星のこおる12月
Maribrengaëlです。
この時期、児童文学作家である安房直子さんの「星のこおる夜」を読みたくなります。安房さんが紡ぎだす不思議な世界観が大好きで、子どもの頃からたくさんの作品を読んでいたのですが、これは「ねこじゃらしの野原」という短編集に入っていたものです。あるとうふ屋さんを通して起こる物語が6つの物語のひとつです。
ある日、女の子が”こおりどうふ”を作りたいから、ありったけのとうふを売ってくださいと、とうふ屋さんを訪れます。聞くと、山の上の柏の木の精だ、と言います。今夜「星のこおる夜」がやってくるから、今すぐありったけのとうふが必要だと。大きな木の枝にとうふを薄く切って吊るすんです、と。今でも想像すると、冷えたとうふの質感とか、星と月の青白い光とか、寒さにこごえた木々の匂いをリアルに感じて不思議な気持ちになる物語です。
何年も私にとって12月は、年末進行で忙しい仕事、連日の忘年会、乗り込めないほどギュウギュウな満員電車、今年中にやっておかなければいけないことに追い立てられるように過ぎ去っていました。そのラストには自分の1年のプレゼンを全社員の前でやらなければいけない会社の忘年会もとても重荷で、仕事納めをした後はただただもうぐったり…そうこうしているうちに新しい年が始まってしまう…何年もそんな感じでした。でも数年前に、会社を辞めてその生活を変えてからは、忘れていた12月の感覚を感じられるようになりました。「星のこおる夜」にあるような年の瀬が迫る夜の不思議な空気感もやっと感じられるようになりました。
特に今年は、ウィルスによっていつもの12月はやってこないでしょう。当たり前のようにあった忘年会が軒並み中止になったり、かき入れ時だった飲食店にとっては厳しい現実を突きつけられてしまうこともあるでしょう。でも、いつもの12月がやってこないことはもちろん悲劇ですが、それは今まで見えなかったものを見るチャンスだったり、感じられなかったことを感じるチャンスだったり、新しいことを始めるチャンスだったりするはずです。私もいつも通りではない12月を、じっくり感じたいと思っているところです。
現在12月も半ば、11/30の双子座満月(半影月蝕)から始まった「蝕のトンネル」が終了します。今回は射手座新月(皆既日蝕)が起こります。日本時間は真夜中なので、蝕が見えるのは真裏にある南米周辺になります。この「蝕のトンネル」終了を合図に、ついに惑星が大きく動きだし、歴史的なタイミングへ向かっていきます。だからこそ、いつもの12月ではないのかも?そんなことを思いながら「蝕のトンネル」の出口を大切に静かに迎えたいと思っています。星のこおる音も聴こえてきそうな12月です。少なくとも私の周辺は。
Les Chronovoyageurs...
※日本時間 12/15 1:18 射手座新月(皆既日蝕)となります。
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