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「ぼうし」トミー・ウンゲラー Tomi Ungerer

2016.08.25 11:59

毎日暑い日が続きぼうしの欠かせない季節ですが、先日入荷した商品にこんな不思議なぼうしの絵本がありました。今日はそちらをご紹介します。お話はこんなシーンから始まります。


「むかし、ぼうしがひとつあった。黒いりっぱなシルク・ハット。サテンみたいにぴかぴかで、ピンクの絹のリボンがついていた。」


不穏な空の色に、ふわりと舞う立派なシルクハット。どこかマグリットの絵にもイメージが重なりますが、なんだか不思議なことが起こりそうな、そんな気持ちを喚起させる絵です。人物が描かれていなくてもこのタッチで作者がわかる方もたくさんいらっしゃるかもしれませんね、日本でも「すてきな三にんぐみ」などで愛されているトミー・ウンゲラーです。


さて、このシルクハット、もとはお金持ちの頭の上で幸せに暮らしていました。ある日ぼうしは風に飛ばされ、一文無しの退役軍人ベニトの頭にぽとんと着陸。そこから次々巻き起こる不思議なできごとに、ベニトとぼうしが大活躍。そしてその度に、少しずつぼうしに似合う立派な姿になっていくベニトの様子は、まるでぼうしが「長靴をはいた猫」の猫となって主人を幸せにしていくかのようです。さて、ベニトは最後にどんな幸せを手に入れたのでしょうか。そして、最初のぼうしの絵へと帰結する最後の1ページもまた、とても印象的です。本を閉じたら、そのまま次の物語が始まりそうな気さえする、そんな終わり方なんです。

「すてきな三にんぐみ」でも今江祥智さんが訳した、小気味の良い独特のリズムある短い文章の連続が気持ちのいいウンゲラーですが、こちらもまた、同様に短い文をうまく積み重ね、リーダビリティの高い文章になっています。訳は詩人の田村隆一さんですから、日本語での語感も素晴らしいです。

年齢に関係なく、大人も子どもも読んで楽しんでいただける一冊かと思います。ぜひ、絵と一緒に文章を存分に味わっていただきたい絵本です。

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ぼうし」トミー・ウンゲラー