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なるの台本置き場

【女3:不問1】GIFTed

2021.01.22 13:00

女3:不問1/時間目安 60分



【題名】

 GIFTed

(ギフテッド)


※こちらは女性版です。



【登場人物】

アルテミス:裏路地で名の知れた手練。

ニア:アルテミスの弟子。

ベラ:裏カフェのマスター。性別不詳。

メアリー:警察官



(以下をコピーしてお使い下さい)


『GIFTed』(女性版)作者:なる

https://nalnovelscript.amebaownd.com/posts/11791622

アルテミス(女):

ニア(女):

ベラ(不問):

メアリー(女):




-------- ✽ --------






【ベラの店】



001 アルテミス:断る。


002 ニア:これで千と167回ですね。


003 ベラ:あんたも飽きないわねぇ。


004 メアリー:また『断る』ですか……何故です!貴女ほどの力があれば!


005 ベラ:その口説き文句はナンセンスよ、お嬢ちゃん。


006 メアリー:しかし!


007 ベラ:しかしじゃないの!まず、その呼び方!それ何とかしなさい!男でも女でも、口説く時に名前を呼ばないなんて!可愛い顔してそんなことしてみなさい!男が寄ってこなくなるわよ!


008 メアリー:っ……。


009 ベラ:もしかして……もう既に?


010 メアリー:そ、そんなこと無いですから!


011 アルテミス:男の1人もろくに落とせないとはな。宝の持ち腐れだな。


012 メアリー:いちいち癪に障りますね、貴女は。


013 アルテミス:男も落とせないやつにあたしが落とせるものか。


014 メアリー:そう言いますが、貴女は落とせるんですか?


015 ニア:相変わらずメアリーさんは雑なのか丁寧なのか分かりませんね。


016 ベラ:二ーちゃん、そこは気にしたら負けよ。


017 ニア:はーい。


018 アルテミス:ったくうるさいねぇ。……ニア、こっち向いて。


019 ニア:なんです……っ?!


<アルテミスがニアに顎クイ>


020 アルテミス:ねぇ、ニア。


021 ニア:えっ、と?


022 アルテミス:ふふ、耳まで赤くして……可愛いやつだねぇ。


023 ニア:お、お師匠?


024 アルテミス:こんな可愛い顔、見せるのはあたしだけにするんだよ?他のやつに見せたりなんかしたら……(小声)どうなるか分かってるね?


025 ニア:へぇ?!


026 アルテミス:ふふ、今夜そこのホテル取ってるんだ。2人で飲み直さないか?(※被せ)


027 ベラ:(※割り込む)はいはいはい!そこまで!ニーちゃんが本気で困ってるでしょ!


028 アルテミス:ニア、あたしに惚れるなよ?


029 ニア:あ、当たり前です!な、何言ってるんですか!


030 ベラ:で……ほら。これサービスしてあげるから元気だしなさいな、お嬢ちゃん。


031 ニア:大丈夫ですか?メアリーさん。


032 メアリー:えぇ……。


033 ベラ:こーら、ニーちゃん!いい女の傷心中よ!野暮なこと聞くんじゃないの!


034 ニア:ごめんなさーい。


035 アルテミス:ニア、そろそろ行くよ。


036 ニア:あれ、もう行くんですか?


037 アルテミス:ドギーが居るんじゃ酒が不味くなる。呑み直すよ。


038 ニア:はい!


039 アルテミス:これ、勘定。じゃあね。


040 メアリー:……ドーベルが動いてます。お気をつけて。


041 アルテミス:あぁ、ご忠告どうも。


<アルテミスとニアが退店>


042 ベラ:あ、アルちゃん、ニーちゃんまたね!……お嬢ちゃんはまだ呑んでいく?


043 メアリー:はい。……もう少し。







【アルテミス・ニア自宅】



044 ニア:お師匠〜。


045 アルテミス:なんだい。


046 ニア:えぇ、怖っ。


047 アルテミス:機嫌が悪いんだ。手短に。


048 ニア:あの、さっき『ドギー』とか『ドーベル』とかって言ってましたがどういう意味なんですか?


049 アルテミス:そんなの自分で調べな。


050 ニア:調べましたよ。調べたけど出てこなかったから、こうして聞いてるんじゃないですか。


051 アルテミス:あぁ……ニアにはまだ裏の呼び方教えてなかったっけねぇ。


052 ニア:はい。裏社会での呼び方のあれこれを教えてくれてとお願いしてもう13回目ですが、全部『面倒、まだ必要ない』と言われたので知りません。


053 アルテミス:……本当に口が達者になったもんだ。


054 ニア:子は親に似る、って言うでしょ。それです。


055 アルテミス:はぁ……ったく。仕方ない、1回しか言わないからよく聞くんだよ。まず、ドギーは警察のこと。


056 ニア:ドギーって言えるほどの可愛さ無くないですか?


057 アルテミス:アイツらに可愛さなんてあるか、ボケ。皇帝の犬って意味のドギーだよ。


058 ニア:あぁ、皮肉を込めての『ドギー』という訳ですか。


059 アルテミス:そういうことだ。そしてドーベルは警察上層部のこと。ドーベルが動く、イコールあたしたちにとっては良くないことが起こる、と言われている。


060 ニア:じゃあこれからまた何か起きるって事ですね。


061 アルテミス:あぁ。数年前の法改正も、裏を取り締まるためのルールを作っただけさ。大まかな部分はほとんど変わっちゃいない。


062 ニア:でも、何故それを警察のメアリーさんがお師匠に教えるんですか?教えない方が捕まえやすいですよね?


063 アルテミス:あいつのキャリアにあたしが、というか、ギフテッドが必要なんだよ。あたし達は所詮あいつらの道具だからね。


064 ニア:ギフテッドが必要ってどういう事ですか?


065 アルテミス:相変わらず質問が多いな、お前は。


066 ニア:だって、こんなにお師匠が質問に答えてくれる事なんて滅多にないじゃないですか。


067 アルテミス:そんな事ないぞ?


068 ニア:そんな事あります。……で、ギフテッドの話、もっと詳しく教えて下さい。


069 アルテミス:ギフテッドが何かはニアも知ってるよな?


070 ニア:はい。人間はギフテッドかノッツのどちらかに分けられる。ギフテッドは精霊に愛されて能力(ちから)が使える者のことで、確認されているギフテッドは人間の約2割程度と言われている。


071 アルテミス:流石、『優等生のニアちゃん』だな。


072 ニア:イヤミですか?


073 アルテミス:いーや。勤勉なところは尊敬してるよ。よくあたしの元で学んでてそんな真面目になれたもんだ。


074 ニア:勉強自体は嫌いじゃないですからね。お師匠から学べることは沢山ありますから。


075 アルテミス:そうか。まぁこれからも励みたまえ、若者よ。


076 ニア:ならちゃんと教えてくださいよ……。


077 アルテミス:はいはい。じゃあさっきの続きな。ギフテッドには様々な種類があるんだが、1部のギフテッドはアンノウンと呼ばれている。アンノウンに分類される能力はそれを使える人間の数がとても少ないから、どんな能力なのか詳しい記録がほとんど残ってない。


078 ニア:お師匠はどうなんですか?


079 アルテミス:あたしか?あー……。


080 ニア:なんかすいません。


081 アルテミス:……アンノウンだな。


082 ニア:はぁ?


083 アルテミス:ん?


084 ニア:今のは明らかに、お師匠はアンノウンじゃない、あー私余計な事聞いちゃったなー、って流れだったでしょ?!てかお師匠アンノウンなんですか?!むちゃくちゃ凄いじゃないですか、レアじゃないですか!ねぇ!


085 アルテミス:そうだね、レアだね。


086 ニア:そういえば私、ちゃんとお師匠の能力について知らないんですけど。


087 アルテミス:教えた事ないからね。


088 ニア:教えて下さいよ、私弟子なんですけど。


089 アルテミス:よし、じゃあ特別に見せてやろう。ちょっと外出て待ってな。


090 ニア:分かりましたー!


091 アルテミス:……。


092 ニア:へ?なんか言いました?


093 アルテミス:何も言ってない。早く外行ってな。


094 ニア:はーい!




【アルテミス・ニア自宅前】



095 アルテミス:待たせたね。じゃあそこの木、ちゃんと見てるんだよ。……『時の精霊よ、我の名に従い時を奪え。』


096 ニアN:お師匠は家の前に生えていた1本の木に手をかざし、呪文を唱えた。すると即座に木は枯れ、師匠が肌身離さず持っていた砂時計が光った。


097 アルテミス:これがあたしの能力だよ。


098 ニア:えーっと、対象物の寿命を奪う……?


099 アルテミス:ぶっぶー!てかその言い方怖すぎ。


100 ニア:あはは……うっざ。


101 アルテミス:しょうがないからこっちも見せてあげようじゃないか。……『我が盟約に従い、時の精霊よ、癒せ、巻き戻せ。元あるべき姿に蘇らせよ。』


102 ニアN:先程枯れたはずの木は、あっという間に元の姿に戻っていた。何事も無かったかのように。


103 ニア:え……?戻っ……え?


104 アルテミス:これで大体分かったろ。


105 ニア:えっと……?


106 アルテミス:はぁ……あたしが力を借りているのは時の精霊だ。つまり?


107 ニア:時間。


108 アルテミス:そう。あたしは対象物の時間に干渉する。まぁもっと簡単に言えば、その物の時間を奪うことも出来るし、逆に与える事も出来る。


109 ニア:その能力って……世の道理に反するのでは……?


110 アルテミス:まぁ、そうだな。人を殺す事ももちろんできるし、逆に蘇らせる事もできる。……これは極論だけど。


111 ニア:でもその能力があれば……。


112 アルテミス:あたしはこの力を使って人を殺す事も蘇らせる事もしない。


113 ニア:なぜ?


114 アルテミス:人を殺す事。つまり人の時間を奪うって事だ。人様の時間を奪ってまであたしは生きたいとは思わないよ。


115 ニア:その逆は?


116 アルテミス:生き返らせるってことだろ?……はぁ。お前にはおいおい話さないととは思っていたから、いい機会だな。……いいか、よく聞くんだよ。この能力で出来るのは、肉体を蘇らせる事だけだ。精神はどうにも出来ない。人間っていうのは、肉体と精神、両方あってのものだ。精神が無ければタダの入れ物でしかない。分かるか?


117 ニア:……はい。


118 アルテミス:そして……残酷な事を言うようだが、精神を元に戻せるギフテッドはこの世には存在しない。


119 ニア:やっぱり、母さんを生き返らせる事は出来ないんですね。


120 アルテミス:あぁ。……一度死んだモノは蘇らない。それが世の理だ。……残念だがな。


121 ニア:……。


122 アルテミス:だから、ニア。何があっても、たとえ何が起きようとも、この理だけは破らないと約束してくれ。


123 ニア:……はい。分かりました。


124 アルテミス:うん、よろしい。


125 ニア:……私にも何か能力があったら良かったのに。


126 アルテミス:お前さん、もうすぐ星の儀式に参加する歳だろ。


127 ニア:はい、次の星の儀式に参加できるようにベラさんが手配してくれているそうで。


128 アルテミス:それなら良かったな。毎年星の儀式に参加した者から数名程新しい能力者が生まれるそうだから、もしかするとお前も能力者の仲間入り、しちまうかもな。


129 ニア:それは願ったり叶ったりですね。


130 アルテミス:あぁ、あたしもお前の師匠として楽しみだよ。……あー、お腹減った。


131 ニア:ご飯食べそびれちゃいましたもんね。


132 アルテミス:なんか食べに行くかい。


133 ニア:いいですね!私大通りのレストランがいいです。


134 アルテミス:お前はあのスタイルのいいイケ男に会いたいだけだろ?


135 ニア:んな!なんて事言うんですか!あそこの料理は美味しいですし、なにより、カイさん目当てにあそこのお店に行く方も多いんですから!


136 アルテミス:はいはい、分かった分かった。じゃあちょっと遠いが行くか。


137 ニア:はい!……あ、ちょっと着替えたいです!この格好でお店にいくのはちょっと!


138 アルテミス:10秒な〜。来ないなら置いてくぞ〜。


139 ニア:んえ?!ちょっと!お師匠〜!







【ベラの店】



140 ベラ:あら、いらっしゃい。


141 メアリー:ウィスキー、ロックで。


142 ベラ:珍しいわね。お仕事いいの?


143 メアリー:ちょっと貴方にお聞きしたいことがありまして。


144 ベラ:つまり、長居したいってことね。まぁいいわ。あと、貴方じゃなくて、ベラ。マダム・ベラって呼んでちょうだいな。


145 メアリー:はぁ……。


146 ベラ:(ため息)……それで、何かしら?


147 メアリー:タイムスティーラーについての情報が欲しい。


148 ベラ:タイムスティーラーねぇ。……私が彼女と親身にしているのを知っている上での質問という事でいいのよね?


149 メアリー:勿論。


150 ベラ:はぁ……タイムスティーラー。本名、アルテミス・ホーワル。ギフテッドで、ブラックリストに登録されている。登録番号は001(ゼロゼロイチ)。可愛いお弟子ちゃんがいる。……って事くらいかしらね。


151 メアリー:そんな事は分かっている!もっと細かな情報を聞きに私はここに来たんです。


152 ベラ:ウィスキー1杯で私からこれ以上の情報を得られると思わない事ね。……情報屋を舐めるんじゃないよ。


153 メアリー:……それは失礼しました。


154 ベラ:そういう所で真面目なの、嫌いじゃないわ。これサービスね。


155 メアリー:ありがとうございます。


156 ベラ:それにしても、お嬢ちゃんもしつこいわよね。何度も何度もアルちゃんにプロポーズして。他にギフテッドはいるでしょう?


157 メアリー:何ですか、プロポーズって。彼女にタキシードでも着せるおつもりで?


158 ベラ:だって、毎度『私と一緒になってくれ』って言ってるじゃない。プロポーズじゃなければ何だって言うの?あと、アルちゃんはどっちも似合うと思うから両方来て欲しいわ。


159 メアリー:っ!!マダム!……やめてください。そっちの気はありませんから。……話を戻しますけど、彼女でなくてはならないんです……私がドーベルに名を連ねるには。


160 ベラ:つ、ま、り……余程の事がない限り人の入れ替わりがないドーベルに貴女が新しく入るには、今のご時世、その名を知らない者はいないであろうタイムスティーラーを自分の協力者として契約するしかない……といったところかしら?


161 メアリー:っ……そこまでお見通しですか。


162 ベラ:少し考えればわかることよ。


163 メアリー:はぁ……マダムはどこまで我々について知っているのですか?


164 ベラ:そうね……ギフテッドの人間を協力者という形で管理しようとしているのは知っているわね。


165 メアリー:なるほど……。


166 ベラ:まぁ私も協力を求められていた事があるからね、ある程度のことはその時に調べたのよ。


167 メアリー:そうなんですね。マダムはどんな能力をお持ちで?


168 ベラ:ナ・イ・シ・ョ♡


169 メアリー:えっ。


170 ベラ:秘密の一つや二つくらいある方が、女は魅力的でしょう?


171 メアリー:なるほど。……羨ましいですね、能力持ち。


172 ベラ:……能力がある人間の全てが、その能力を正しく使える訳ではないわ。事実、裏路地に住んでいる子供達の中には、自らの能力を制御出来なくて命を落とす子もいるの。ギフテッドにはギフテッドだからこそのリスクがある。そこを忘れないでちょうだい。


173 メアリー:……マ、ダム?


174 ベラ:あらいけない!もうこんな時間!さぁさぁ、もうお店を閉める時間だから帰った帰った!ほらほら!


175 メアリー:え、ちょっと、マダム?!


176 ベラ:ごめんなさいね、お代は今度でいいからね。はい上着着て、これ鞄ね。はいはい、じゃあまたね〜。


<ベラがメアリーを店から追い出す>


177 ベラ:ふぅ……熱くなっちゃって……馬鹿みたい。







【ベラの店】



178 アルテミス:ベラ、いつもの。


179 ベラ:相変わらずワイルドね、アルちゃん。いらっしゃい。


180 ニア:ベラさん!ベラさん!聞いてくださいよ!


181 ベラ:あらあら、ニーちゃんは相変わらず元気ねぇ。いらっしゃい、いつものでいいの?


182 ニア:はい!


183 ベラ:アルちゃん、眉間にシワが寄ってるわよ。綺麗な顔が台無し。


184 アルテミス:ニアがどうしてもベラに報告がしたいってさ、無理やりここに連れてこられたんだよ。


185 ベラ:あら、ニーちゃんナイスよ。これおまけしちゃう。 


186 ニア:ありがとうございます!


187 ベラ:あぁ、そうそう。アルちゃんこれ。この間来た時忘れて行ったわよ。気をつけなさいな。


188 アルテミス:あぁ、ここにあったのか。すまないね。


189 ベラ:大丈夫よ。……それでニーちゃん、話って何?


190 ニア:星の儀式で私にもギフテッドの才がある事がわかったんです!まだ何かはわからないですけど。


191 ベラ:あら!それは良かったわね!楽しかった?星の儀式。


192 ニア:はい!色々とありがとうございました。


193 ベラ:可愛いニーちゃんのためだもの。いいのよ。ニーちゃん的にはどんなギフテッドがあると思う?


194 アルテミス:知らないねぇ。どんな能力かなんて、突然分かるものだしな。


195 ベラ:もう、冷たいわね。そんな所もカッコイイけど。


196 ニア:あの、ベラさんもギフテッドなんですよね?どんな能力が?


197 ベラ:そうねぇ……ニーちゃんが能力を使えるようになったら、教えてあげるわ。


198 アルテミス:あ、そうだ。ベラ、あんた暇だよね?


199 ベラ:暇とは何よ、失礼な。


200 アルテミス:数日家を留守にするんだが、その間ニアを頼んでもいいか?


201 ニア:え、師匠どこか行かれるんです?


202 アルテミス:ちょっと野暮用でね。


203 ベラ:そういう事なら、いつも通りここの2階の部屋、使っていいわよ。


204 アルテミス:ありがと。


<ニアが席を立つ>


205 ベラ:あら、どうしたのニーちゃん。


206 ニア:トイレお借りしたくて。

 

207 ベラ:あぁ、ごめんなさいね、いってらっしゃい。



<間>



208 ベラ:それで?


209 アルテミス:それでって?


210 ベラ:あの子、ギフテッドの才があったんでしょう?……どうするの。


211 アルテミス:最悪だね。


212 ベラ:そんな事言わないの!ニーちゃんが聞いたら悲しむわよ。


213 アルテミス:そういう意味の最悪じゃない。……あの子にはあたしの能力を継がせるつもりだった。


214 ベラ:継がせればいいじゃない。


215 アルテミス:時間が無いんだ。……時間が。


216 ベラ:どういう事。


217 アルテミス:……間もなく指名手配されるらしいよ。


218 ベラ:アルちゃんが?!

 

219 アルテミス:あぁ。あのメガネのドギーから手紙が届いてね。読むか?


220 ベラ:ちょっと見せて。

 

221 メアリー:『急な連絡を申し訳ない。ドーベルが近いうちにタイムスティーラーを指名手配するらしい。こちらでも調べてみるが、くれぐれも気をつけて。貴女の嫌いなドギーより』


222 ベラ:ねぇ……どうしてこんなにあのメガネのお嬢ちゃんはアルちゃんに手を貸すのかしら?


223 アルテミス:あいつはあたしの能力が欲しいだけだろ。


224 ベラ:それだけならいいんだけれど……あれはどうするのよ。


225 アルテミス:近いうちに、な。必ずやるよ。


226 ベラ:そう……。


227 ニア:ただいま戻りました!


228 アルテミス:遅かったね。流されちまったのかと思って心配したぞ。


229 ニア:真面目な顔で何言ってるんですか。……ベラさん?


230 ベラ:ん?な、何かしら?


231 ニア:顔色悪いですが、大丈夫ですか?


232 ベラ:え、えぇ。大丈夫よ。ごめんなさいね、ちょっと失礼。


<ベラが裏に>


233 ニア:ベラさん、大丈夫ですかね?


234 アルテミス:あいつは大丈夫だろうよ。それ、飲まないと不味くなるぞ。


235 ニア:あぁ、はい!


236 アルテミス:それ好きだよな。


237 ニア:美味しいんですよね〜なんか、懐かしい味、みたいな?感じがして。


238 アルテミス:なんだそれ。


<ベラが急いで戻ってくる>


239 ベラ:アルテミス、表にドギーが来てる。裏から出れば路地に繋がるから真っ直ぐ帰れ。


240 アルテミス:分かった。行くぞ、ニア。


241 ニア:へぇ?!な、何なんですか?!ドギーが来てるって……!


242 アルテミス:今は説明をしている時間が無い。とりあえず行くぞ。


243 ニア:は、はい!


244 ベラ:『アン、2人を闇で包め』


245 ニア:な、なんですかこれ……?


246 アルテミス:面倒をかけて済まない。


247 ベラ:腐れ縁のよしみだ。気にせず行け。……落ち着いたらまた来い。


<アルテミス、ニアが裏から出ていく>







【ベラの店】



<メアリーが入店>


248 メアリー:アイツは?!


249 ベラ:あぁ、お嬢ちゃん……いらっしゃい。


250 メアリー:あいつは!来てないですか?!


251 ベラ:まぁ落ち着きなさいな。……アルちゃん、もう1ヶ月もこの街には姿を現してないわ。……私にも足取りが分からないのよ。


252 メアリー:そうですか……弟子のあの子は?


253 ベラ:ニアは無事よ。


254 ニア:ちょっと!リーチェ!やめてってば!


255 ベラ:ほら、ご覧の通り。


256 ニア:あ、メアリーさん。お久しぶりです。


257 メアリー:あいつの居場所、知らないのか?!


258 ベラ:リーチェ、お願い。


259 メアリー:うわっ、眩しっ!


260 ベラ:お嬢ちゃん、落ち着きなさいと言ったでしょう。


261 メアリー:申し訳ありません。……ところでリーチェって……?


262 ニア:ベラさんに力を貸してくれている精霊さんです。アンとリーチェは双子なんですよ。


263 メアリー:そう、なのか?


264 ニア:アン、リーチェ、おいで!


265 メアリー:その精霊達はマダムの精霊ですよね?


266 ベラ:ニーちゃんの事が気に入ったみたいでね。あの子の呼び掛けにも応じるようになったのよ。


267 メアリー:そんな事……聞いたことがない……。


268 ベラ:私もびっくりだもの。でも、あの子達が言ってたから間違いないわ。


269 メアリー:マダムは精霊と話せるのですか……?


270 ベラ:まぁね。


271 メアリー:マダムもこの子も何者ですか……。


272 ベラ:情報屋のイザベルファミリー、といえば貴方なら分かるかしら?


273 メアリー:まさかその一員で……?


274 ベラ:そうよ。ママにはお世話になったわ……。


275 メアリー:たしかイザベルファミリーは活動を辞めたとかって聞きましたが。


276 ベラ:えぇ。ママが亡くなってね。みんな各々元気に過ごしてるわ。今でも年に何度か顔を合わせるから。


277 メアリー:ほかのメンバーは何処に?


278 ベラ:それ以上は秘密よ。ニーちゃんがキラキラした目でこっちを見てるから、この話はおしまい。


278 ニア:えぇー!教えて下さいよ!


280 ベラ:ニーちゃんがちゃんと能力を使えるようになったらね。


281 ニア:またそれですか〜。


282 メアリー:貴女もギフテッドなんですか?


283 ニア:はい。才はあると、星の儀式で。ベラさんに色々教えて貰ってます。


284 メアリー:そうか……頑張ってね。


285 ニア:ありがとうございます。


286 メアリー:じゃあ私はこの辺で失礼します。……また来ます。


287 ベラ:じゃあね、お嬢ちゃん。


<グラジオが退店>


288 ベラ:さぁ、ニーちゃん。そろそろ本腰入れて特訓するわよ。ほら、来なさい!


289 ニア:は、はい!







290 ニアN:お師匠が姿を消してから1ヶ月ほど経った頃、帝国中に師匠の指名手配書が配られました。お師匠の消息は未だ不明。目撃証言すらないまま早くも3ヶ月が経とうとしていました。




【ベラの店】



291 ベラ:ニーちゃんも、上手に能力使えるようになってきたわね。


292 ニア:ベラさんのおかげですよ。あと、リーチェとアンも。……ふふ、くすぐったいよ。


293 ベラ:本当にリーチェとアンはニアが好きねぇ。ニアのところに行っても良かったのよ?


294 ニア:私にはルミニスとテネがいますから。お母さん達と一緒じゃやりづらいよね。ねー。


295 ベラ:あらま、みんな揃って親離れですって。寂しいわね。


296 ニア:親……お師匠はどこ行っちゃったんですかね……。


297 ベラ:あの子ならきっとふらっと戻ってくるわよ。大丈夫。


298 ニア:あぁ、私は大丈夫だよ。ふふ、ありがとうルミニス。


299 ベラ:ねぇニーちゃん。1度家に行ってみない?もしかしたらなにか手がかりがあるかもしれないわ。


300 ニア:でも私、鍵持ってないですよ。


301 ベラ:ふふ、情報屋を舐めないでちょうだい。鍵なら任せなさいな。


302 ニア:そうでしたね。マダムベラの前に開けられない扉と抜けられない罠はない!ですもんね。


303 ベラ:そんな恥ずかしいセリフを言った覚えはないわよ。


304 ニア:お師匠が言ってました。


305 ベラ:あのアマ!……帰ってきたら平手打ちね。




【アルテミス・ニアの家】



306 ニア:久しぶりに来ました……なんだか懐かしいです。


307 ベラ:ほら、中入るわよ。


308 ニア:はい。


309 ベラ:……あら、これドア。


<ベラがドアを開ける>


310 ニア:鍵が空いてた……まさか!


<ニアが家の中へ>


311 ニア:お師匠!お師匠?!


312 ベラ:誰もいなそうね。


313 ニア:でも、ここの鍵を持っているのはお師匠だけなんです。絶対、お師匠はここに戻ってきたはず。


314 ベラ:私2階を見てくるわね。


315 ニア:はい。


316 ベラ:……ニーちゃん!


317 ニア:何かありましたか?!


318 ベラ:これ、貴女の部屋に置いてあったわ。この字、アルちゃんの字じゃない?


319 ニア:開けてみますね。


320 アルテミス:『あたしの優秀な愛弟子へ。突然居なくなって悪かったね。あたしはこれから少し旅に出ようと思う。あたしからお前さんに教える事はもうない。ニアも好きに生きなさい。……ベラ、あとは頼んだよ。』


321 ベラ:アルちゃん……。


322 ニア:私これからどうしたらいいんでしょうか……。


323 ベラ:ニーちゃん、店に戻るわよ。


324 ニア:え?急にどうしたんですか。


325 ベラ:アルちゃんから貴方宛てに預かっていた物があるの。それを渡すわ。




【ベラの店】



326 ベラ:これよ。


327 ニア:開けても……?


328 ベラ:元々貴女の物よ。気にせず開けなさい。


329 ニア:はい。……これ、お師匠の砂時計じゃ……。


330 ベラ:……おそらく今のニーちゃんなら大丈夫だと思うわ。手をかざして、名乗ってみなさい。


331 ニア:……ニアです。


<砂時計が光る>


332 ベラ:やっぱり。


333 ニア:ちょ、ちょっとベラさん!これどうしたら?


334 ベラ:大丈夫よ、それはもうニーちゃんのものだから。


335 ニア:ど、どういう事ですか。これはお師匠の物です。


336 ベラ:貴女が、その砂時計の使い手になったって事。……元々、アルちゃんの能力は継承されていくものなの。アルちゃんも、あの子の師匠から受け継がれた。だから次はニーちゃんの番。……私が知っているのはこのくらいよ。後の詳しいことは本人に直接聞きなさい。


337 ニア:はぁぁぁ!もう!どういうことよ!


338 メアリー:ニアちゃん、いますか?


339 ニア:居ますよ!なんですか!


340 メアリー:随分と機嫌が悪い……。


341 ニア:どこぞのお師匠の突然さと身勝手さに呆れているんです。で、なんですか。


342 メアリー:その師匠だが、今朝出頭して来ましたよ。


343 ベラ:は?


344 ニア:お師匠が出頭って……捕まるようなことしてませんよね?


345 メアリー:先日の法改正で、アンノウンのギフテッドはその能力を開示する事が義務付けられました。……それをあいつは拒んだ。


346 ニア:それだけで……?


347 ベラ:お嬢ちゃん。そんな通達、私のところには来てないぞ?


348 メアリー:ブラックリストに登録されている順番、そして危険度が高いとされる者から順番に通達されています。


349 ベラ:チッ……そういう事か。


350 ニア:わ、私に出来ることはありませんか?お師匠を助ける方法は?


351 メアリー:残念ながら。


352 ベラ:……いや、ひとつある。


353 ニア:なんですか?!


354 ベラ:だが、この方法を取るならば、ニア、お前はドギーの仲間にならなくちゃいけない。それでもいいのか?


355 ニア:お師匠を助けられるなら何でもします。教えてください。


356 ベラ:そのためにはお前さんの力を借りなきゃならねぇ。それでもいいか?


357 メアリー:私は……。


358 ベラ:その代わり、と言っちゃなんだが、アルテミスの代わりにニアがお前さんの出世の手助けになるさ。


359 メアリー:どういう意味ですか。


360 ベラ:その意味を話すのはお前さんがイエスと言ってからだ。


361 メアリー:……はぁ。分かりました。


362 ベラ:よし。じゃあ話すぞ。まず、まぁこれはニアもさっき知った事だが、アルテミスの能力は継承されるものなんだ。


363 メアリー:……は?能力の継承なんて聞いたことないですよ……。


364 ベラ:考えるのは後にしてくれ。時間が無い。


365 メアリー:すみません。


366 ベラ:それで、その能力だが、継承元は完全に能力が受け継がれた後はその能力が使えない。


367 ニア:つまり、今のお師匠は……能力が使えない?


368 ベラ:あぁ。恐らく全くという訳では無いだろうが、時期を考えても もうほとんど使えないだろうな。


369 メアリー:それが奴を解放するのとなんの関係が?


370 ベラ:察しが悪いな。今のアルテミスにはアンノウンとしてその能力を提示できるほどの力が残っていないんだよ。


371 ニア:お師匠の代わりに私が能力を開示すればお師匠は罪に問われない……。


372 ベラ:そういう事だ。


373 メアリー:しかし、ブラックリストのトップと言ってもいいであろうやつをそう簡単にドーベルは許すでしょうか?


374 ベラ:そこでお嬢ちゃんの出番だ。お前さん、ギフテッドの能力を必要としてるな?


375 メアリー:はい。……ドーベルに入るには、ギフテッドの協力が必須ですから。……まさか?


376 ベラ:ニアを協力者として契約しろ。ニアは私と同じ能力が開花している。その上、アルテミスの能力も使えるとなれば上も放っておかないだろうな。


377 メアリー:……貴女、何者?


378 ニア:私なんか変ですか?


379 ベラ:お前は規格外だよ。ギフテッドとして開花した能力はアンノウンのものだ。そして継承でしか受け継がれない能力も使えるとなれば……分かるな?


380 ニア:……気をつけます。


381 メアリー:……把握した。まずは契約をしよう。明日またここを訪れるからその時に。


382 ニア:分かりました。


383 ベラ:アルテミスの能力検証日はいつだ。


384 メアリー:一週間後です。


385 ベラ:……ニア。お前はそれまでにアルテミスの能力をマスターしろ。


386 ニア:はい。







387 ニアN:あれからあっという間に一週間が経った。お師匠を解放できるのは今日限り。皆(みな)の間には緊張した冷たい空気が流れている。 お師匠の能力検証は警察署内の訓練場にて行われる。私達はメアリーさんの案内の元、訓練場へ向かった。




【警察署内 訓練場前】



388 メアリー:この扉を開ければ訓練場です。……大丈夫?ニア。


389 ニア:はい。……行きましょう。


390 ベラ:何も心配しなくていい。私達の弟子なんだ、胸を張れ。


391 ニア:はい!


<扉を開ける。訓練場内へ>


392 メアリー:失礼します。突然の事で申し訳ありませんが、私の協力者がそこにいるアルテミス殿の能力検証について申したいことがあると。


393 ニア:突然の謁見、大変申し訳ありません。私はニアと申します。


394 アルテミス:ニア……?


395 ニア:お師匠、遅くなり大変申し訳ありません。


396 アルテミス:何でここに……?


397 ニア:プライドの高いお師匠を前に、大変失礼な事を申しますが、お師匠に能力検証をするほどの力は今現在残っておりません。


398 アルテミス:やめ……。


399 ニア:つまり、お師匠は今、ギフテッドではありません。お師匠の能力は私が受け継いでおります。(※被せ)


400 アルテミス:(※被せ)やめな!ニア!


401 ニア:やめません!……だいたい、なんなんですか?急に居なくなったかと思えば、出頭したって。私を守るためだか何だか知りませんが、辞めてくださいよ。……ここまで育ててくれた恩人が、自分のために罪人になるなんていやですよ。


402 アルテミス:いい加減にしろ!お前のためなんかじゃない!


403 ベラ:2人ともいい加減になさい。お偉いさんの前でしょう。


404 ニア:すみません。


405 ベラ:少し提案があるの。……2人で戦ってみたら?どちらが強いか。それで明らかになるでしょう。お偉いさんの皆様はどうです?……だそうよ?2人はそれでいいのかしら?


406 アルテミス:あぁ、いい。弟子だからって容赦しないからね。


407 ニア:いつまでも守られてばかりの私だと思わないでください。


408 ベラ:じゃあ決まりね。それじゃ、私達は端に寄っていましょうか。


409 メアリー:審判は私が。……準備はいいか?


410 アルテミス:あぁ。いつでも。


411 ニア:私も大丈夫です。


412 メアリー:では……はじめ!


413 ニア:こちらから行かせてもらいますよ!……『テネ、全ての光を闇に変えろ』


<ニアの能力で一面真っ暗に>


414 アルテミス:クソっ、何も見えない。……こっちか。『時の精霊よ、元の姿に巻き戻せ』


<足場を崩す>


415 ニア:うわぁっ!……足が!……それならこれで!


<崩れた地面を元に戻す>


416 メアリー:今の、無詠唱……?!


417 ベラ:ふふふ!本当にニーちゃんは最高ね。いつも予想の斜めを行ってくれる!


418 アルテミス:今の!……それなら……『時の砂よ、全てのものに時を分け与えよ』


419 ニア:クソっ!制御が……できない!


420 ベラ:あらあら……流石師匠ってところかしらねぇ。


421 メアリー:あれ何が起きてるんです?


422 ベラ:一度足場を崩して、ニーちゃんが直した。そこにアルちゃんが干渉してニーちゃんの能力を暴走させてるのよ。どうやって制御するのかしらねぇ。


423 ニア:どうすれば……あぁ、ルミニス、テネ。……うん、とりあえず深呼吸。……よし、『ルミニス!全力でここを照らしてくれ』


<ルミニスの能力で目くらまし>


424 アルテミス:うわっ!眩しっ……やばい、前が見えない……。


425 ニア:ルミニス、そのままお願い。……これで足場を!


<ニアが足場を崩す>


426 アルテミス:くそっ、間に合わない。……仕方ないか。


427 ベラ:アルちゃん……?まさか!


428 メアリー:どうしたんです?


429 ベラ:アルちゃん、自分の残っている全ての能力を使う気だわ。


430 メアリー:どうなるんです?


431 ベラ:ギフテッドはね、自分のキャパを超える能力を使えば死ぬのよ。


432 メアリー:それじゃ……死ぬつもりで?


433 ベラ:そんなこと、今のアルちゃんの頭にはないでしょうね。

 

434 メアリー:止めなくていいんですか?


435 ベラ:女が本気で成し遂げようとしている所に口出しなんて、ナンセンスよ。


436 アルテミス:『時の砂よ、我の盟約に従い、全ての時を掌握せよ。』


437 ニア:うわっ、なんだこれ……!


438 アルテミス:ニア、お前があたしに勝つというなら、これを自分の力で何とかしてみせろ!


439 ニア:くっ、どうしたらいいの!……ん?砂時計が光ってる。……あ、そうか。この砂時計の持ち主は私。それなら……!


440 アルテミス:どうした、ニア!遠慮はいらないよ!思いっきりやりな!


441 ニア:師匠。……ありがとうございました。


442 アルテミス:……ぐっ……。


443 メアリー:あの威圧感が止まった……?


444 ベラ:お嬢ちゃん、この試合を止めてちょうだい。


445 メアリー:は、はい!……そこまで!


446 アルテミス:ははっ……あーあー。まさかお前に負けるとはな。


447 ニア:私だって強くなりましたから。


448 アルテミス:あそこで真っ直ぐ歩いてくるバカがいるか。


449 ニア:そのバカはここにいますよ。


450 アルテミス:まさか触れるだけで止めるとは。無詠唱まで出来るとは、大した化け物だな、お前は。


451 ニア:それ褒めてますか?


452 アルテミス:どうだろうな。


453 ベラ:2人とも、しっ!……お嬢ちゃん後はお願い。


454 メアリー:はい。……ただいまご覧頂きました通り、アルテミス殿の力は彼女に受け継がれています。


455 ベラ:あと、ニーちゃんは私と同じ能力を使えるわ。それは私が保証する。


456 メアリー:ニアとは私が契約を結んでおりますので、今日のところは「アルテミス殿は無罪」という事で見逃して頂けないでしょうか。……ありがとうございます。はい、彼女の事はまた日を改めて。では、失礼致します。


<訓練所から出る>


457 ベラ:どう?弟子と腐れ縁に助けられる気持ちは。


458 アルテミス:ふふ、最悪だよ。


459 ニア:帰りましょう……お師匠。


460 アルテミス:あぁ。







【ベラの店】



461 ベラ:それで。どう?弟子がいつの間にか国を仕切ってる気持ちは。


462 アルテミス:あいつが仕切ってる訳じゃない。


463 ベラ:今ではこの国の姫やどこぞの貴族令嬢と並んでファンクラブが出来るほどの人気なのよ?仕切ってるって言っても過言じゃないわ。


464 アルテミス:あたしの弟子はアイドルじゃないよ。


465 ベラ:ふふ、懐かしいわね。貴女も前皇后様の時に同じような扱いされてたものね?


466 アルテミス:辞めてちょうだい。


467 ベラ:何を?私は事実を述べてるだけよ?


468 アルテミス:まぁシエラ様はわかる。美人だからね。……が、あたしまでアイドル扱いされるのはおかしいでしょう。


469 ベラ:当時のアルちゃん、絶世の美女だったもの。当然の結果よ。


470 アルテミス:そうかい。


471 ベラ:今は大人の色気がプンプンね、ふふ。


472 アルテミス:はいはい、ありがと。


473 ベラ:あら、今日はご機嫌ね。今日こそ私とデートしてくれてもいいのよ?


474 アルテミス:機嫌はいいけど、それはお断りだね。


475 ベラ:あら、残念。……ふふ、そろそろかしら。


476 アルテミス:またか。


<ニアとメアリーが店に来る>


477 ニア:お師匠ー!お久しぶりです!


478 アルテミス:うるさいね!相変わらず!昨日も一昨日もその前も同じ話したでしょうが!


479 メアリー:ちょっと、ニア!任務中ですよ!どこいくんです!


480 ベラ:ふふ、2人ともいらっしゃい。


481 ニア:今はお昼休憩ですから!どこに行ったって私の自由でしょう!


482 メアリー:お昼の時間というだけでまだ任務中です!お昼休憩はもう少し後とあれほど説明したでしょう!


483 ベラ:まぁまぁ2人とも、せっかくだし少し休憩して行ったら?


484 ニア:はい!喜んで!


485 メアリー:はぁ……。


486 アルテミス:あーあー、うるさいねぇ。まったく。



(終)