八十七歳の上皇陛下は論文間近に、この一年の外出は明治神宮のみ
【日本報道】 上皇陛下(癸酉)は、皇紀二六八〇(令和二)年十二月二十三日に八十七歳の御生誕日をお迎えになった。行事はコロナ禍に配慮し、全て取り止める。同日に宮内庁(長官:西村泰彦)は、陛下のご近況について公表した。
陛下は、報道現在で「仙洞仮御所」に住まわれている。この仮御所は以前に「高松宮(大正天皇・第三皇子)邸」として使用されていた。仮御所での御生活はコロナ禍により、当初想定から一変。陛下は、上皇后陛下(甲戌)と共に人々の健康と日常生活に大きな影響を及ぼしている事を深く案じられ、この感染症への理解と感染防止の為の医学的・社会的な取組みに関心を向けてこられた。
侍医等から日々の感染状況や百年前に流行した「スペイン風邪」との違い、感染症の歴史等についてお聴きになった。青年海外協力隊員の活動とブラジル・サンパウロの「ブラジル日本移民史料館」の行方を案じていらっしゃった。
また、陛下は早くより沖縄の人々の苦難の歴史を深く心にされ、昭和時代から沖縄の記者や伝統文化の継承者を仮御所へお招きになり、沖縄の詩歌を研究して御自身でも琉歌をお詠みになる等、その文化の理解と継承を大切にされてこられた。沖縄に寄せる思いは今も変わらない。
本年は記帳を含め、御生誕に係る全行事をお取り止めになり、恒例の御祝御膳もお控えになる。御即位前から大切にしてこられた「沖縄県慰霊の日」「広島・長崎原爆の日」「終戦記念日」「阪神淡路大震災・東日本大震災の発生日」には、上皇陛下と共にご黙祷された。
<ハゼとチチブのご研究で智を研ぐ>
生物学研究所でのご研究は、ご移居後にコロナ禍により暫く控えていらっしゃったが、職員体制の縮小やWeb会議システム導入等の感染防止対策を講じ、五月末からお出ましを再開。当初は週一回程度でしたが、今は週二回通っていらっしゃる。
現在は、昨年来の西表島等で採集された標本と海外の標本との比較研究を更に進めておられ、南日本に生息するオキナワハゼ属に関する新たな論文の完成が近づいている。併せて、日本の河川に広く生息するチチブ類の研究も続けられ、生物学研究所職員とチチブ類三種における鰾うきぶくろの機能と遊泳行動の関係を明らかにする為、飼育と実験観察を進めていらっしゃる。
生物学研究所へのお出ましがない日は、午前中に一時間程、地球上の動植物の生態や自然環境、世界の文化遺産や文化交流の足跡等を紹介するTV番組の録画をご覧になる。
ご体調については、幸いな事に特段の問題はない。同庁はお年を召され、上皇后陛下へ色々とお尋ねになる事が多くなられた様に見受けた。何度か繰り返されるご質問にも、都度丁寧にお答えになる上皇后陛下と、それを聞かれてご納得になるといつも明るい笑顔におなりになる上皇陛下。時に、勘違いや戸惑いがあっても、一緒にお笑いになりながら、ご記憶を新たにされ、日々のご生活を確かなものとされているという。
本年十月に両陛下は、明治神宮にご参拝された。皇居以外の外出はご参拝のみとなった。
写真:宮内庁