中国のファイナンスの限界?
中国ではこれまで商品担保融資が積極的に行われてきた。
輸入企業は保有する銅Aを担保に銀行からドル建てLCを担保銅の7~8割掛けで発行してもらい、海外輸出企業はそのLCを受け取り銅を輸出してきた。(これは、鉄鉱石などの他の商品でも同様である)
海外から輸入した銅Bを市場で換金し、手にした人民元を不動産投資や、理財商品に回すことで「利ザヤ」を稼ぐというのが一つのファイナンスである。
またさらに、それを拡大化させたファイナンスが下記である。
通常、輸入業者が担保として差し出す銅Aは外銀Aに対してのみでなければならないはずだ。不動産の抵当のように第一抵当であれば、もしもの時の担保として価値を有するが、第2抵当、第3抵当となれば、融資に対する担保の価値は圧倒的に低く、もしもの時は貸し倒れ物件に該当せざるをえなくなる。
中国は実際のところ、銅担保Aを複数の銀行に書面を偽装してドル建てLCを発行してもらっている。そして、発行されたLCで得た銅などの商品を人民元に変え、不動産投資や理財商品へと流し、通常の数倍の規模のファイナンスをしてきた。
そうすることが中国での「信用創造」を可能にし、商品の過剰な輸入に繋がり、商品相場の上昇を手伝ったと言える。過剰な商品需要は公共投資による側面もあるが、実態は中国特有のファイナンスによるものだろう。
一方で、このファイナンスを下支える仕組みは人民元調達金利と米国ドル調達金利における両国の「差額」である。
基本的に、ドル調達コスト<人民元調達コストであり、①ドル調達コストが安いうち、かつ②不動産投資で利ざや稼げるまではこの仕組みは拡大していく。
だが、不動産価格が高騰し、米国経済が好調、かつ金利引き上げが目前となったことでドル調達コストでさえも上昇過程にある中では中国のファイナンスは縮小せざるを得なくなる。
そして不動産で利回りが生じなくなったことで、理財商品への資金流入したのは皆が知る情報だろう。
問題は、
①現時点で中国が成長率7%以上の達成を絶対視しなくなったこと
②十分すぎる程に高い、不動産価格。そして不動産利回りの低さ
③公共投資を抑制していること
④これまでファイナンスを支えてきた外銀が、融資の絶対基準として採用していた担保が本当に存在するのか疑心暗鬼になり、LCの発行を抑制していること
⑤米国金利が上昇し、ドルの調達コストも上昇しているため人民元調達コストとのかい離が縮小していること
などによって、依然のような中国による商品のフィナンスは期待できないことだ。
特に④は重要で、もし仮に担保の代わりにドル建てLCを発行していた輸入業者が飛んだ場合、担保の回収に動くが、実際には担保は存在しなかったということになれば、当然その分の融資は焦げ付かざるを得ないだろう。
特に問題は、チャータード銀行やドイツ銀行などで、これら銀行は「在庫ファイナンス」で他行より、より多く融資しており、焦げ付いた場合の損失は大きくなることは必須だろうと思われる。特にドイツ銀行は為替デリバティブにおける市場シェアの16%以上を占めており、かつギリシャ融資に関しても多大な評価損を抱えていると見られるため、今後の動向には注意が必要だろう。
また、当然ながらドル建てLC発行にも及び腰となる点は否めない。商品決済はドル建てが主流のため、貿易の潤滑な決済が滞るだろう。そのことによって、世界の貿易動向は以前のような拡大路線ではなく縮小傾向にある。この点も見逃すことはできないだろう。
まとめ
①世界の商品需要は中国独自のファイナンスの結果
②ドルキャリー取引に旨みがなくなり、逆流が起こりつつあること
③不動産→理財商品→株取引と手を変え、品を変えてきたが頼みの株は現在綱渡り。
だけど、中国は冬のオリンピック決まったね。中国が息を吹き返すか見物だね。
米国の2枚舌外交にはとことんイライラするけど、対立するAとBに資金供給ならびに経済恩恵を与えて経済コントロールするのは毎度のことなので、まずは動向チェックと。
1999年のように、中国が人民元を切り下げると米国に圧力掛けてくると、手のひらを返したように円高が日本を襲います。TPP進まないし、安保も足並み揃わないからね。