Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

研究・イノベーション学会 女性エンジニア活生分科会(JWSE)

例会12月のご報告

2020.12.22 21:00

令和2年12月17日に開催したJWSE例会のご報告です。


12月の例会は『女性活躍にかかるガラスの天井の見える化の試み』というテーマで、講師の宮本 岩男先生 (内閣府政策統括官 (科学技術・イノベーション担当)付参事官)を会場にお迎えしました。


また感染症予防対策に配慮して少人数制とし、同時配信したZOOMは80名ほどのご参加をいただきました。ありがとうございました。


当日の宮本先生の講義の中の重要な3つのポイント:

・女性活躍促進が必要となっている理由は何か?

・女性活躍を拒む「ガラスの天井」or 「壊れたはしご」の正体は何か?

・女性活躍を促進する上で、何をどのように変えていく必要があるか?


をお話しいただいた上で、性別の違いによる仕事のやりがいや処遇などのデータを『e-CSTI』という手法を用いて見い出すという、大変興味深い方法をご紹介いただきました。


*e-CSTIについては下記の詳細を参照ください。


貴重な講義の動画をアップロードしました。ぜひこちらからご覧ください。


講師: 宮本岩男 先生


研究・イノベーション学会JWSE分科会

2020年12月例会

議事概要

 

1. 開催日時:

令和2年12月17日(木)18:30~20:30


2. 場所:

政策研究大学院大学1階1C会議室/オンライン 


3. 演題:

『女性活躍にかかるガラスの天井の見える化の試み』


4. 講師:

宮本 岩男先生  

内閣府政策統括官 (科学技術・イノベーション担当)付参事官(エビデンス担当) 


5. 講師略歴:

東京大学にて理学(生物学)修士修了後、1995年に通商産業省入省し、2002年に米国ジョージタウン大学経営学修士(MBA)修了。大学関係の担当部署としては2004年~2006年に大学連携推進課課長補佐、2014年~2016年に大学連携推進室長、2018年に内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付参事官(エビデンス担当)に着任し、関係省庁含めたEBPM推進のためのエビデンスシステムの立ち上げを担当。


6. 要旨:

科学技術政策分野においてエビデンスベースで政策立案できるようなプラットフォームとしてe-CSTIを立ち上げたところであるが、e-CSTIに搭載されているデータベースを活用すると、研究力の指標となる論文数、被引用数等の輩出状況が男女間でどのように違うのか、産業界が求める人材活躍状況を見たときに男女間でどのように違うのか等を定量的に見ることが可能となっている。これらのデータのご紹介。


* e-CSTIとはe-CSTI(Evidence data platform constructed by Council for Science, Technology and Innovation)を通じて、政府や大学等研究機関の関係者と共有する仕組み。政府や大学等研究機関の関係者は、e-CSTI のデータをも活用しつつ、エビデンスに基づく政策立案(EBPM: Evidence based Policy Making)やエビデンスに基づく法人運営(EBMgt: Evidence based Management)を推進していくことが期待されています。


e-CSTI の基本構造としては、


(1) 科学技術関係予算の見える化


(2) 国立大学・研究開発法人等の研究力の見える化


(3) 大学・研究開発法人等の外部資金・寄付金獲得の見える化


(4) 人材育成に係る産業界ニーズの見える化


(5) 地域における大学等の目指すべきビジョンの見える化の 5 つの機能から構成されています。


参照: e-CSTIについて


7. 講演概要:


・ 高校時代の得意/不得意科目や両親が文理選択に影響を与えていた。


・ 「①仕事のやりがい」と「②大学で学んだ知識と現在の業務の関連度」の関係を見ると、女性は①②ともに高い集団と①②ともに低い集団の2つに分かれていた。一方、年収レベルは集団が分かれず、全体的に低い傾向が見られた。


・ 女性研究者の論文数は男性より低いものの、被引用数は同等か上回っている。また、年齢と共に論文数の差が拡大することから、指導的立場にいる女性研究者が少ないことをも示していると考えられるのではないか。


8. 意見交換(一部抜粋)


・ 女性研究者はパフォーマンスの高い人のみが残るような構造になっているのではないか。


・ 女性の社会進出の必要性としては、女性の自己実現(金銭的見返りも含む)が考えられる。


・ 資格取得を望む母親の影響を受け、女性がやりがいは高いが年収レベルの低い専門職に就いているという社会構造となっているのではないか。


・ ソーシャルワーカーに女性が多い社会構造になっている。各分野で活躍する理系女性のロールモデル/キャリアモデルを中高生や両親に伝えていく必要がある。


・ 専門職の年収レベルが低いのは仕事や女性に対する軽視の現れではないか。若い世代はそもそもそのような仕事に就きたがらない。


・ 理系嫌いには数学教育に原因があるのではないか。小学校で落ちこぼれてしまうと、そこから抜け出せない。


→理系の学部定員が少ないことで、理系選択のハードルが上がっていることも考えられる。


・ 技術系職種に就いている女性は、IT分野の下請に集中しているのではないか。


→情報人材不足の要因は大学側の定員不足と企業側での処遇の双方にあると思う。双方の状況を可視化できるようe-CSTI構築を進めている。また、これらの分析結果は政策立案者のみならず広く一般に公開する方針としている。



会場風景 (政策研究大学院大学)