろと言われてもおかしくないほどに、


毒っ気のあった記憶喪失前のノアも、毒っ気のない今のノアも、周りからしてみれば甘やかしたくてたまらないものを持っている。


つまるところアリスがハリーといつも喧嘩してしまうように、アルマもノア先生にだけは凄まじいライバル闘士を燃やしているのだ。


ノワールがノアにだけはすこぶる甘すぎるから。


それを嫌われてるんだと取る今のノアの勘違いを正したくてもできるものではない。


前のノアならあんなアルマには『取る取られるとか言ってる今のお前じゃノワールになんかふさわしくない。出直してこい。』とでも言っただろうに。


(俺がまさかノアに勘違いされる日が来るとは…っ。)


せっかくまた二人で住めると思ったのに…、と何故かノワールの方が大ダメージを食らっていた。


ヒットポイントは一気に1まで下がった。


そうして事は進んでしまい、ノアのお迎えにハリーがやってきてとっとと連れ去られてしまうという変な事態になったのである。


「じゃ、仕方ねえからノアは預かってやるよ。」

「満面の笑みで優越感に浸ったその顔を今すぐ切り刻んでしまいたいほど腹立たしい奴だな貴様。この俺が出し抜かれるとは…。」

「出し抜いてねえよ。ノアに関して誰が一番理解できてるかってだけだろ。そんでもってそれはお前じゃなかったってだけだ。」


にっこりと勝ち誇ったハリーの顔にノワールは怒りをメラメラと燃やしていたが、


ノアが恐る恐るハリーの隣に立って、なんならハリーの服の端をちょんと掴み、


「ノア…、俺は大丈夫だから……。その…、ちゃんと仲直りするんだぞ。」


最後の最後に振られるという愛くるしさ満点のこの状況。


ノワールのヒットポイントは0になった。


逆にハリーの優越感と勝ち誇った天狗の鼻はニョキニョキ伸びていた。


ノア先生の取扱説明書ランクSSSを獲得した。


「じゃーなー〜!またなあ〜〜〜っ!一生仲直りとかしなくていいからなあ〜〜っ!」


手をひらひらさせ、最後の去り際までハリーはノワールを追い込み、ノアを連れ帰ることに成功したのである。


めでたしめでたしと行きたいところだが、本当の始まりはここからだということをノアが知る由もなく…、


「え、えっと…、よろしく、おねがいします……。」


ノアにとって今のハリーは赤の他人も同然。


ノワールのいない今、頼れる存在はハリーだけとなってしまったからなのか、


心細そうに知っている礼儀を口にする姿はすこぶる愛くるしい。


(マジ天使!俺のノア神萌え!!!)


ハリーが有頂天になっていたのはいうまでもない。


まあそんなハリーでもアリスや他の変態と違うのはちゃんとノアを知っていて、常識も兼ね備えているタチの悪い変態だというところだ。


クスクスと笑ってノアの頭をポンと撫でながら、


「堅苦しいのは無しだ。俺のことはハリーでいい。お前とは親友だったんだぞ?」


人のいい笑顔で寄り添えるからこそノアの隣を今でも独占できているのだ。


けれど記憶を失う前も今も、ノアにはそんなハリーの悪巧みなんて関係なかったし、やっぱりその笑顔に甘やかされることはホッとしてしまう様子。


「ハリー…が、親友……」

「おう。」

「俺、友達作れたのか…!」


パアアッと輝く神萌天使の無垢な笑顔にノックアウトされるハリーだったが、こんなことでいちいち反応していたらいかん!と己を律していた。


(目指すはこの無垢な天使を俺様が居ないと何もできないようにさせること…!そう!目指せ!ハリー依存症!!ドロドロに甘やかして飼い殺し生活まで漕ぎ着けるんだうん!!!)


最悪な変態は最悪なハッピーエンドを望む、一歩間違えたらヤンデレルート突入の天使製造を目論んでいた。


「じゃあハリーはノアとも仲良かったのか?」


そんなことなど梅雨知らない天使はノワールのことを言ってるのだろう。


親友なのはノワールともか?と単純な疑問をぶつけてくるノアに、ハリーは我に返って「まさか。」と鼻を鳴らしていた。


「あいつとはまあ、なんだ…。別に仲悪いわけじゃねえけど、お前ほどじゃない。」

「うん?なんでだ?同じノアなのに。」

「全然同じじゃねえだろ。」

「へ…?」

「ノアとノワールは違うだろ。」


何言ってんのお前、とハリーが白けたように真顔で言い切る様に、


ノアはきょっとーんとしながら首を傾げていた。


「ちがう?何が違うんだ?ノアはノアだぞ。」

「そうじゃなくて、性格も好みも趣向も違うだろう?俺にとって一番の親友はノアだけだ。人間性とか気が合うかどうかは同じノアでも俺にとっては別物だ。」

「そう、か…。だからあのアルマって人は、ノアに怒って俺を敵視したのか…。」


同じノアなら同じように怒られるはずだもんな、と変なところで理解が良すぎるノア。


けれどこの学びはいい傾向とも言える。


「そっか。じゃあノアだけ好かれても俺だけ好かれてもダメなんだな。自分の好きになって欲しい人には俺もノアも区別がないんだ。」

「そりゃそうだろ。んなもん常識じゃねえの。」

「俺には常識じゃなかったんだ。でもこれでわかった。ハリーは俺だけ好きってことだな!」


それはなんか嬉しい!と満面の笑みで見上げてくるガチ萌え必須の天使力にハリーはにこやかに笑って頷いてやりながらも…


(俺の息子よ…ふざけんじゃねえよ……。)


街中で隠すのもやっとな反応を見せた分身が訴える欲情はこれから当分生殺しとなるわけだが…、


(こんなことでいちいち反応してたら俺の身体が保たねえだろうが?!)


せっかくアリスにも隠れてノアをゲットし、これからの目的のためにまずは信頼を得て甘えてもらえるところから始めなければならないというのに……


「ハリー!手繋いでいいか?」

「あ、ああ…もちろん……っ」

「ハリー、ハリー!あれ食べたい!」

「か、買ってやるから…、ちょ…っ」

「ほんとか?!ありがとうっ!」

「う……っ」


ハリーはこの天使を舐め腐っていた。


純真無垢でいつもの毒気が全くないノアに順調に甘えてわがまま言ってもらってるとても良い状況なのだが、


物珍しい街中ではしゃぎながらハリー!ハリー!と懐いてくる姿を見ていると……


(襲いてええええええええぇぇぇぇぇぇ……っっっ)


途端に強姦魔に堕ちそうな本能をなんとか押し留めているハリーなのであった。