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この一年で不動産賃貸業界は、どう変わったのか。

2020.11.29 07:35

 夏の終わりに記事を書いて以来だ。久しぶり過ぎて、このサイトのログイン方法を忘れてしまうほどだったが、久しぶりに記事を書いてみようと思う。ありがたいことに最近は、それなりに忙しく、ほぼ家にいながら、ほぼ毎日仕事をしているというシュールな毎日をおくっている。おそらくこういったかたは、多いのではないだろうか。

 ちなみに、こうした毎日を過ごしていると、殆どの打ち合わせをオンラインにて別部屋で行っているのだが、なぜか不思議と打ち合わせで使用する部屋に行くと、少し襟を正してしまう。家のなかに、仮想の職場があるようでなんだが不思議な気分だ。これはワンルームでもあるのではないだろうか。特定の場所に座ると、仕事モードになるというかなんというか。

 

 さて、季節はすっかり変わり、もう冬の入口に入っている。2020年という年は、多分100年後の教科書にも載っているであろう、かなり特異な年になるだろう。ウィルス感染で世界がこれほど変容することを誰が予想できただろうか。勿論、警鐘を鳴らす優秀な人は、少なからず存在しただろうが、それでも実際にこんな世界になると、どうにも現実感がない。しかし、この騒動も一年も続くと、これを現実として受け入れていることに驚いてしまう。人は、時間が経つと、それなりに適応してしまうものだろう。


 はたしてそんななかで、不動産業界は、この一年どのような変化があっただろうか?

 この一年、どの業界もそうだが、このコロナの問題に右往左往させられたのは、間違いない。不動産業界でもいろいろな影響が多少あったような気がする。不動産購入者が激減するのではないか。都心への引っ越しニーズがなくなるのではないだろうか。賃料滞納者が急増するのではないだろうか。といった具合に、時期によっていろいろな情報が出てきた。

 しかし、結論から言えば、「これから」そういった問題が生まれてくるだろう。もし仮に上記のような問題がこれまで発生していたとしても、マーケット全体では「軽微」だと感じる。

 売上が創業以来、最高だった管理会社もあった。仲介件数が昨年より130%超えだった会社もあった。しかし、それとは逆に、法人ニーズが減少し、空室が増えてきたという声も聞かれたし、販管費をぐっと抑えて、人員整理を行なった会社もある。

 そう考えると、「これまでは」企業によって様々であったということである。

 あくまで感覚的ではあるが、おそらくこれからも地殻変動の大変動みたいなことは、不動産業界には起きないだろう。当然と言えば当然かもしれない。世の中の殆どの不動産会社がジリ貧になれば、日本は沈没する。



 しかし、現場では、目に見えないニーズの変化は確実に実感している。


 まず、急ぎの部屋探しのユーザーは、本当に減ったように感じる。特に転勤での引っ越しのニーズは、殆ど見られなかった。また、職場の近いところへの引っ越しの希望も殆ど聞かれなかった。だいたい春先から夏にかけて、新卒から第二新卒のかたが独立するためにお部屋探しをするケースがあったのだが、どこの会社でもそうしたニーズが激減したと感じる。そして学生の住み替えニーズも、本当に少なかった。そういった意味では、目に見えないユーザーの動向の変化は生まれている。

 では、部屋探しの問い合わせの数が減っているかと言えば、そうではない。反響数が増加している会社も多かった。ただお部屋探しの理由が「手狭で引っ越したい」という理由の反響が多かったように感じる。ちなみにこのような「急ぎ」ではないユーザーを獲得するのは、「営業力」の強い仲介会社だ。最終的には、マーケティング力やテクノロジーの進化に対応できる不動産会社が生き残るとは思うが、こんな時期は、ゲリラ戦に強い会社が力を発揮する。コロナ禍の10ヶ月程度においては、こうした仲介会社が活躍したように感じる。


 また管理会社さんは、都心だけに関して言えば、稼働率にあまり大きな変化はなかったようだ。ただ、これこそが「これから」の動向次第だ。よっぽどの大きな事故や事件が生まれない限り、物件の稼働率は大きく減少しない。ボディブローのように稼働率が下がるのか、それとも繁忙期でしっかりと入居付けできるのかは、わからない。おそらく物件のチカラによるところが大きいだろう。物件のチカラが弱いところは、なかなか満室稼働させるためには、時間がかかるかもしれない。

 また、物件管理において、騒音のクレームなどは、大きく増加したように感じる。やはり入居者が部屋にいる機会が多いのだろうか。この騒音クレーム増加の傾向は、いろんな会社で聞かれた。今後も、こうしたコロナ時代特有の入居者のリクエストは、新たに生まれてくるかもしれない。


 ちなみに、住宅領域がまだそこまで大きな影響を受けていないのに対して、テナント系、事務所系の不動産会社(特に仲介)は本当に苦しそうだ。法人事務所のスモールサイズへの変更希望での退去云々もそうだが、特に大きいのは、新規の顧客獲得だ。これは、かなり直接的にコロナの影響を受けている。物件管理収入がそれなりの売上比率を占める会社はまだしも、テナント仲介一本で行っている会社は、苦しそうな印象である。


 こうした状況ではありながらも、2020年も多くの不動産テック系のサービスが誕生してきた。リクルートさんが業務支援系に乗り出したり、新しいオンライン対応のサービスもいくつかローンチしているようだ。コロナに合わせて、こうした新しいテック系サービスが流行るのかどうかは、わからない。なにせ、対面が大好きな業界である。またこのあたりのサービスを生み出すのと、デファクトスタンダード化するのには、全く異なる努力が必要になる。このあたりのサービス攻略は、またより一層大変になるだろう。


 こうして一年を俯瞰して見ると、やはり冒頭のような「多分変わってきてんだろうけど、めちくちゃ変化が生まれてきているわけではない」という感想を抱いてしまう。ただ、これは私が鈍感なだけかもしれない。


 とはいえ、もうあっという間に今年もあと1か月である。繁忙期も徐々に近づいてる。今回は、繁忙期の1日の終わりに、メンバーでみんなで飲みに行くこともなければ、不動産会社の経営者、幹部のかたと酒を酌み交わし、情報交換をする機会もないだろう。


 これからどのような時代になるかは、私にはさっぱりわからない。

 ただ少なくても、昨年とは少し違った繁忙期になることは間違いなさそうだ。