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chippi&tetu

「サード」

2016.08.30 06:03



 「都市は巨大なグランドで、すべての市民は野手である。うまく『まわりこまなければ』刺されるだろう。全速力で町を走り抜けてゆくサード、追って行くⅡBを俯瞰で。 いずれにしても、ものみな音楽で終わる。 ラストシーンを作るのは、演出家の仕事です」

(「監督東陽一『サード』のラストシーンについて」脚色・寺山修司)



この言葉のとおり、ラストシーンのほかは演出めいたあとがなかった。



ベースを走り回る「サード」は役じゃなかった、演技じゃなかった、

「永島敏行」じゃなかった、

退屈から抜け出て大きな町へ向かおうとする、すぐその目の前にいる「サード」17才だった。


身体を売る「新聞部」は役じゃなかった、演技じゃなかった、

「森下愛子」じゃなかった、

退屈から抜け出て大きな町へ向かうために身体を売る、すぐその目の前にいる「新聞部」17才だった。



あのころ、すぐその目の前にいる17才たちは、みな、退屈から抜け出て大きな町へと向かった。

彼らはみな、たどり着いた大きな町の映画館に入って暗闇の中の小さなスクリーンを見つめていた。


彼らが見つめるスクリーンでは、すぐその目の前にいる17才の「サード」はベースを走り回り、「新聞部」は身体を売っていた。

「サード」は「永島敏行」じゃなかった、

「新聞部」は「森下愛子」じゃなかった。



「いずれにしても、ものみな音楽で終わる」演出のラストシーンは、また、すぐその目の前にある、ずっと変わることのない大きな町の風景を映しだしていた。


退屈から抜け出てたどり着いた大きな町では、

うまく「まわりこむ」ために全速力で走り抜けていかなければならない、

うまく「まわりこむ」ことができなければ、また身体を売るしかない。



このラストシーンの演出によって、「サード」は「サード」のままに、「新聞部」は「新聞部」のままにスクリーン上にとどまった。


そして彼ら、たどり着いた大きな町の映画館の暗闇からでてきた17才たちの網膜には、「サード」「永島敏行」、「新聞部」「森下愛子」の姿が、永くいつまでも刻み込まれることとなった。