灰汁を絞る
ケアをするとき、「どっち向きに擦るといいですか?」とよく尋ねられます。
「ご自分が気持ちいいと思う様にでいいですよ。」とお答えします。
いい加減に聞こえるかもしれませんが、どの向きの手当てにも意味があるからです。頭で考えるより、「あぁこれこれ!これが気持ちいいのよね~。」と感じるご自身の感覚をまず大切にして頂きたいと思うのです。
滞ったリンパ液を流すなら、末端から中央の大きなリンパ節に向かって軽く…と教わります。
縮んだ体を伸ばし、連結や伝達を取り戻すには、中央から末端に向かって。
鈍った筋を呼び起こすには、直角方向にコリコリ弾くこともあります。
膝や肩甲骨など潤滑剤不足かなと思うときは、手のひらでじっと加圧しては離して待つ…を繰り返したりもします。
(※病気や体調によっては刺激してはいけない場合もありますので、ご注意ください。)
とはいえ、何からどうすれば気持ちいいのかわからないという方には、中央から末端へ辿っていくケアをおすすめします。
不要なエネルギーを絞り出していく感じです。
例えば腕(セルフバージョン)なら、下記をゆっくりゆっくり時間をかけて、変化を待ちながら行います。
・脇の下に反対腕の2~4指を入れて脇を掴む。
・脇の下に親指を入れて腕を掴む。
・掴む位置を少しずつ肘の方、手首の方へ降ろしていく。
・手のひら、指1本1本をしごく。
施術を受けて貰えば何をしているかよくわかっていただけるのですが、言葉ではなかなか…。
初めての方同士でセルフケア教室にご参加いただいて、一人ずつ順番に腕のこのケアをして差し上げていると、受けている人は「たまらなく気持ちいい!」と仰る。まだ受けてない方は「握ってるだけで、何にもしてないように見える。」と仰る。いざ触ると、「わぁ!流れる流れる!こんなに軽くでいいんですね。」と。
力で揉みほぐそうとすると、反って流れないのです。
「冷蔵庫から出したばかりの硬いバターを握っているとじわっと溶けて流れてくるように、変化を待って…。」と言うと、「バターをずっと握っていたことがない。」と言われ、「じゃぁ、チョコレートを握ってたら溶けてくるように…。」と言うと、「例えが食べ物ばかりだ。」と笑われ、まぁそんな感じでケア教室が進んでいきます。
うまくいくと、手のひらからピューっと、指先からポタポタと、要らないものが出ていくような感覚を味わえると思います。
不要なエネルギーが出ていく感覚を『抜ける』、そういうケアを『抜く』と言ったりしますが、腕が抜けると本当に楽になります。肩こり、首こり、胸のつかえ…。自分で肩や心は揉めなくても、腕を絞ることからならできるかもしれませんよ。
毎年ではありませんが、我が家では高菜を漬けます。天日に干して、塩漬けして、高菜の水分が上がって来たところで良く揉んで灰汁を絞ります。その後、塩と唐辛子で本漬けです。
灰汁をちゃんと絞らないと美味しくないし、絞りすぎても味が抜けてしまう。硬い茎の部分と柔らかい葉の部分が混じっているので、力を加減しながら流れを待って下へ辿っていくと、ボタボタポタポタと灰汁が出てきます。
この高菜を絞る感覚と腕を絞る感覚がちょうど同じなんですね~。茹でたホウレンソウを絞るのでは、繊維が柔らかすぎる。ますますわかり辛くて使えない例えですね。
ただ、滴り落ちる灰汁は、ケアのイメージそのものです。
体からこんなのが抜けていったら、楽チン元気になれそうな気がしますでしょう?