◇カメラ目線
大阪の梅田の地下街を盲導犬のミッケルと歩いていたら、後ろの方から「ワンちゃん、お仕事をしてるのよ」という女性の声が聞こえてきました。
きっと小さなお子さんに説明をしたのでしょう。
私は声がした方を振り向き、マスクで顔は隠れていますが、眉毛をちょっと上げてニコッと笑い会釈をしました。
ミッケルと歩いていると、よくこんな場面に遭います。
ところで私が白杖を持つようになり、昔と大きく変わったことの一つに「見られる」という意識の変化があります。
どうしても白杖や、盲導犬は目立ちます。
こんなことがありました。
白杖を持つようになり、同僚と閉店前の静かな百貨店の売り場を歩いたあと、同僚が「店員さんが、みーんな見ていましたよ」と私に教えてくれました。
見る人の気持ち、とてもよく分かります。
見る人は全く悪気はなく、心配をしてくれている人も多いと思いますが、最初の頃は「見られている」恥ずかしさを気にしていたのも確かです。
ある時テレビの複数台のカメラの役割の話を聞きました。
よく「1カメ、2カメ、3カメ」と言ってカメラの番号を耳にすることがあります。
どれが「1カメ」で、どれが「2カメ」だったかは忘れてしまいましたが、その違いを聞いてとても納得しました。
例えば私と誰かAさんが会話をしているところがテレビに映っているとします。
喋っている私を撮っているカメラを「1カメ」とします。 話していると部屋のドアが「コンコンっ」とノックの音がして、私がドアーの方を見ます。
同時にカメラがドアを映します。
これは私が目をやった、私の目線の映像 で、これを「2カメ」とします。
その二人の様子や、部屋の全体を映しているカメラを「3カメ」とするなど、それぞれの役割が決まっているそうです。
このカメラの話を聞いて、私は思いました。
「これからは2カメに切り替えて行こう。見られている映像でなく、私が見ている映像に…。」
それで随分、気持ちに変化が現れ、見られているという恥ずかしさを卒業出来たと思います。
これからも私の自慢の素晴らしいミッケルと一緒に「2カメ」で歩いていきます。
ちなみにミッケルは「可愛いっ~♪」と言われるのに、すっかり慣れています。
さすがです。
にこっ! 亀ちゃん
※写真は秋の里山の散歩です。