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一号館一○一教室

中国に関する質問回答(七)

2020.12.27 14:16

 【質問】 

今度の自民党総裁選で候補者たちが「座右の銘」を問われて、岸田氏が「春風接人」、石破氏が「鷙鳥不群」の四文字熟語を挙げました。(ちなみに、菅氏は「意志あれば道あり」とのリンカーンの言葉) こうした政治家の姿は中国の人々はどのように映っているのでしょうか? また、中国の指導者たちもこうした「座右の銘」を公表していますか?  

【回答】

 日本の政治家の「座右の銘」から伝統文化の匂いがしますね。 「春風接人」とは、「春風のような優しさで人に接し、秋の霜のごとく厳しく自らの行動をただすこと」、心に響く言葉です。儒学者佐藤一斎が言志四録の中で「春風接人、秋霜自粛」と述べています。  

因みに、「春風接人」は元総理大臣の小泉純一郎氏の好きな言葉でもあります。小泉純一郎氏の「座右の銘」は「無信不立(信無くば立たず)」であり、論語の下篇「顔淵」の言葉です。国会での答弁、小泉元首相が時々古典を引用すると覚えています。 小泉元首相がかつて「天のまさに大任をこの人に下さんとするや、必ずまずその心志を苦しめ、その筋骨を労せしむ」という孟子の言葉を引用し、自らの改革を推進する決意を表明した。 

中国では、靖国神社参拝の件で、よく小泉純一郎氏が批判されていたのが、小泉氏が中国古典に詳しい人であることを知られていない、まことに残念です。 石破氏の「鷙鳥不群」(弱い者は群れ、強い者は群れない)に筆者は強い同感です。政治家・芸術家は「強い孤独の鳥」にならなければならないのです。 今回の自民党総裁選について、中国マスコミもよく報道していました。残念ながら、「春風接人」と「鷙鳥不群」が紹介されていないようで、菅総理の「意志あれば道あり」のみを紹介しているようです。  

昔の日本の政治家は、中国古典を精通する方が多かったようである。中国人にとって、田中角栄元首相は馴染みのある人物です。なせなら、中国との国交正常化は田中内閣で実現したからです。45年前に、田中角栄氏が訪中した際に、毛沢東・周恩来らに漢詩を贈り、毛沢東が田中角栄氏に「楚辞集注」大巻を贈りました。両国の政治家が自らの手で共通の文化を織り、そのおかげで、厄介な領土問題などでも円滑に話し合えました。 文化の受容と理解があってこそ、政治的な知恵が生まれるわけです。

現在の日中関係において、日中両国の政治家の中、田中角栄氏のような先見力・包容力ある政治家がいたらとつくづく思います。「友情」と「文化」を欠いたら、目の前の利益にこだわってしまいます。 近年、中国側が日中関係を語る際、よく「戦略的互恵関係」と表現。つまり、利益を優先すること。そして、利益に関して、噛み合わないことがあったら、互いに急にそっぽを向いたり、怒り出したりします。  

70年代と80年代、日本と中国の政治・外交の中、政治家の間に友情と文化が交じり合って、誠に素晴らしかったのです。今の日中の政治関係には足りないものは「友情」と「文化」であるかもしれません。  

中国の指導者たちの座右の銘を語ってみます。毛沢東の座右の銘は「為人民服務」、1944年9月8日の毛沢東の演説から生まれたスローガンです。「人民に奉仕する」という意味です。 

現在の習近平国家主席の「座右の銘」は「不忘初心、牢記使命」(初心を忘れず、使命を胸に刻む)。「座右の銘」というより、思想・イデオロギーというほうがふさわしいと思われます。  

2017年10月18日、中国共产党第十九次全国代表大会の期間中、習近平国家主席は報告書の中で、「初心を忘れず、使命を忘れず」を主題に党の教育を行い、革新的な理論で党員たちの心を武装させたといいます。 2019年6月、全国人民代表大会常務委員会の会議では、「党中央が、『初心を忘れず、使命を胸に刻む』という主題教育の推進を決定しました。この教育は新しい時代の党の歴史使命の実現に向けて、党全体がより奮闘するための重要な要素」と決定されました。  

というわけで、中国の指導者たちは自分の思想を世の中に出したいのです。100年後も続く精神的な遺産をこの世に残したいとみられますが、民衆はどういう風それらの思想を受け止めるのか、まだまだ未知数です。