【THE SHOKUNIN】色々なリペアに挑戦したい もっと無茶ぶりをしてほしいです
【リペア職人】小磯周作さん(40歳)
リフォームの営業担当者にとって、熟練の職人さんは大切なパートナー。今回登場するのは建築現場で、様々なものを修復するリペア職人の小磯周作さんだ。
▲小磯さんの仕事道具。現場に行くまでどのような状態かわからないことが多いので、色々な材料を臨機応変に組み合わせている
リペアに同材質は使えない!こだわりの色づくり
床のキズや窓枠、外壁の穴、玄関ドアやコンクリートの土間など、クロス以外はほとんどのものを修復してしまう小磯周作さん。リペアの難しさは「部分的に直すため、同じ材質の材料を使えないところです」と話す。例えば、木の床の修復には木材は使えない。樹脂を流し込んで固め、耐久性を持たせた状態にして、最後に木目を描く。「直したところを見ても目が素通り」するほどの仕上りは、驚くばかりだ。
こだわっているのは、どの時間帯に見ても違和感を感じないように色を作ること。修復した時には自然に見えても、日の射す角度や、見る角度が変わることで、修復場所がはっきりと目立ってしまうことがある。それを防ぐために、塗料の中にパールの粉やメタリックの色味を加え、本来の発色、光が物体を透過して発色している状態を出来る限り再現している。
他にも接着する時の材質の相性にも気を配っている。「気を付けているのが『この材料とこの材料はくっつかない』ということを知っておくこと。エポキシ樹脂の上にポリエステル樹脂を乗せても接着しません。それを間違えてしまうと修復しても数ヶ月後に剥がれたりしてしまいます」と小磯さんは話す。
▲撮影時に小磯さんが行っていたのは、床のキズの修復。キズの周囲に接着剤を流し込み、これ以上剥がれないように固める。そうすることで木目を描く面積を最小限に抑えることができる
▲穴を埋めるパテはエポキシ接着剤に着色剤と粉を混ぜて作る。パテ版は1回ごとに表面を取り替えられるよう、養生テープを貼っている。パテに色を付けるのは万が一表面が削れて中が見えても違和感がないようにするため
▲穴にパテを埋め込む。これが固まったら、この上に別の仕上げ用のパテを乗せる
修復ノウハウを公開 さらに上を目指す原動力に
自身が手掛けたリペアのノウハウは、「ドクターリペアマン」のインスタグラムで公開している小磯さん。それは職人になりたての頃、先輩職人のブログやHPを見て知識を増やした経験があるからだ。
「技術を隠すこともできますが、すると秘密として守ろうとしてしまい、そこから上を目指さなくなってしまう。逆に公開してしまえば、もっと新しいものを吸収しようと思えます」。今後は技術を教える講習会の開催を増やしていきたいとも考えている。リペアの仕事は床、木枠、アルミサッシの修復が主。しかし、「もっと色々な案件に挑戦していきたいです」と小磯さんは言う。
これまで木の扉を鉄の扉風に塗り替えたり、バーに置く黒船来航のペリー像をつくったりと、様々な奇抜な案件をこなしてきた。実はこうした無茶ぶりは大歓迎。営業さんからの難しい依頼にチャレンジしていきたいと考えている。「どんな依頼も断りません。それが私の価値だと思ってもらえたら嬉しいです」と小磯さんは話している。
▲小磯さん制作のペリー像。石膏で作ると納期に間に合わないため、先方がレーザーカッターで切り抜いた段ボールの骨組みを用意。それに建築用の発泡ウレタンで肉付けし、和紙に石膏を浸したものを貼り、さらに石膏を塗り足しながら作った
小磯さんのリペア例
▲古くなって剥がれてきた合板フローリング。日に焼けた部分も含め、全体的にきれいにリペアした
▲左の写真はサイディングに空いてしまった大きな穴に破片を埋め込んだところ。そこにパテの下地としてガラス繊維を乗せ、着色パテでサイディングの形を造形。色を塗って仕上げた
▲セラミックタイルの補修。パテを別の職人が調合し、それを塗り込んで研磨した
小磯さんからリフォーム営業担当者にメッセージ
「こうしてもらうと嬉しいなぁ」
営業さんがお客様に「完璧に何も分からないようになりますから」と先に言われてしまいますと、ちょっとやりづらいですね(笑)。
「よく見たらわかるかもしれませんが、日常生活をする上では気にならない程度にはなります」という感じに、少しハードルを下げてくれたら嬉しいです。もちろん、最終的には完璧に直すことを目指します。