全員給食にすることで、支援が必要な生徒も全員が安心して給食を利用できるように――2020年度町田市議会第3回定例会本会議その⑥
引き続き、令和2年度12月議会の中学校給食に関する質疑についてお伝えしていきます。第6弾は12/9、いわせ和子議員の一般質問です。
※なお、本会議録画より私どもが書き起こしたものであり、正式な議事録ではありません。
(画像は町田市『町田の教育2019』の「教育のための支援ー(1)就学援助費」より)
●自民党 いわせ和子議員(録画はこちら)
いわせ議員:
2項目めの「貧困家庭の食と学習支援」について質問させていただきます。
1889年、明治22年。日本の給食の発祥は山形県鶴岡市の大督寺。当時境内に私立忠愛小学校があり、お弁当を持ってこられない子どもも多かったため、子どもたちのためにおにぎりなどを与えていたことが学校給食のはじまりといわれています。当時の給食のメニューは、塩むすび、魚の干し物、漬物といった質素なものです。
1923年の関東大震災や1930年の凶作では、飢餓を防ぐために給食が広がりました。1937年の日中戦争突入後は、子どもの発育向上のための役割が重視されました。第二次大戦後の深刻な食糧不足、飢えた子どもたちを救ったのは、パンと牛乳の給食です。ユニセフなどから脱脂粉乳の提供も受けて、昭和の給食のスタイルができあがりました。
全国の小学校すべてにおいて完全給食が実施されたのは、1952年、昭和27年です。1954年には学校給食法が成立しました。中学校にも適用されたのは、1956年、昭和31年のことです。2005年には教育基本法が成立し、2013年、和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、同年、子どもの貧困対策の推進法が成立しました。2019年、令和元年には、子どもの貧困対策推進法が改正されました。
このような背景から、貧困家庭の食と学習支援について質問させていただきます。
公立中学校での給食の実施率は自治体間の格差が目立ちます。2018年度の国の調査では完全給食――完全給食とは主食、おかず、ミルクが揃ったものをいいますが、この完全給食の実施率は100%に近い都道府県が多い一方、神奈川県では半分に満たず、滋賀県や京都府なども7割程度にとどまっています。
跡見女子大の鳫(がん)教授は、「給食がないとお弁当などを用意できない生徒がきちんと栄養をとれる機会が減ってしまう。給食は広い意味での社会保障である。子どもの貧困が社会問題化する中、貧困救済としての給食の役割は何ら薄れていない」といっておりました。
では、ここで改めて、(1)「中学校給食について」ですけれども、ある民生委員の方からのお話になりますが、「特に貧困家庭において、成長の著しい時期に子どもたちがしっかりとした食事がとれていない家庭がある」と聞いております。貧困家庭を支援していくという視点からも、まずは食事の充実が必要だと感じています。
学校給食は1日のうちの1食分であり、食のすべてを給食に頼ることはできませんが、食事の充実を考えた場合、その一助になると思います。
現在町田市の学校給食は、小学校は全員給食で、中学校は選択制で給食を提供していますが、中学校給食の喫食率は10%程度となっており、利用者が少ない状況です。これまで給食利用を促進するための取り組みを進めてきたところですが、喫食率を大きく向上させるには至っていないようです。家庭からのお弁当を持参する生徒が多数を占める中、市は貧困家庭に対してどのような支援を行っているのか、改めて確認したいと思います。
また、2020年9月議会では、市長から「中学校給食については、新たな給食の提供方法について検討を進めていきたい」との答弁もありました。現在の選択制の給食を見直し、新たな提供方法に向けての検討はどのように進められるのか。何人かの議員も質問しておりますが、改めてお聞かせください。 ※(2)省略
学校教育部長:
項目2の「貧困家庭の食と学習支援について」の(1)「中学校給食について」にお答えいたします。
現在は中学校給食利用者のうち、経済的に支援が必要な方には、就学援助や生活保護費により補助をしております。新たな中学校給食の提供方式について、2020年11月18日に町田市学校給食問題協議会に諮問し、検討を開始いたしました。協議会は全5回の開催を予定しており、2021年1月に答申を受ける予定でございます。
協議会では、選択制がよいか全員給食がよいか。ランチボックス形式がよいか食缶形式がよいか。自校方式、親子方式、給食センター方式のいずれかがよいかなど、比較検討を行う予定でございます。
いわせ議員(再質問):
給食利用者のうち、経済的に支援が必要な方には、就学援助費や生活保護費により補助しているとのことでしたが、こうしたかたたちが給食を利用するまでの現在の手続きの流れを小中学校別に教えていただけませんか。
学校教育部長:
給食を利用するための手続きにつきましては、支援が必要なかたもそうでないかたも同様でございます。小学校については、全員給食であるため、学校給食申込書をご提出いただくことで、給食の提供を受けることができます。中学校については、給食を利用する場合、まず中学校給食利用登録申請書を提出していただきます。次にコンビニエンスストアで事前に給食費を入金した上で、インターネットによる予約システムを使って給食を申し込むことになっております。予約方法や申込期限には一定のルールがありますが、1日単位や月単位での予約が可能な仕組みとなっており、在校時の予約を一括して行うことも可能でございます。
いわせ議員:
はい。小中学校それぞれの給食の申し込みの手続きについては了解いたしました。次に就学援助費や生活保護費はどのようなタイミングで各家庭に支払われているのか、こちらも小中学校別に教えてください。
学校教育部長:
はい。小学校につきましては、対象者に支給する学校給食費分を直接、給食費にあてています。そのため、学校給食費分を各家庭に支給することはなく、また、各家庭で銀行やコンビニエンスストアで給食費を支払う必要もありません。
中学校につきましては、就学援助費、生活保護費のいずれにつきましても先にコンビニエンスストアから給食費を入金していただきます。そのあと給食を利用した実績に基づいて、学校給食費分を支給することになっております。
いわせ議員:
給食利用の申し込み手続きと、就学援助費・生活保護費における給食費の支給について説明をいただきました。小学校の給食利用の手続きに比べて、中学校は給食を利用するまでの手続きが煩雑であり、さらに給食費分の支給は後払いという状況では、補助費が出るとはいいましても、給食を利用しない家庭もあるのではないでしょうか。このあたり何かデータがあれば教えてください。
学校教育部長:
中学校で、就学援助費および生活保護費を受給している方のうち、給食を利用している生徒の割合は2019年度実績のデータで、就学援助が27.5%、生活保護が19.6%となっております。
いわせ議員:
はい、ありがとうございます。中学校給食の全体の喫食率は10%程度ですが、支援を受けているかたでも給食を利用していない割合が低いということがわかりました。市ではこれまで、中学校給食の無料試食会や、ご飯を温かい状態で提供する工夫、カラー献立表の作成など、給食の喫食率向上に向けた様々な取り組みを行ってきたことは承知しておりますが、やはり支援が必要なかたも含めて、給食の申し込みから利用に至るまでの部分の改善が改善策が必要だと思います。この点について市はこれまでどのような改善をされてきたのでしょうか、お聞かせください。
学校教育部長:
給食の申し込みから利用に至るまでの部分における改善点についてでございますが、給食申し込みの点ではそれまで1ヶ月単位の紙の給食申し込みであったものから、新たに1日単位で注文ができる給食予約システムを導入してまいりました。さらに、給食費の入金の利便性という点で、コンビニエンスストアからの入金方法に加え、クレジットカードによる給食費の支払いを可能といたしました。
また、給食費の入金額の単位は20食分と90食分の2種類となっておりましたが、少額で入金ができる5食分の払込票を配布するなどの工夫もしてまいりました。
いわせ議員:
はい、給食の申し込みから。利用までの点についても、これまでしっかりとした改善の取り組みを進めていただいていることがよくわかりました。しかし、こうした取り組みを進めていただいているにもかかわらず、現時点で中学校給食の利用者を大きく増やすには至っていないということを考えますと、現在、選択制給食は見直しをせざるを得ないのではないかということを強く感じました。
先ほど、新たな中学校給食の提供方式について、町田市学校給食問題協議会に諮問し、検討を開始したとのご答弁がございました。現在、学校給食問題協議会で協議中ではあるということですが、私といたしましては中学校給食の提供の方法を大きく見直すのであれば、この機会に選択制から全員給食にしてはどうかと考えております。全員給食にすることで、給食利用者が低迷しているという課題を解決し、さらに給食利用の手続きも小学校給食のように簡素化する。結果として支援が必要なかたも全員が安心して給食の提供を受けることができるようになると思いますけれども、この辺はいかがでしょうか。
学校教育部長:
選択制か全員給食かということにつきましては、その方式が現状の課題の解決となるか。また、メリットデメリットの比較やコストはどうか、実施までの期間はどうか、実現性はどうかなど、学校給食問題協議会の答申を踏まえ、総合的に判断してまいります。
また、就学援助や生活保護を受けているかたの給食申込方法や給食費分の支給方法などにつきましては、新たな提供方法を考えていく中で、簡素化することを視野に入れていきたいと思います。
いわせ議員:
はい。ぜひともよろしくお願いいたします。
先日わが会派の若林議員から、旧忠生第六小学校の健康増進関連施設拠点がスポーツという視点に加えて、食としての活用に当たっては、地域にも貢献できるサービスを複合化した給食センターなども考えてはどうかという提案がございました。私といたしましても、公共施設の複合化につきましては、地域貢献という視点から、ぜひとも積極的に進めていただきたいと思います。また災害時は自衛隊の派遣要請ができる仕組み作りも視野に入れ、進めていただければと要望いたします。
いずれにいたしましても中学校給食についてはセンター方式に限らず、親子方式などもあわせて、充実した全員給食となることを期待し、新たな中学校給食の提供方式を実施する際には、支援を必要とするかたに対する食の支援がさらに充実されることを期待いたしまして、この貧困家庭の中学校給食についての質問は終わりにいたします。
(了)