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たくさんの大好きを。

あいのうた 1 (※パラレルになります🙏苦手な方はそっ閉じお願いします🙏

2020.12.27 10:31

パラレルになります。クリスマスまでにお話仕上がればいいなと思いながらお絵描き、お話をかいていました(*´∀`*)


長くなりそうなので、少しだけお話続きます🙏パラレルなので苦手な方はスルーをお願い致します🙇‍♂️








こんなにも薄く膜を張った世界に

なんの執着も愛着もなかった

本当の俺は誰も分からなくても

寂しいだなんて感情はもう忘れるぐらいずっと前に失くしていたはずだった




冷えた空にひゅうと喉が鳴る。

一瞬、息が止まる気がした。

それぐらい驚いた。

まさか。 嘘だろ? と。

見慣れているはずのモノが、やけに白く染まっている。

真っ昼間から白昼夢かと、かぶりを振って再度視線を移せば、ぱさりと白い羽が舞う。

柔らかく、柔らかく。

どうしてこんな場所で祈るように手を合わせているのか理由はわからないが、白い羽と祈りの姿は自身との対極だなと、僅かに口元が歪む。

交わる点の無さに、何かわからぬ感情に後ろ側を引かれながらも、背を向けたまま去ろうとすると、あっ! という短いリズムが跳ねた。


「…初めて見た」

零れた言葉は怖がるでも蔑むでもなく、ああ、あったんだ。ぐらいに動揺が薄い。

内心拍子抜けしたが、牽制の意味を込めて軽く眉を釣り上げる。

横断歩道の端で立ち尽くし、視線を交差させる男と女にすれ違う人々が好奇心の目を向けるが、またゆるりと日常を急いでいく。

「大して変わんねーだろ?そっちのと」

本当はまるで違う。土台の本質は別の生き物のはずだ。

なのにーー

「…そうだね。変わらないかも」

こちらの感情の揺れなど気づかぬように、あっさりと同意しながら、丸い瞳を俺に向けてくる。

「ねえ、あたしの羽が見えるの?」

気になるところはそこなのかと、呆れ顔になりながら、肩をすくめる。

「おまえこそ俺のこれが見えるのか?」

「見えるわよ?どうして?」

「どうしてって……普通は見えないだろ」

「…まあ、そうだけど」

それでもそんな事にはまるで興味がないように、ごく自然にふわりと笑う。

「黒いんだ」

そう言いながら、羽先にそっと触れる細い指先は躊躇いなどどこにも見当たらなくて、透き通るような白い指先の仕草に見惚れた。


「じゃあね、悪魔…?さん?」

離れていく指先をひらひらと振りながら、白い生き物はくるりと振り返り足早に歩き出す。

「おい! お前……」

「え?」

振り向いた肩先でブラウンの癖毛が跳ねる。

「…どこに?」

どうしてこんな言葉を掛けているのか自分でも分からない。気づけば、だ。

「どこ? ん〜、この先がね仕事場なの」

指先で指し示す先にはビル街が立ち並んでいる。

「仕事?」

「あ、うん。だって働かないと生きていけないし。羽以外は周りと変わらないんだけどなあ……」

呟きながらへらりと笑う。

「…お前、変わってるな」

「え? そ、そうかな?こっちであたしみたいなのに会ったことないから、他が分からなくて」

少し頬を赤くしながら、わたわたと落ち着かない姿にむくりと意地悪心が生まれる。

「だってお前天使だろ? 天使ってもっとこう、光差す美少女? とかじゃねーの?」

「な!? 悪かったわね! びしょーじょとか言うのじゃなくて」

今度は真っ赤な顔をしながら、食って掛かるように声を上げる、くるくる変わる表情にくいと口角が上がっていく。

「だって天使じゃないから。だ、て、ん、し!あたしっ、堕天使だもん」

プイッと顔を背けて、フンと鼻息を鳴らす。

「……あー、堕天使か」

「そう! 落っことされたの。随分前にね。て、あ!いけない! 遅れちゃう! バイバイ、意地悪な悪魔さん」

イーと顔を顰めながら、今度は全力で走り去っていく。跳ねるように人並みに消えていく。

「……子供かよ」

見えなくなるまで瞳で追いながら、呟いた言葉は冬の寒空に淡く溶けて、何事もなかったかのように反対側に歩き出した。





もう二度と会わないと思っていた。

あれは偶然で、元々どこにも接点すらないと。夜を7つほど重ねたある日、あの日去っていったはずのアルトの声が耳に届く。


深夜2時。

こんな時間にこんな場所にいるはずがないと、気のせいだとやり過ごそうとするが、声は続く。新宿のど真ん中の、一つ外れた薄汚れた路地裏に何故。カチカチと切れかけた街灯の向こう側に一組の男女が絡む姿が見える。

絡む。押さえ込まれた華奢な体。隙間から白く光る羽先。それら全てに喉元にいいようのない熱さが込み上げて、舌打ちをしながら駆ける。

「…何やってんだ?」

抑揚のない声に、男が振り向く。

「なんだよ!?邪魔するーーー」

言葉は最後まで紡がれる事なく、まるでモノでも扱うかのように体は勢いよくアスファルトに叩きつけられる。呻く声の方に関心を向ける事なく、

「で? 何してんだ?」

白い羽を指の背でなぞる。ふるりと羽が揺れた。薄茶色の瞳も揺れる。

「…なにって……探し物」

「は? 探し物? こんなとこでなんで?」

「あなたには関係ない」

壁に押し付けられていた背の数カ所の擦り傷に、チッと舌打ちを打つ。引かれた境界線に苛立ちが波打っていく。

ジャケットを羽織ってはいるが、その下はやけに扇情的な大きく胸元が空いたタンクトップとすらりと伸びた脚を惜しげもなく晒すミニに、波打つ苛立ちは速度を増していく事が、らしくなくて一つため息が漏れた。

この街では見慣れた光景だと、いつものように無関心で何故いられないのかと、八つ当たりのようにその細い手首を捉えて動きを塞いだ。


「探し物をするのに男を誘うのが必要?」 

煽るように、蔑みの目を向けると驚いたように見開かれた瞳に、どこか歪んだように自身が写る。

「誘う? そんなことしてない。あたしはただ……もういい。そこをどいてよ。行かなくちゃ」

「どこに?」

「だから関係ない」

「…おまえさ、いくら堕天使だっていってもこんな街にそんなカッコで全然似合わないぜ」

「だから! 一体何? あたし時間がないの。悪魔ってほんと意地悪よね」

「そりゃどうも。時間? 店のか?」

「うーん……それもあるんだけど…」

押し問答のようなやり取りに、背後から聞き覚えのある声が掛かる。

「香ちゃん! ここにいたの? あの人じゃなかった?」

「ママ?……また違ったみたい」

「そう……って? あら? 獠ちゃんじゃない。久しぶりね」

「……」

「あら? いつもと感じが違ってなんだかシリアスしてるわね。やだ、空気重たいんだけど」

能天気に響く言葉にこめかみ辺りに青い線が走る、どいつもこいつもだ。

「ママ? この人知ってるの?」

「まあ…ね。だってこの街ではみんな知ってるわよ」

「え!? じゃあこの羽も?」

獠の背を指差しながら、素っ頓狂な声を上げる声の主に軽く頭痛を覚えながら、慌てて右手で口を塞ぐ。

「あ! あにしゅるのよ! 離せーー」

頭痛どころか目眩までしてきた。天使が天然だなんて聞いたことがない。

「羽? 香ちゃん何言ってるの?」

「だ、だきゃらーー」

「だーー!! 黙ってろ!お前は」

キャンキャンと喚きながら、背の羽を掴もうとする香を胸に引き寄せると、ぐしゃぐしゃと柔らかな癖毛を乱していく。更に喚こうとするから、更に強く胸に閉じ込める。

「ママ。こいつ何してんの? ここらじゃ見ない顔だけど」

「探し物を…ね。大事なものでどうしても必要らしくて」


天使の探し物がこんな街にあるのかと、眉間に軽く皺が寄る。この白い羽は、欲望の掃き溜めのようなこの街には似つかわしくない。

「…探し物?」

「ええ。もう随分前なんだけどね、ああ、そういえば獠ちゃんがこの街にきたのもその頃じゃなかったかしら? 槇村さんて刑事が居たのよ」

「槇村…?」

何故その名を?

 忘れていた、否、忘れようとしていた記憶が引き出されていく。鮮明に。

「その子、香ちゃんね。槇村さんの妹なの」




『驚きだな。こんな所で悪名高い悪魔ってやつに会えるとは』

『お前…俺のこれが見えるのか?』

『ああ。少し違うが見慣れてるからな』

『見慣れてる?』

『いや、なんでもない。昔の話だ』


槇村…

懐かしい名に、意図して忘れるようにしていた記憶の粒が形を成していく。



『お前はお前だろ?』



当たり前のように笑う姿は、こんな俺の小さな光で。綺麗だよな。と触れてきた指先はひどく温かかった。

『妹がな、いたんだ。今は会えないけどな』

『妹?』

『白くてな、とても綺麗だった。綺麗だったんだ……』

あれはーー



閉じ込めた腕の中で、わさわさと真っ白な羽が揺れている。香。そういえばそんな名だと言っていた気がする。俺はいつだってからかっていたのを思い出す。アイツが妹の話をする時はいつも顔が緩みまくっていたから。槇ちゃん、シスコンすぎんじゃね? とか呆れてたんだ。そう言うたびに、淋しそうに笑っていたよな。


『もう一度会いたいんだ』

あの日、この腕の中で冷たくなる槇村の最後の言葉は、雨に打たれて雨垂れとなり俺の頬を伝っていった。


黒い羽しか持たない俺でごめんな。

雨垂れは止むことなく頬を滑り落ちて流れて、ただ立ち尽くすしかできなかった。



「香?」

「そ、そうだけど、なによ!」

胸に押しつけられていたのが苦しかったのか、涙目で斜め上を睨みつけてくる。

「槇村の…妹?」

「え!? あなたアニキの知り合いなの?」

「知り合いっていうか、元パートナー、だな」

「パートナー……、あたしその頃のアニキ知らなくて……そっか、そうなんだ」

「少しの間だけどな」

「えーー!? あのマジメ一辺倒の槇村さんと獠ちゃんが?  えー?もっこり遊び人なのに?接点あったんだ」

横から聞こえる甲高い驚きの声に、香の眉がピクリと上がる。

「もっこり?……遊び人?」

ややこしくなるから止めてくれと間の悪い暴露に、はああとため息をつく。

「悪魔が遊び人? もっこり?」

だから復唱するな。真顔でヤメロ。

「あー……、まあそんな感じだな」

「……ふーん、アニキに悪影響なかったのかしら」

なんだか分が悪い気がしてきた。なかったのかと問われれば言い切れないのが明らかだ。

「そ、そんなことより探し物ってなんだよ?」

「…あ、うん。とっても大切なもの。あれがどうしても必要なの」

先程までの騒がしさから一転、伏せられた瞳は淋しさの色を纏う。

「アニキが亡くなってからね、誰かの手に渡ったみたいで探してるの。ママのお店に通っていた誰かみたいで、ママに協力してもらってその頃のお客さんを招待してもらってあたしが聞き出してるって訳」

「なんだよ、その大事なものって」

槇村から特段大切にしていたモノの話は聞いたことがなかった。聞いた数は少なかったが、あいつが大切にしているのは妹なんだなと認識していた。

モノーー?

「…指輪」

「指輪?」



『いつか会えたら…母の形見だと渡してやりたいんだ』


寂れたベンチに座りながら、ポツリと聞かされた言葉が脳裏を過ぎる。

形見なんだ。と槇村は言っていた。

小さな箱の中に鎮座する小ぶりのそれは、あの頃も今も自身には縁遠いモノで、どこか絵空事に感じていた。




先に行くからね。と目で合図を送りながら、ママが店に戻っていく。

ごめんねと片手を顔の前で示しながら、香が言葉を続ける。

「アニキが大切にしていたものだから。だからどうにかして返してもらいたくて…どんなことだってするからどうしても。そうじゃないと、あたし……」

思い詰めたような表情にやけに胸が騒ぐ。

「どんな事をしてもって……それがさっきのあれか?」

「……そうよ。少しだけ抱きしめさせてくれたら教えてくれるっていうから、だから……」

「馬鹿か! それだけで済む訳ないだろうが! お前って馬鹿だろ?」

本気で頭が痛い。あのまま放っておけばどうなっていたのかと、黒い何かが胸に澱む。

「馬鹿馬鹿言うな!! いざとなったらどうやってでも逃げたわよ!」

澱みが深くなる。こいつは何故か俺の奥底を抉ってくる。

「へー……。んじゃあ、逃げてみろよ」

あっという間に、両手両足の自由を奪われて壁に乱暴気味に縫い付けられた香の口から、あ…と短い声が漏れる。

吐息のように漏れた声に、ぞくりと背を何かが伝い、衝動的に黒い羽で隙間なく包み込んだ。

黒い闇に覆われた視界に、香の全身が僅かに震える。


「獠?」


名を呼ばれた事で、再度軽い電流のようなものが背を這い、口元が緩む。

「お前はさ、甘く見過ぎなんだよ。男ってやつも、俺も」

沈黙が闇に広がる。怖くて口も聞けないのかと思えば一転。鈍い衝撃が胸にドスンと響く。

「痛え! おいコラ、何すんだ!」

思わず羽を広げると、もう一度先程よりも強めの衝撃を喰らう。

「香!! おまえなあ!どんだけ石頭だよ!」

「獠が悪い!」

「はあ? なんでだよ!」

「あたし、あんたを甘くなんか見てない!だってあたしは堕天使だから。だからっ…! 獠のことだって知識としては人よりわかってるつもり。でもそれだけじゃないものがあるのもなんとなく感じてる。それでもアニキがあんたを信じてたならあたしも信じたいだけだから」 


馬鹿みたいに真っ直ぐで。

胸の奥どころじゃなく、無いはずのモノまで抉られていくようで。

 


『俺は信じてるよ。お前を』



血の繋がりなんかないはずなのに、どこまでもお人好しなのは同じだと思う。

羽があろうとなかろうと、この兄妹は例えるなら陽光のような暖かさを纏い照らす。

陽だまりは自分には過ぎた場所だと、避けるように生きてきた、それすらもお構いなしに懐から照らしてくる。



痺れを切らしたのか、店先から香を呼ぶ声が聞こえてくる。まだ今日はあと数人呼ばれているからとか、ちゃんと聞き出さなきゃとか、ぶつぶつ呟く背中から今度は顔だけ除かせながらふらりと羽で抱き抱える。

「うわ…なに?」

白い羽は黒い羽で覆われるように重なり、触れる。

「やっぱり、綺麗」

綺麗なものなんかどこにも持ち得ていないのに、その言葉を否定したくはないこの気持ちは何だというのだろう。

ふわふわと揺れる髪に頬を寄せて、平静を装いながらそれでも甘い香に体のどこかが溺れていく。

「俺も手伝ってやるよ。槇村の妹を放り出したら呪い殺されそうだしな」

「…悪魔のくせに? 呪いが怖いの? そもそもアニキはそんなことしない」

いや、それは妹の欲目だな。と独りごちる。

言葉にはしないが、否定の意味を込めてぐりぐりと顎先で香の頭上でかぶりを振る。

「痛っ! やだ、何するのよ! 痛いってば獠!」

「ば〜か、呪いなんか怖くねーよ。むしろこえーのはあのシスコンだな」

「は?」

「…いんや、なんでもないさ。行くぞ」

「う、うん。…ありがとう、助けてくれて」

白い羽の天使がはにかみながら笑う。

天使だろうが堕天使だろうが、香の本質はきっと変わらないんだろう。


ほんの束の間の出逢い。

槇村の妹だから。

無防備すぎる天使だから。

 

そんな言い訳をいくつも重ねながら、引き寄せるように肩を抱いて店の方へと促した。







2020.12.27




悪魔くんと天使ちゃんのお話をクリスマス🎄までにアップできたらいいなあと思います🙏でも間に合う気がしないので遅刻マンになりそうです(๑˃̵ᴗ˂̵)相変わらず描きたいことや書きたいことがあちらこちらになっていますが、ひとつひとつ最後までやっていけたらと思います🙏1日早いですがメリークリスマス🎄✨✨  




随分とクリスマス🎄過ぎましたが(*⁰▿⁰*)相変わらずの遅刻マンで、お話にクリスマス感がまだ全くないです😅出るかな😋あと一回ぐらい続きます🙏




2020.12.24