【千葉県】成田(成田市)
利根川南岸に位置する成田市は県庁所在地の千葉市から25㎞、東京都心から50~60㎞圏内に位置し、下総台地に市域が広がり、高低差も富んでいる。
近年は新東京国際空港(成田空港)のお膝元として知られているが、元々は成田山新勝寺の門前町として繁栄してきた(門前町中心部から空港までは更に5㎞程離れている)。
新勝寺の創建が天慶3年(940年)で、縁起はその年に起きた平将門の乱に始まるが、今日に至る成田詣でが盛んになったのは江戸時代前期からである。
元禄16年(1703年)の出開帳に加え、歌舞伎役者・市川團十郎(初代)が成田不動に帰依して「成田屋」の屋号を名乗り、不動明王が登場する芝居を打ったことで成田山の名は江戸庶民の間に広く広まり、成田詣での隆盛をもたらした。
江戸時代は成田街道が参詣道として繁栄してきたが、近代に入ると成田を中心に三方に伸びる成田鉄道(現・JR成田線)が開通し、東京から佐倉まで結ぶ総武鉄道(現・JR総武本線)と連絡が可能になったことで東京からの参詣アクセスが発達、昭和5年には押上から京成電鉄も延伸したことで双方の乗客争奪が活発になるとともに参詣者数も増大していった。
表参道は成田駅前から新勝寺門前までの約800mで、仲町から道幅が狭くなると同時に下り坂に入るが、両側に歴史的建造物の店舗が軒を連ねる。
高低差と緩やかな曲線と相まって景観の連続性が見られ、新勝寺山門に至るという町並みの展開が門前町の風情をより際立たせている。
(写真は成田山新勝寺境内 左が大本堂 右に三重塔=正徳2年(1712年)建立・国重文)
【千葉県】成田山参道(成田市)202012
仲町の坂中腹にさしかかると、入母屋屋根に高欄を廻した望楼をもつ木造3階建ての旅館「大野屋」(昭和10年築・国登録有形文化財)が際立って見える。
【千葉県】成田山参道(成田市)202012
同じ場所を反対側から。
手前にあるのが一粒丸三橋薬局店舗で、明治時代初期の頃に建てられた土蔵造り店舗で、国登録有形文化財に指定されている。
一粒丸三橋薬局店舗 明治初期頃 国登録有形文化財
【千葉県】成田山参道(成田市)202012
両側に平入出桁造りや蔵造りの店舗が建ち並ぶ参道は、山門に向かうにつれて湾曲しながら下り坂になっている。
【千葉県】成田山参道(成田市)202012
印旛沼に近いこともあって、成田は鰻を扱う店が多い。
表参道には土産店とともに鰻屋も多く見かけ、中でも目立つのが3階建ての「川豊」で、元々は旅館だった建物で明治44年に建てられたものである。