寺山修司の短歌 99 そのなかの
2020.12.24 00:59
そのなかの弾痕のある一本の樹を愛すゆえ寒林通る
「弾痕のある一本の樹」とは、心に傷を持つ一人の男、即ち自分を指すのだろう。
「寒林」は、冬枯れの寒々とした林。死体を捨てる場所の意味もある。
冬枯れの寒々とした林に足を踏み入れるのは、その中で弾痕のある一本の樹を愛すように、群衆の中で心に傷を負った自分が愛おしいからなのだ。
by 寺山修司(てらやま しゅうじ)
青森県出身の歌人、劇作家
演劇実験室「天井桟敷」主宰
言葉の錬金術師、昭和の啄木などの異名を持つ