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#小林よしのり #コロナ #後遺症こわい を問う

2020.11.25 07:41

「小林よしのりライジング」様より

シェア、掲載。

ありがとうございます。感謝です。


詳しくは一番下を参照

 

『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。


第379号 2020.11.24

「小林よしのりライジング」


『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。

毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)


【今週のお知らせ】

※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…日本の新型コロナ死者が2000人に達したとして、わざわざマスコミが見出しをつけて報じていたが、約10か月かけて、たかだか2000人である。そんななか、またもや盛り上がってきたのが「コロナ後遺症の恐怖」である。感染から回復した人には、その後も呼吸苦やせき、だるさ、脱毛、嗅覚・味覚の異常などが残る場合があるという。そして脱毛の症状がみられるケースがあるというが、果たして「コロナ後遺症」は恐れるべきものなのか?


※「ゴーマニズム宣言」…冬になれば新型コロナの感染者(正確には検査陽性者)が増えることも、それでも死者数は例年のインフルエンザを超えないであろうことも、とっくにわかっていた。しかし菅義偉首相は21日、「Go Toトラベル」の運用見直しを表明。「Go Toイート」についても都道府県へ制限を要請するとした。これに対して、極右新聞である産経新聞と、極左新聞の東京新聞は大喜びで、同じ意見の社説を掲載したのである。なぜこんなことになったのか?



第192回「“後遺症こわい”を問い質す」


 日本の新型コロナ死者が2000人に達したとして、わざわざマスコミが見出しをつけて報じていたが、約10か月かけて、たかだか2000人である。ちょうど1年前、令和元年11月の統計を見ると、1か月間の死者総数が約12万人、内訳は、感染症の死者だけで2000人/月、肺炎8000人/月、誤嚥性肺炎3600人/月にものぼり、新型コロナの死者とは比較にならない規模だ。マスコミは、日本人はめったに死なないものだとでも思っているのだろうか。


●後遺症のない2人が司会・進行しているのに…


 そんななか、またもや盛り上がってきたのが「コロナ後遺症の恐怖」である。感染から回復した人には、その後も呼吸苦やせき、だるさ、脱毛、嗅覚・味覚の異常などが残る場合があるという。


 11月22日(日曜)のTBS『サンデージャポン』では、肺がん専門医の奥仲哲弥医師を中心に番組が作られ、「後遺症の怖さ」を煽る内容になっていたが、その司会は、実際にコロナに感染して回復し、特になんの後遺症もなく、当たり前のように仕事に戻っている爆笑問題の田中裕二と山本里菜アナが務めているのだから、まったくトンチンカンだった。

 番組でまず紹介されたのは、アメリカの女優アリッサ・ミラノの自撮り映像だ。


アメリカでは、新型コロナの患者に脱毛の症状がみられるケースがあるのだという。そして、アリッサ・ミラノも、自身がコロナに感染して、回復したあとも、ブラッシングするたびに髪が抜けるのだと言って、わざわざ入浴後の姿を晒して、髪が抜ける様子を実演してみせていた。


ロングヘアなので、まとめるとすごくごっそりと抜けたように見えるし、それをカメラに向かって突き出して「ほら、これを見て」と言っている感じは、ホラー映像そのものだ。

 それに、自分の髪が抜ける様子をわざわざ自撮りしてまで見せつけようとする彼女の精神状態そのものがひどく病んでいるように感じられて、その精神状態のままに置かれていることこそが、なによりの脱毛の原因なのでは……とすら思えた。


 アメリカでは、大勢のコロナ死者が出ているのだから、肌感覚としての恐怖は強いだろうし、ロックダウンによって女優としての仕事もなくなってしまったはずだから、そのストレスも重なっているだろう。日本でも人気女優の自殺が相次いだが、アリッサ・ミラノもきっと不安とストレスが倍増しているのではないかと感じた。


●ウイルスに関係ない抜け毛が増えている


 日本でも「脱毛の後遺症」が報告されてはいるようだ。ただ、それは「そのような例が報告されている」という内容にすぎず、ウイルスが直接作用して脱毛を招いたのかどうかという因果関係については、まだ科学的に証明されていない。


 実際、コロナの感染者ではない人々からも、脱毛の相談が増えているという事実もある。


 東京都内のあるクリニックには、7月ごろから抜け毛の相談が急増し、特に、女性で「髪の毛が薄くなってきた」と訴える患者が増えたという。コロナ禍のストレスに加え、在宅ワークで生活リズムが変わったことや、運動不足に陥ったことなどで血行状態が悪くなり、それが頭皮の血流の悪化につながって、頭髪が抜けやすくなるのだそうだ。


 さらに、医療用ウイッグを販売するメーカーには、今年3月以降、子供むけの医療用ウイッグの相談が増加。円形脱毛症の患者が患部に合わせて貼るタイプの部分ウイッグがあるが、その子供むけの需要が伸びているという。


 なんの危険もないのに自由闊達に遊ぶことを許されず、マスクをつけさせられて、神経質に見張られ、不自然な生活を強要されている子供たちに対して、非常に申し訳ない思いでいっぱいだ。日本人はこのことを恥じなければいけないと思う。


 そんな現実を思うと、「脱毛って本当にコロナの後遺症?」という疑念が脳裏に渦巻くアリッサ・ミラノの自撮り映像だが、その映像が最近のものではなく、すでに8月に世界中で話題になったものであることも問題だ。世界中のあちこちのテレビ局で何度も使いまわされているのである。


 アリッサ・ミラノは、4月に入院して、酸素マスクを装着していたときも自撮りしていて、それがCNNなどに取り上げられ、世界的ニュースとして扱われていた。


苦しくて大変だったろうねとは言ってあげたいが、自撮りする余裕のある患者の映像なんて、もういい加減にマスコミが採用するなよと言いたい。だが、もはや「YouTube発・衝撃映像!」などの動画と同じ扱いになっていて、人目を引くためにも便利だから使いまわされるのだろう。


●マスコミ殺到の「コロナ後遺症大学生」



 番組では、さらに、新型コロナの「後遺症映像」の使いまわしがつづく。


 アリッサ・ミラノの次は、コロナに感染して休学し、その後、後遺症に苦しんで寝込んでいるという千葉県の21歳大学生だ。


 この大学生は、10日間入院し、2回連続のPCR検査で陰性が確認されたために退院したが、その後も微熱やけん怠感、息切れ、味覚異常などの症状が40日以上つづき、脱水症状で一週間入院もしたという。(二度目の入院は、コロナではなく、水分をちゃんと取らなかったからではと思うが)。


 映像では、布団に寝込む大学生の息子に向かって、母親がカメラを向けながら近づいてゆき、「大丈夫? 今日は散歩に行ける?」などと話しかけ、息子は「ちょっと今日は悪いから」と答えている。ほかにも、寝込む息子のいろんなカットが撮影されていた。


 まずこの時点で、「寝込む息子の姿をカメラに収める」という母親の行動そのものに、ものすごく違和感があった。本当に深刻な後遺症なら、そんなことをする余裕などないと思うし、しかも、撮影したものをテレビ局に提供してしまうのだから、根本的に、大して心配なんかしていないのでは? 


それほどの一大事ではないから撮れたのでは? と思えた。


 撮影しながら散歩に誘うというのも、なんだか自然ではない気がするし、そもそも21歳にもなった息子が寝床で母親とやり取りする様子を公開してしまう感覚も、なんだか母子ともに奇妙に甘えん……まあ、病気の人にあまり言うのはやめておく。


 ただ私の体験を書いておくと、病気がグズついて「まだまだしんどい」と言って寝込んでいようとすると、母親か祖母から


「もう熱もないのに、いつまでも寝ていたって病気なんか良くならないよ! 体力をつけなきゃ元気にならないんだから、ちょっとは頑張って起きなさい!」


と叱咤されたりした。もちろん、熱が出ていたり、人にうつすような状態だったり、歩けないほどなら病人として扱われたが、「いつまでも寝ていたら治るものも治らない」というのはほとんど常識として言われていた気がする。


 手術を受けたり、事故などで入院した時も、早い段階から、つらくてもリハビリを受けるように言われ、体を動かすように追い立てられたりする。体力、筋力、気力など日常生活に必要な力や機能を衰えさせないようにすることで、復帰していくものだからだ。回復というのは、治療だけでなく、最後は自分の力でしか成し遂げられないものだろう。


 しかも、この「コロナ後遺症大学生」、登場するのは初めてではないというのも困ったことだ。


 そもそも、彼が発症して入院したのは4月のことで、「40日以上後遺症が…」というのは6月の話なのだ。ひどい使いまわしである。


 ざっと調べただけでも、11月22日放送のTBS『サンデージャポン』のほかに、この大学生が登場したり、取材に答えたり、写真や映像を提供したりしたテレビ番組や新聞記事はこれだけ存在する。


■日本テレビ NEWS ZERO 6月22日

『コロナ“後遺症”「陰性」後も苦しむ若者』

https://twitter.com/ntvnewszero/status/1275072946608861186

■日テ NEWS24 6月23日

『若者でも続くコロナ後遺症 倦怠感や頭痛』

https://www.news24.jp/articles/2020/06/23/07666223.html

■NHK 7月2日

『コロナ陰性後も続く“後遺症”実態調査へ 日本呼吸器学会』

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200702/k10012492951000.html

■テレ朝 モーニングショー(J-CASTニュース) 7月16日

『新型コロナ5人に4人がひどい後遺症!すぐ息切れしていつまでも頭痛や微熱』

https://www.j-cast.com/tv/2020/07/16390265.html?p=all

■毎日新聞 7月21日

『新型コロナ、続く「後遺症」 倦怠感、湿疹…生活に介助 感染の大学生「健康ほど遠い」』

https://mainichi.jp/articles/20200721/dde/001/040/038000c

■読売新聞 10月15日

『大学生「持病ないのに…これほど苦しむとは」陰性後も発熱・息切れ・倦怠感』

https://www.yomiuri.co.jp/national/20201014-OYT1T50308/

■TBS NEWS23 11月17日

『回復まで半年も! コロナ後遺症の深刻な実態とは?』

https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4129610.html



「深刻」で「これほど苦しむ」「ひどい」後遺症のなか、取材受けすぎである。

 要するに、20代の若者で重症になったり、長患いに陥っている人がレアなので、「若者でも重症になったり、後遺症で長期間苦しんだりする!」という恐怖を煽るために、この大学生に取材が殺到したということなのだろう。まったく現実の社会からはかけ離れて、偏った報道が行われつづけているのである。



●後遺症なんていくらでもある! 帯状疱疹編


 そもそも、「後遺症」は新型コロナだけに限ったものではない。


 インフルエンザによって、身体障害や知的障害を背負うケースについては、第186回「後遺症とはなにか?」に書いたとおりだが、例えば、身近なところで、水痘・帯状疱疹ウイルスは、神経節に潜んでいるために、暴れた場所が目や耳などの神経だった場合、視力低下や難聴などの後遺症を起こすことがある。水痘・帯状疱疹ウイルスは、体内で活性化して増殖しはじめたときから、神経を破壊してゆくのだ。そして、破壊された神経は修復されない。


 さらに、読者にも経験者がいると思うが、帯状疱疹の水ぶくれが引いたあとに、その場所に神経痛だけがしつこく残るという後遺症がある。チリチリと刺すような痛みが時々襲ってきたりして、あまりにひどい場合は、ペインクリニックなどで神経ブロック注射を打ってもらって対処することになるのだが、この「帯状疱疹後神経痛」という後遺症は、50歳以降の発症者の約20%に発生するという。



●腸管感染症ウイルスの後遺症


 シーズンになると発生し、下痢や嘔吐を引き起こす腸管感染症ウイルスは、「後遺症はほとんどない」とは言われるものの、小さな子供にとっては命を脅かすことになる場合もある。


 例えば、ノロウイルスに感染したある1歳8か月の赤ちゃんは、嘔吐を繰り返し、40度の発熱と下肢硬直を発症。その後、入院先の病院で脳浮腫を起こしていることがわかり、回復することなく、気管切開を行って人工呼吸器を取り付け、そのまま自宅のベッドで障害と闘うことになった。


 感染力が非常に強く、5歳までに世界中のほぼすべての子供が感染して胃腸炎を発症するロタウイルスは、下痢のほか、幼児においてはインフルエンザに次いで脳炎を発症する率が高く、ロタウイルス脳炎患者の38%に後遺症が残ることが特徴とされている。


 ロタウイルスは、毎年1月~5月に流行し、手の表面で数日、器物の表面で1~10日間感染力を維持する。ただし、感染を繰り返すごとに軽症になってゆき、年齢が上がるにつれて重症化しづらくなることがわかっている。また、母親からの免疫を受け継いでいる新生児と、感染を繰り返して免疫を鍛えた大人の間では、無症状の感染が多いと考えられている。


 「高齢者を死なせてはならない」と訴える人々は、それ以上のテンションで「幼児を死なせてはならない」と、ロタウイルスの危険性を訴えるべきだろう。幼児の命を奪ったり、生涯にわたる後遺症を背負わせたりするウイルスのほうがずっと残酷だ。



●熱中症は、脳の中枢機能に後遺症を起こす



 後遺症が発生するのは、なにもウイルスの感染だけではない。

 今年も7月~9月の間に大勢の熱中症患者が救急搬送され、コロナよりもはるかに多い死者を出したが、熱中症にも後遺症がある。

 2006年と2008年に日本救急医学会熱中症検討特別委員会が実施した調査によると、高次脳機能障害、嚥下障害、小脳失調、失語症、植物状態など、脳の中枢機能に障害が起きる後遺症が数々報告されている。これらの後遺症に侵された人の平均年齢は62.9歳で、コロナで重症化する患者よりもずっと若い。原因は、熱そのものだけではなく、過剰なサイトカインの分泌や、血栓などだ。熱中症は恐ろしいのである。



●日本人の三大疾患にも後遺症がつきもの


 脳といえば、日本で年間11万人が死亡しているのが「脳血管疾患」だ。生還しても身体に麻痺が残ったり、言葉が出なくなったりする人は大勢いて、長期間のリハビリが必要になったり、リハビリをしても、完全に機能が戻らない人も少なくない。

 年間21万人が死亡する「心疾患」の患者にも後遺症が多い。心筋梗塞によって心臓の細胞の壊死が起きて、心不全や不整脈などの合併症が起きると、回復後も息切れや食欲不振、呼吸困難などの後遺症が残ったりすることがある。

 狭心症の人が、発作に備えてニトログリセリンを持ち歩いていることや、慢性の心不全に至った人が、体内に心臓ペースメーカーを埋め込んでいることがあるということも常識だろう。

 がんの死者は年間38万人にのぼるが、手術後の後遺症の話は、あまりに豊富にありすぎて、経験がなくとも、誰もが1つや2つは話せるのではないだろうか。

 胃がんや食道がんの手術を受けた人は、手術前の半分くらいしか食べ物が食べられなくなったり、小分けにしてゆっくり食べないと、すぐに食べ物の逆流が起きたりすると言うし、手術したのは食道なのに、咳が半年ほどつづいたという話も今までに2人から聞いた。内臓にメスを入れるだけに、長く続く倦怠感や冷や汗、めまい、動悸などの後遺症の話も事欠かない。

 直腸がんの手術を受けて、排便や排尿の機能が弱った、男性が勃起不全になった、これも後遺症だ。乳がんの摘出手術を受けた知人は、術後4年になるが、いまでも時々、脇の下や二の腕が痛むことがあるという。

 しかし、毎年、当たり前のように大勢の日本人が発症したり、死亡したりしている感染症や疾患、手術の後遺症について、年間を通して延々とテレビ番組が懇切丁寧に解説したり取材したりすることはない。コロナ以外の病気の後遺症を訴える人々の声や映像が紹介されたり、くり返し取材が殺到したりすることもない。「後遺症」はありふれたことだと受け止められているからだろう。


 ただでさえ、人間は生きている限り、日々、老化・劣化しているものだ。


 元気だった高齢者が、入院を機に体力・筋力が弱って歩けなくなったり、認知症を発症したりして、急激に衰弱してしまうというのはよくある話でもある。「病人」として扱われ、ベッドに寝かされ、日常生活で自然に鍛えていた身体機能を封じられてしまうと、ますます老化・劣化が進んで、それが病気に対抗できないレベルになれば「後遺症」として残る。さらに耐えられなければ死ぬ。


 それは抵抗力が極端に弱く、体力や気力を失ったり、放棄したりした若者にだって起きることではないのだろうか。後遺症を煽るマスコミにはこう言ってやろう。



「後遺症? だからなに?」



第398回「腰抜け老人民主主義」


 冬になれば新型コロナの感染者(正確には検査陽性者)が増えることも、それでも死者数は例年のインフルエンザを超えないであろうことも、とっくにわかっていた。


 だから冬が来る前に、一刻も早く新コロを指定感染症から外すか、5類相当以下にして、毎日の陽性者数報告をやめさせなければならなかったのに、完全に手遅れになってしまった。


 菅義偉首相は21日、「Go Toトラベル」の運用見直しを表明。「Go Toイート」についても都道府県へ制限を要請するとした。


 菅政権はそれまで経済再生を優先し、18日に日本医師会の中川俊男会長が「秋の我慢の3連休」とか言って外出自粛を呼びかけても、加藤勝信官房長官が「現時点の感染状況を踏まえ、県をまたいだ移動について一律に自粛を要請する必要があるとは考えていない」と否定していた。


 だからてっきり、政権はさすがに新コロが弱毒性であることも、これ以上経済にダメージを与えるわけにはいかないということも認識していて、いくら世論や「専門家」が騒いでも、のらりくらりとかわしながらやっていくのだろうとわしは思っていた。


 ところがそれは、とんでもない買い被りだった。結局は政権も何一つ理解していないバカばっかりで、ただ世間の空気を見て右往左往しているだけだったのだ。


 加藤官房長官は20日の記者会見で、緊急事態宣言について「現時点で宣言を発出するような状況ではないと判断しているし、専門家も同様の認識と承知をしている」と述べているが、こんな調子では、専門家や世論の動向次第でどうなることやらわかったものではない。


 東京都議会では、保健所からPCR検査を求められて拒否した者に、罰則として5万円以下の過料を科す条例案を、最大会派の都民ファーストの会が提出しようとしている。


 福岡県では、新コロの感染者に感染経路の特定につながる情報の提供を求め、理由のない拒否や虚偽の報告をした場合には5万円以下の過料を科すという条例案を県議会がまとめた。


 同条例案では、新コロのように治療法の確立していない感染症が発生した場合、知事は独自に「特別警戒宣言」を発令し、事業者に営業制限などへの協力を求めることができる項目も盛り込まれるという。


 コロナが怖いから、立憲主義も法の支配も知ったことかとでも言わんばかりの条例が、各地方で成立しようとしている。


 日本医師会の中川会長は会見で「秋の我慢の3連休」を呼びかけた際、「Go Toトラベル」について、「エビデンスがなかなかはっきりしないが、(感染拡大の)きっかけになったことは間違いない」と発言している。


 これは驚くべき話で、科学的根拠が示せないのに医師会の会長が「間違いない」と断言するなんてことをしていいのだろうか?


 さらに中川は19日にも自民党の感染症対策本部のヒアリングで「国が(移動を)推進することで国民が完全に緩んでいる」と発言したが、前述のとおりこの時点では政権は「Go Toキャンペーン」を維持する方針で、加藤官房長官は記者会見で「Go To」について「基本的に考え方に何らの変更もない」と述べ、菅首相も記者団に対して「最大限の警戒状況にある」と強調しながら、「Go To」事業の休止や、人の往来や外出の自粛については言及しなかった。


 ところが翌20日には、産経新聞が6段ぶち抜きの社説で『急速な感染拡大 強い危機感を政策で示せ 「Go To」の一部停止も』と題し、中川会長の見解を全面的に支持し、「感染拡大地域での『Go To』の事業停止も選択肢である」と主張した。


 この日の「羽鳥慎一モーニングショー」では玉川徹が、「政府寄り」の産経新聞でさえ、政府の方針に反して「Go To」の中止を主張したと大喜び。


 そして同じく20日には「反政府」の東京新聞も社説で『Go To事業 ブレーキを踏む時だ』と題し、「Go To」について「今は、いったん停止するか規模を縮小するタイミングではないか」と主張した。


 20日夜には政府の分科会が行われ、感染が急速に拡大している地域では当面3週間飲食店の営業時間を短縮するよう要請することや、「Go Toトラベル」の運用見直しを早急に検討することなどを政府に求める提言をまとめ、尾身会長が記者会見を行い、政府に対してGo Toキャンペーン運用見直しの「英断を心からお願い申し上げる」と語った。


 だがこの会見で見逃せないのは、尾身会長も「Go To」について、「感染拡大の主要な要因であるとのエビデンスは存在しない」と言っていることだ。


 それなのに見直しが必要とする提言をまとめた理由について、尾身はこう言っている。


「主要な要因であるとのエビデンスは存在しませんが、ほかの提言との整合性のとれた施策を行うことで人々の納得、協力を得られて感染の早期沈静化が進み、結果的にはトータルの経済的ダメージも小さくなると考えています」


 科学的根拠はないが、感染の早期沈静化が進むというのだ。何を言っているのか、全く意味がわからない。とにかく「Go To」を見直さなければならない根拠なんかないのだ!


 ところがこれが決定打となって政府は方針を急転換し、21日に「Go Toトラベル」の運用見直しを表明するに至ったのである。


 菅には何の信念も見識もなかった。まあ、「静かなマスク会食」を国民に呼びかけ、自分も実践すると言うほどのバカだったのだから、どうしようもない。


 さて、ここでわしが注目したのは、先にも触れた11月20日の産経新聞と東京新聞の社説だ。


 奇しくも極右新聞と極左新聞で、同じ日の社説が全く同じ意見になったのである。


 なぜこんなことになるのかといえば、右だろうと左だろうと今どき新聞を読んでいるのは年寄りばかりで、その年寄り読者にウケるような論調にしないと、ただでさえ下がり続けている部数をさらに減らしてしまうことになるからだ。


 そして今どきの年寄りは「腰抜け老人」がものすごく多く、コロナは怖い、こんな時に「Go Toトラベル」だなんてとんでもないといった論調しか受け付けないのである。


 いわゆる「団塊の世代」(1947~49年生まれ)はついに全員70代となり、70歳以上の人口は総務省統計局の9月15日発表データで2715万人、総人口の21.5%を占めている。


 日本国民の5人に1人以上という、膨大な数に上る者のほとんどが腰抜け老人で、コロナ脳になっていて、マスコミの論調を支配してしまっているのだ。


 コロナ禍の第1権力はマスコミであり、マスコミと専門家が、「Go To」を止めろとか、PCR隔離を増やせとか言えば、その通りに政府はやり始める。


 そして、その第1権力を牛耳っているのが腰抜け老人だ。


 マスコミは右も左も、腰抜け老人に媚びた論調しか書けない。


 産経新聞の11月23日付は、1面トップで「コロナ重症者323人 最多迫る 国内死者2000人超す」とコロナ脳全開の内容だったが、これも腰抜け老人に媚びるためだ。


 同日社会面では、3連休の初日に主要観光地の東京の人出が4月の緊急事態宣言以来最多になったという記事があるが、「我慢の三連休」発言によって「9月の大型連休より落ち込んだ地域もあり、一定の歯止めもあったようだ」と書いていて、明らかに人出に「歯止め」を掛けなければならないと言っている。


 産経新聞なのに、産業も経済もどうでもよくて、ただ腰抜け老人の支持だけがほしいのだ。


 一方の東京新聞では、20日の紙面に「新型コロナ 紙幣からの感染 どうすれば」という記事があって、呆れてしまった。


 新コロ対策として紙幣用の消毒装置の発売が相次いでいるとした上で、「一般の人は財布を出入りするお札に、どの程度気をつければいいのか」として、紙幣やスマホに付着したウイルスが最大28日間残ったという研究結果があるなどと危機感を煽るのだが、結論として挙げているのは長崎大の安田二朗教授(新興ウイルス感染症学)の以下のコメントだ。


「紙幣を介した感染がどのくらいあるのか、分からない。通常の状況で他者へ伝播する量のウイルスが長時間残っているのか、疑わしい」


「手指消毒を皆がしている今、そこまで消毒する必要性があるのか。お金を触った後に、目や口に触らなければいい」


 そんなもん、専門家に聞かなくてもわかるだろという話で、そもそも記事にする必要があるのかと思ってしまった。


 ともかく、わしは現金で払う。高級レストランではカードだがな。


 わしの現金を受け取りたくないのなら、わしだけタダにしろ!


 新聞は腰抜け老人を読者に抱えている。羽鳥慎一モーニングショーを始めとするワイドショーの視聴者も老人と、あとは主婦だ。


 腰抜け老人どもには『コロナ論』など読めないから、これがひとつの壁になっている。


 しかも老人は数が多い上に投票に行くから、政治家にとっては大事な票田だ。


 腰抜け老人は退職していて、貯金があって、年金ももらえるから、自粛、自粛で経済がどんなにダメージが受けようと完全に他人事で、飲食店や観光地がどれだけ苦境に至ろうが全く知ったこっちゃなく、平気で「Go To」なんかやめろと言える。


 玉川徹も、まだ50代のくせに腰抜け老人だ。


 そんな腰抜け老人が世論を形成して政治家を操り、経済に打撃を与える。


 腰抜け老人は自分がその被害を受けることはなく「勝ち逃げ」し、若者がその犠牲になる。それが今の民主主義なのだ。



「老人民主主義」は未来ある若者を犠牲にして、国家を衰退に向かわせるだけだ。


 腰抜け老人がのさばっていても、社会に対しては害悪にしかならない。


 腰抜け老人は、さっさと世の中から退場してもらいたい。


それが、連中が国家のためにできる唯一の貢献策なのである!



第336回「こんなご時世、子ろももクダ巻いちゃうぶぁ~い!の巻〈前編〉」



「我慢の3連休」とやらが終わりましゅたが、ホントに「マスク会食」なんかしてた人、いるんでしゅかね?


 すでに夏ごろからいろんなメーカーが「会食用マスク」やら「会食用フェイスシールド」やらを売り出してて、通販サイトなんか見ると、モデルのお姉さんがにこやかな顔して装着して飲食を実践して見せてましゅけど、こんなの数年たったら確実に「黒歴史」でしゅよ。


 今年一年は、「黒歴史大量生産イヤー」になったんじゃないでしゅかね? あとでシレっと「なかったこと」にされないように、できるだけ記録に残しておかんといけましぇん。


 しかしまあ、こんなのんきなこと言ってられるのも日本だからで、台湾じゃ12月から公共交通機関や商業・娯楽施設などでマスクが義務化されて、違反すると3,000~15,000台湾元(約11,000~55,000円)の罰金だというし、ロシアじゃマスクを着ける着けないで口論になって殺人にまでなった事件も起きたそうぶぁい。


 まったく、なげかわしい世の中でしゅね~。おでんでも食べながら愚痴でも言い合ってないと、やってらんないぶぁい!


続きは下をご覧ください。


小林よしのりライジング

「コロナ“後遺症こわい”を問い質す」小林よしのりライジング Vol.379