ハンバーグの歴史(前編)
ハンバーグは日本の国民食として、好きな料理ベスト5にランクインするほどの人気料理です。
しかし、意外な事にそのルーツはハッキリしていません。
ネットでは、タタール族が云々、ドイツ系のアメリカ移民が生み出し、アメリカ経由で日本に入って来たなどなど、諸説あるようです。
タタール族がどうかは根拠がないですし、タルタルステーキが云々も、似てはいますが根拠もなく、なんとも言い難いものです。また、ドイツ系アメリカ移民が云々という説に関しては、
アメリカでハンバーガーが盛んに食べられていることから推測された俗説で、
どうやら、正しくありません。
そもそも、ハンバーグという言葉は日本でしか通用しません。
英語圏で「Can I have Hamburg steak ?」と言ってみて下さい。
きっと「???」という顔をされます。もしくは「Hamburger??」と聞かれるか、最悪ハンバーガーとステーキがダブルで出てくる可能性もあります。ちょっと嬉しいけど(笑)
ドイツ発祥アメリカ経由であれば、ハンバーグステーキという英語は通じて当たり前ですからね。
これが通じない時点でアメリカ経由はありえません。私を含め、海外に暮らした事のある日本人ならおわかりになる事と思います。
先日のブログでも書きましたが、洋食は十九世紀に日本に流入してきたもので、長崎に始まり、横浜や神戸などの開港地の外国人向けレストランが源流です。
その当時の外国人向け料理は基本的にフランス式で、明治政府も公式の応接料理をフランス式に定めていました。
ですから、当時の日本人コックは洋食を学ぶ=フランス料理を身につける事が基本でした。
もっとも、その時代、日本に居住していた外国人はイギリス人が最も多かったので、イギリスやアメリカの食文化の影響もあったと思われますが、少なくとも戦前のレストランは「フランス式」が主流で、日本の洋食の多くはフランス料理がベースになっています。
こうしたことから、日本のハンバーグの原点となる料理も、当時の古典フランス料理の中にありました。 戦前の日本人コックがバイブルとしていた昔のフランスの料理書を開くと、
エスコフィエの
"Le guide culinaire" には
"Beefsteak à la hambourgeoise"(ハンブルグ風ビーフステーキ)
モンタニエの
"Larousse gastronomique" には
"Bifteck à la hambourgeoise"(ハンブルグ風ビフテック)
といった料理があり、作り方はどちらも、牛挽肉に、玉ねぎ・卵・塩・コショウ・ナツメグを混ぜて固めて焼く、となっています。
出典 日本の西洋料理 http://www.maroon.dti.ne.jp/schwarze-katz/main.html
このように、挽肉にタマネギや卵を入れて焼く、というのはフランスでも古くから一般的な手法であり、日本独自のものではありません。日本では昔からハンバーグにナツメグを入れるのが定番なことからも、日本のハンバーグのこうした料理の影響であることが伺えます。
続く.......