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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

啓蒙の光7-モリエール最高傑作「人間嫌い」

2020.11.29 10:03

モリエールは不思議な男である。あれほど人間を観察し、政治を知っていてもそのご機嫌をとろうとしない。喜劇でそんな風潮を笑い飛ばそうとする。ともかく宗教界からの批判は、国王の庇護下に入ることで切り抜けたが、あまり過激なものは書けないということも意味していた。

彼と同じ時代の劇作家にラシーヌがいた。ラシーヌは詩の規則を守った美しい悲劇をつくった。ところが、モリエールはラシーヌに出し抜かれて、看板女優を引き抜かれる。

1665年末からモリエールは心労が重なって病態となる。そしてその中で生まれたのがフランス古典劇の傑作「人間嫌い」である。この主人公は、当時の人にへつらう風潮がことごとく気に入らない。恋する女性は違うと思いきや、実はやはりうわべだけだったと知って、世間に背を向けるというドラマである。

この劇のテーマは近代的自我であったが、観衆は従来の喜劇を欲した。モリエールはその後も国王劇団で劇を書いたが、ルイ14世の興味も他に移り、73年病いを押して出た舞台で亡くなった。彼を評価したのは次の世紀の啓蒙文化人である。

下はコメディフランセーズの映画「人間嫌い」現代舞台のほうがピッタリくる