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住職5分間法話(R3年元旦更新) 「ギブ・アンド・ギブ」②

2020.12.28 15:24


 昨年、東京大学医学部教授・矢作(やはぎ)直樹先生のことば「人生はギブ・アンド・ギブ 惜しみなく与え続けると 全く別のところからギフトが届く」をご紹介しました。

私が、中学生の初めに英語を習い始めて以来、ギブ・アンド・テイクに慣れ親しんできた私にとっては、衝撃的な言葉でした。社会の中でも、友人・知人の仲でも、良好な人間関係を築いていくには、貰ったらお返しするという、いわば、持ちつ持たれつ、ギフ・アンド・テイクの心がけがないと、ケチだとか、礼儀知らずと言われかねず、たいていは、人間関係は悪化するものです。たとえ、無償の行為であっても、心のどこかで、お返しを期待していて、お返しが全くないと、……してあげているのに、「…のに」「…のに」と清浄な行為のどこかにも濁りの心が湧いてくるものです。「惜しみなく」という行為は至難なことです。

 矢作先生の言葉に出会って、「ギブ・アンド・テイク」について、いろいろと調べました。日本は島国で、外国との釣り合いのとれた輸出入の取引が必要であって、そこから生まれた言葉であったことを学びました。

 「…のに」という心を起こさないためには、全く見返りを期待せず、私が持っているものを、ただひたすらに喜んでして差し上げると言う、

行為の中にこそ、期待しなくても、「全く別のところから」―、どこからか、見ず知らずの誰かから、ひょっとすると、自らの心の中から自らにギフトが届くものだと思っています。

 仏教が大切にしている「布施」の「布」は、「広く」「多くの人」にという意味です。「施」は「喜捨」という意味です。私が持っているものを「喜んで我が身から切り離して、人にさしあげる」と言うことばです。「貰ってくださってありがとう」「受け取っていただいてありがとうございます」の心持ちこそが、「ギブ・アンド・ギブ」の心の神髄であろうと思っています。

 芭蕉俳句 「山路きて何やらゆかし菫草」