「講談3DAYS」を振り返って:2020.11.26.
墨亭を開亭して一年半。開いてみたいと思っていたのが、講談の定席であった。
上野の本牧亭が閉場したあと、講釈師(講談師)は定席を無くしたため、落語の様に毎日講釈を聴ける場を無くてしまった。今、講談協会と日本講談協会は「定席」をうたった会を設けているが、連日、講談を楽しめる形は取っていない。ならば!と、講談を5日でも3日でも、毎日のように楽しめる寄席を開きたいと思っていたものの、諸条件が揃わなければ難しいことを感じ、今、これならばできる!と考えたのが、今回の「講談3DAYS」であった。
結果としては「3日」という期間限定ではあったが、朝から夕まで講談三昧という機会もそう多くはない。せっかく開くのであれば、できるだけ大勢の人にお越しいただきたいと思っていたのだが、このコロナ禍。全公演とも大入満員ではあったが、「三密」にならぬよう、換気を万全にしたのは言わずもがな。そのご報告。
【講談3DAYS・初日:2020.11.21.(土)】
◎「田辺いちかの会」
田辺いちか「赤穂義士銘々伝『安兵衛駆け付け』」
(中入り)
田辺いちか「緑林五漢録・鼠小僧次郎吉『汐留の蜆売り』」
◎「神田愛山の会【初日】」
神田愛山「三家三勇士『和田平助・鉄砲切り』」
(中入り)
神田愛山「天明七星談『鉢の木』」
◎「神田春陽の会【初日】」
神田春陽「津山の鬼吹雪」(山本周五郎・原作)
(中入り)
神田春陽「忠治の娘」
初日からいい会でした。
いちかさんのドスは男のドスというより、講釈師が考える最大公約数のドス。蜆売りが抱え持つ運命と鼠小僧の数奇な運命が交差する世界。鼠小僧の他の巻も聴いていきたい。
愛山先生の『鉢の木』は、先生もマクラで話すように、確かに難しい演目だけれど、今回も脇で聴いていて、淡々と読み進めるからこそ浮かび上がってくる人の情けの世界にジーンと涙が。
春陽先生の『鬼吹雪』はもはや春陽十八番に数えてもいい一席。周五郎作品を見事に講談に。
【講談3DAYS・二日目:2020.11.22.(日)】
◎「神田紅佳の会」
神田紅佳『難波戦記・真田の入城』
対談:紅佳&たきぐち「稽古と北九州」
(中入り)
神田紅佳『高炉の神様・田中熊吉』
◎「神田愛山の会【二日目】」
神田愛山『蜀山人』
(中入り)
神田愛山『赤穂義士銘々伝・勝田新左衛門』
◎「神田春陽の会【二日目】」
神田春陽『清水次郎長伝・飯田の焼き討ち』
(中入り)
神田春陽『復讐奇談安積沼』
講談3DAYSの二日目は、神田・神田・神田w。柔らかいエピソードが連なる蜀山人から、硬い鐵工関連の田中熊吉までw。
東京の人には馴染みがないものの、己を持った生き方が魅力に繋がる田中熊吉にスポットあてた、物紅一門らしい演目。
前日に愛山先生から「蜀山人の軸を飾っておいて下さい」と言われていたので、受付にぶら下げておいたら、みなさん写真を。もう一席は、忠臣蔵のまた違った形での「別れ」の物語。相変わらずの涙、涙。
春陽先生の『安積沼』は「小幡小平次」の原型?の創作物。これから残っていきそうな読み物。次郎長伝は連続で聴いてみたい。
【講談3DAYS・千秋楽:2020.11.23.(月)】
◎「一龍斎貞弥の会」
一龍斎貞弥
『赤穂義士本伝・殿中刃傷/切腹』
『赤穂義士銘々伝・神崎の詫び証文』
『は組小町」
◎「神田愛山の会【千秋楽】」
神田愛山『不可抗力』(結城昌治・原作)
(中入り)
神田愛山『講談私小説・出身地』
講談3DAYSも、おかげさまで無事、千秋楽。
午前の部は墨亭初登場の一龍斎貞弥さんの会。午後の部はご存知!貞弥さん初墨亭ということもあって、前日にご出演の神田紅佳さんが先達役となってご案内。ありがとうございます。おまけに?開場前にはファンクラブから花が! 「墨亭、新装開店ですか?」とご近所の人からwww。義士伝は一龍斎のお家芸。そして貞弥さん視線の義士伝。私は基本的に演者にはリクエストをしないのだけれど、心の中でずっと貞弥さんにあの演目をやって欲しいなあと思っていたら、それが通じたのか、大大好きな『は組小町』を最後の一席に。高座脇で涙を浮かべながら聴いてました。女性による女の復讐劇。
愛山先生とは楽屋でずっと「モバイル」について。何とか納得してくれたらしいw。結城作品についてもあれこれと。読んでない作品が多々あるなあと。不可解と言うかシュールな一席と、愛山本『ベラ』にも載る佐野と清水の物語で、3DAYSも大団円。
さすがに疲れましたが、みなさまありがとうございました。(雅)
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