My Roots My Favorites 宮本益光(オペラ歌手)
幹が太ければ、枝葉も増えて、
そのまま自分の可能性になる。
音楽との出会いは、小学4年生の時です。新しい音楽の先生が転任してこられ、鼓笛隊を作ることになった。それに母親が勝手に申し込んでしまったんです。その後3年間鼓笛隊を続けるうちに、学校全体が「音楽の学校」に変わってしまった。卒業文集で6年生のほとんどが、「将来音楽の仕事につきたい」と書いてしまう。それ程、魅力的な先生でした。こんな人間になりたいと思った。その時に音楽の先生になろうと決意しました。
中学校では吹奏楽部に入り、高校進学後は地元の大学の教育学部を志望していました。歌も楽器もできる先生になりたいと考えて合唱部に入り、声楽の個人レッスンも受けることにしたのですが、その先生が「音楽で日本一の大学は東京藝大」とおっしゃる。よし、それなら一番の教育を受けて、素晴らしい教員になってやる、と藝大を目指しました。
藝大に入っても目標は教員ですから、仲間が留学とかの話をしていても、まったく興味がなかった。
博士課程に進んだ頃、指揮の若杉弘先生が特別講師に着任されました。ラッキーなことに先生が私のことを気にかけて「僕が君を有名にする」とおっしゃって、世界をどんどん広げてくださいました。2年、3年先まで仕事が入るようになり、気が付いたら歌手になっていました。若杉先生に出会わなかったら、教員になっていたと思います。
私にとって教員になりたいという思いが太い幹で、その枝葉に実った果実の一つが「オペラ」だったわけです。教員という夢は叶わなかったけど、オペラ歌手が不味い果実かというと、そんなことはない。幹が太くて栄養がいっぱいあれば、枝葉も増えて、そのまま自分の可能性になるのではないでしょうか。 (談)
宮本益光(バリトン) Masumitsu Miyamoto, Baritone
愛媛県出身。東京藝術大学卒業、同大学院博士課程修了。東京二期会「ドン・ジョヴァンニ」タイトルロールで一躍注目を集め、以後、数多くのオペラに出演。2015年神奈川県民ホール・オペラ・シリーズ「金閣寺」溝口の演唱で非常に高い評価を得た。神奈川県民ホールでは16年12月に『ファンタスティック・ガラコンサート』、17年3月に「魔笛」パパゲーノで出演予定。聖徳大学准教授。二期会会員。
Photo
神奈川県民ホール・オペラ・シリーズ 2015「 金閣寺」 主役 溝口
©ヒダキトモコ
神奈川県民ホール・オペラ・シリーズ
オペラ 「金閣寺」全3幕【ダイジェスト】
2015年12月5日(土)・6日(日) 神奈川県民ホール 大ホール
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