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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

バロックの聖性6-聖者と魔女の聖心信心

2020.11.28 09:21

一方フランスカトリックでは、さらに神秘的な信心ができあがる。1670年聖ジャン・ユードはイエスの聖心の祝日を祝う。聖心とはプラトニックではない、人類のために捧げられたイエスの心臓である。私の門真教会はマリアの聖心が守護していて、心臓梗塞から復帰した私が知って愕然とした経験がある。

キリスト像などは「偶像崇拝」としてプロテスタントに攻撃された。新たなシンボルを求めるカトリックが、そのシンボルとして生んだのが茨冠をつけたハートなのだ。その聖人のパートナーが何と「悪魔憑女」マリー・デ・ヴァレという。ユードは41年に診察という形でマリーと出会う。

マリーの憑きが現れたときは、卑猥な言葉や呪いの言葉を投げる。しかしこの頃彼女は、それを神の使命として従順に受け入れていた。ユードは悪魔に苛まれることを許したヨブのようだと思い、魅せられてしまう。実際マリーを通して聖心の信心を神が語るのだ。

56年、マリーは死ぬ前に奇跡的に正気に戻り、不思議なカップルは一時を過ごした。そして「もう行かなくては」と彼女は言って死去した。8カ月後、墓を移転するため、棺を開けると、遺体は傷んでおらず、中から芳香が香ったという。

下左は聖ジャン・ユードとマリー・デ・ヴァレ右は聖心のシンボル