啓蒙の光5-モリエール「ドン・ジュアン」
2020.11.22 11:27
この頃モリエールは夫婦関係がうまくいかず、胸を病んで苦しんでいた。タルチュフが上演禁止に追い込まれたうっぷんを晴らすように、さらに過激な作「ドン・ジュアン」をつくる。ドン・ジュアンとはフェリペ2世時代の風刺でスペインの作家がつくった架空の人物である。
この物語は、銅像が動き出したり、地獄落ちの場面があったり、スぺクタル要素があるので、イタリアでオペラになり、イタリア劇団のフランス興行でヒットした。原作は、黄金時代のスペインの堕落を批判するものだったが、イタリアで喜劇になった。
彼のつくったドン・ジュアンは、快楽追求者であり、信仰深い森の隠者をバカにする。平気で嘘をつき、必要なら偽善者となる。これはその時代の貴族や聖職者の戯画であり、最後に地獄落ちするが、それまで不道徳な大暴れをする。1665年2月15日に上演されたドン・ジュアンは大当たりをとった。
こんな作に宗教界が黙っているわけはない。またもや上演禁止運動が起こり、劇はわずか15回で上演禁止になり、出版もさせてくれなかった。しかしこの劇は、モーツァルトと組んだ劇作家ロレンツォ・ダ・ポンテが知り、オペラとして不滅の命を持ち、最近ではタカラヅカも上演するミュージカルにもなった。
下は原作に忠実な1998年の映画ペネロペ・クルスやエマニュエル・ベアールも出演している