柿澤福郎さん(人道支援や災害支援から平和構築にアプローチする)
<キャリア概要>
日本の大学院で国際安全保障を学んだ後、人道支援NGOでの国内インターンの後、民間セキュリティ会社の駐在員としてアフガニスタンに赴任。ODA実施機関と開発コンサル会社での仕事を経て、2012年から人道支援NGO業界で働いています。
① 平和構築に興味を持ったきっかけは何ですか?
中学・高校時代にユーゴスラビア紛争とチェチェン紛争という大きな紛争が続いて起こり、テレビで特集番組を見たのが紛争と平和に興味を持った最初のきっかけでした。その後、大学ではスポーツをしていたのですが、紛争予防について勉強したいという想いが強くなり大学院に進学しました。
② どのように平和構築に関わっていますか?
実際のところ、私は「平和構築」に携わったことはありません。私が携わってきたのは紛争後や災害後の復旧・復興支援です。これまでに携わった仕事の中で一番、平和構築に近いと思ったのは、地雷除去活動や地雷回避教育、地雷被害者のリハビリテーションを通じて、紛争後の経済・社会的な回復に関わったことです。
③ 平和構築の醍醐味は何ですか?
より広く、人道支援に従事した経験からになりますが、災害支援や難民支援の現場では、人々のレジリエンスを目の当たりにすることがあります。厳しい生活状況、過酷な環境の中でも、被災者や避難民の方々は生活を立て直す一歩を必ず踏み出しています。こうした姿に希望をもらい、勇気づけられています。
④ 平和構築の難しさは何ですか?
「援助はえこひいき」とよく言われるように、受益者選定の公平性には細心の注意を払う必要がありますが、紛争の影響を受けた地域では集団同士の関係がセンシティブであるため、ターゲティングをめぐる不満が何倍にも増幅されてしまうと思います。
また、紛争地で仕事をする場合に避けて通れないのが治安の問題です。治安の悪い場所では、ちょっとした軽率な行動や気の緩みが、誘拐・拉致や襲撃など自分自身への危険となって跳ね返ってくるので、気を引き締める必要があります。他方、国内治安に問題を抱える国では、NGOやジャーナリストなどの外国人は、治安機関による警戒・監視の対象になっていることも意識しておく必要があります。
⑤ 今の仕事をする上で、身につけておいて良かったと思うスキルや経験は何ですか?
平和構築に関係する仕事は、幅広く多岐に渡る分野であることから、どんな経験・スキルも役に立つと思います。例えば、私がアフガニスタンで出会った国連職員の方は元システム・エンジニアとしての経験を活かして、紛争後の選挙支援部門で活躍されていました。
⑥ 実はこんな趣味ですというのはありますか?
国際政治理論や安全保障論について考えたり学んだりするのが趣味なので、赴任した先々でその国の国際関係や治安問題についての論文や研究書を読むことを楽しみにしています。いわゆる途上国と呼ばれる国ばかりを回っていますが、思いがけず国際政治の最前線とも呼べる光景に出くわすことがあり、それが醍醐味です。
⑦ 最後に、今後の夢・目的は何ですか?
近年の自然災害の頻発・大規模化を経験して、マルチハザードへの対応を意識しています。例えば、途上国の都市や新興国のメガシティで拡大を続けるスラム地域では、貧困、災害被害、治安悪化、組織犯罪、感染症などの問題群が複雑に絡み合っています。自分がこれまでのキャリアで経験した事を活かして、マルチハザードに包括的に対応するためのアイディアを生み出せるようになりたいです。
▼2016年、スーダンで地雷被害者支援のための国家戦略の策定プロセスをコーディネートしました。