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『おくのほそ道』裏話……二つの謎

2020.12.10 03:53

http://www.basyo370.com/?p=50 【『おくのほそ道』裏話……二つの謎】 より

第一の謎:『おくのほそ道』の「真実」の姿を書き記した『曾良随行日記』

しかし、これは芭蕉の死後約250年もの間、発見されなかった。

誰によって、なぜ隠されていたのか?

芭蕉は奥の細道を完成させるのに 曽良の随行日記を必要としなかった と考えられないのでしょうか?言葉を変えると、二人の旅の目的が別だった。

しかも曽良は この旅を評価され 巡見使に選ばれたともいわれています。

1、『曾良随行日記』の発見

『曾良随行日記』とは、河合曾良(かわいそら)がつけていた記録で、訪れた地名や距離などの事実を正確に書きとめた「元禄二年日記」のことです。

また、日記とは別に、旅の途中で芭蕉や曾良の詠んだ発句、道中での俳諧興行を記録したものも残っており、句の推敲過程を知る上で重要な資料となっています。

曾良はこれらの他に、通過予定地の歌枕や古社を記録したメモ、元禄四年の日記を、『おくのほそ道』の写本とともに桐の箱にいれて所蔵していました。

この貴重な資料は、一部を写したものが伝わっていたことから、存在は知られていたものの、全貌は分かっていませんでした。

曾良の死後、杉山杉風に預けられ、その後、様々な人の手に渡りましたが、昭和18年(1943)に、俳人であり芭蕉研究家の山本安三郎が出版したことで、その全容が明らかになりました。

曾の日記と突き合わせてみると、芭蕉の書いた『おくのほそ道』には、多くの虚構があったことがわかります。

道順が逆であったり、宿泊地が違ったり、出来事を創作したり……。『おくのほそ道』は純然たる旅の記録ではなく、旅を舞台にした物語だったのです。

おそらく芭蕉は曾良に、随行日記の公開を控えるように言っていたのでしょう。

物語の舞台裏を見せる必要はない、いや、むしろ見せない方がよいと考えていたのだと思います。

曾良は芭蕉の命令に忠実に従い、日記の存在を公にはしませんでした。その後、日記を手に入れた人たちも、その重要性には気づかなかったようです。『おくのほそ道』と内容が大きく食い違っているために、いい加減な記録だと思い込んだ可能性もあります。

芭蕉は『おくのほそ道』に深い思い入れがあり、ずっと手許に置いて推敲を続けていたほどでした。執念ともいえるほどの愛着があったのです。

その愛着があまりに強かったがために、「真実」が覆い隠されてしまったとは言えないでしょうか。

芭蕉自身が、曾良の日記を隠してしまったのだ、と私は思います。

第二の謎:芭蕉は忍者だった。これは本当?

2、芭蕉=忍者説

松尾芭蕉が忍者だったという話があることはご存じでしょう。

なぜ、そう言われるのでしょうか。それは本当なのでしょうか。検証してみましょう。

〇出身地

忍者だと言われる理由の筆頭は、芭蕉が伊賀上野出身だから。また、服部半蔵の縁者である藤堂新七郎家に出仕したから。

◆……だから忍者だというのは、あまりに乱暴。

実際、芭蕉の生家は農民の住む地域にあり、忍者になれる身分ではありませんでした。

〇移動距離

一日に50kmも移動した日もある。これは不可能。訓練を受けた忍者ならば可能なはず。

◆参勤交代で大名行列が移動した距離は平均40km程度ですが、急ぐ時には50kmを移動することもあったようです。芭蕉が50km移動していても、不思議はありません。馬を借りた可能性もあります。

〇旅に出られた?

江戸時代は、自由に旅をすることはできなかった。

芭蕉が何度も旅に出られたのは、幕府のはからいで、手形や資金を手に入れたからではないのか?

◆当時は五街道などの交通網も整備され、人々の旅への関心も高くなっていました。庶民も「伊勢神宮参詣」という口実であれば通行手形を得ることは容易でした。

『おくのほそ道』にも伊勢参宮する遊女が登場します。金で手形を買うことも行われていたそうです。

江戸時代には旅をすることは困難だった、という常識から疑う必要があります。

また、当時、各地に俳諧愛好者がおり、芭蕉のような俳諧宗匠をもてなし、資金提供をおこなっていました。芭蕉は、各地で句会を開くことで収入を得ることができたのです。

〇松島における不可解な行動

なぜ松島で句を作らなかったのか。幕府から派遣された隠密として外様大名の仙台藩を調べるために仙台に行ったのでは。

◆芭蕉が松島で句を詠まなかったのは、「松島の美しさは、絵筆や言葉では表せない」との思いからだと思われます。(「松尾芭蕉のまわった名所」の項をご参照ください)

結論として、「芭蕉=忍者説」は面白いのですが、「違う」と言わざるをえません。