「パーソナルスペース」放課後等デイサービスみのりⅡ
動物に縄張りがあるのと同様に、人にも心理的な縄張りがあり、パーソナルスペースとよばれています。
性被害・加害の予防といった観点から、特別支援教育に取り入れられる題材です。
みのりⅡの11月のSSTのテーマとなりました。
「他者と安心して一緒にいられる距離」という概念があまり無い様子の子がちらほらといます。
対人的に物理的距離をとるようにすることは、自分を大切にすることでもあり、相手を大切にすることでもあります。
「コロナが終息すれば近づいてもいい」といった誤解を与えないよう、いわゆる「ソーシャルディスタンス」とは異なる概念であることを教えていきたいところです。
では、友人同士で実際にどのくらいの距離が適切かというと、「腕一本分」という言い方がわかりやすい目安となります。
腕をまっすぐ前に伸ばして、目の前の相手に少し触れる程度の距離です。
もちろん、本人の性格や相手との関係性によって違ってきますし、個別に説明していくことが必要です。
そして、例外があることも教えていきます。
家族や恋人と手をつないだり、友人と肩を組んだり、そういった場合はパーソナルスペースに入ることが許されます。
この場合に大切なのは、お互いの合意があるかどうかという点です。
たとえ大好きな相手でも、常に相手もそう思っているということはありません。
「私は○○さんが大好き」は、「○○さんは私のことを大好き」ではありません。
対人距離の感覚は、人それぞれ違うので、相手が自分と同じように感じるとは限らないものです。
「自分がされて嬉しいことは相手にもするべき」というよりは、「この相手ならどう思うのか」が大事だと思います。
しかし、その時の気分やコンディションにも左右されますし、相手がどう思っているかは事前にわからないことの方が多いですね。
「やめてほしい」という意思表示を受けたらそれ以上やらない、という教え方をしました。
仲が良ければボディタッチをしてもいいということではありません。
「近い」と言われたたら離れる必要があるし、「やめて」と言われたらやめなければいけないと思います。
子どもが「~されて嫌だった」と言うとき、「あなたのことが好きだからだよ」という伝え方は、避けたいと思います。
「好きだったら触っていい」「好かれていたら触られて嫌でも我慢しないといけない」といった誤解が生じるおそれがあります。
たとえ仲が良かったとしても、嫌だと思ったら「嫌だ」と言い、「嫌だ」という気持ちが受け止められることが必要だと思います。
嫌なことは「嫌だ」と言ったり、自分を大切にするための行動をとれるようになると、他者と折り合いをつける力も少しずつ育っていきます。
また、性被害は身近な人から受けることも多いのが実情ですので、NOの意思表示ができることは、普段から大切にしていきたいと思います。
11月のSSTでは、「腕一本分」の距離を実演しながら説明を行いました。
子どもたちからは、
「Sちゃんは、私にとっては親友だけど、Sちゃんから見たら親友じゃなくて友人かもしれない」
「触ったら殺される。でもつい触っちゃうんだよ」
といった反応があり、今回の内容を子どもたちの中でどのように消化していくのか見ていこうと思います。
中には、「パーソナルスペースって、本当にあるの?」と言う子もいました。
実感を持てるように説明しきれなかったなと、私の力不足も感じました。
一度教えれば理解して実践できるといったものでもないと思いますので、日常のなかで繰り返し伝えていこうと思います。
伝えきれなかった部分もあるかと思いますので、疑問点が出てきましたらスタッフまでお問い合わせいただければと思います。