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自分以外の匂い。

2020.12.29 19:55



年末の大掃除。



私は家族の布団の

「シーツ剥がし」を任命された。


寝室に着いた私は、

自分、姉、母、父の順に

4人分のシーツを剥がす。


飼い猫は布団ではないので

「シーツは剥がし」はない。




「えいっ!」と

自分のシーツを剥がしたとき、

ある匂いがした。





「自分の匂い」である。





私は不思議だった。


普段、自分を嗅いでみても

「自分の匂い」はしないのに

布団は濃縮された自分の匂いがする。


そしてその濃色された

「自分の匂い」は

とても落ち着く匂いで、安心すら感じる。


と、

自分のシーツを

嗅ぎ続けるわけにもいかないので

姉、母、父の順にシーツをはがす。


自分のシーツほどいい匂いに

感じなかったが、

姉も、母も、父のシーツも

別に何とも思わなかった。


このことを話したら、

おそらく父は喜ぶと思う。


娘と言うのは大体

父親の匂いを嫌がるらしいが、

私は嫌とも何とも感じなかったからだ。









「女性は男性の体臭の好き嫌いを

遺伝子レベルで決めている」

という説を聞いたことがある。


女性が「何となく良い匂いがする」と

惹かれる男性は、実は遺伝子レベルで

相性が良い人なのだそう。



「自分の匂いが一番いい」と

言うわけではないが、いつか

自分以外の人の匂いを「いい匂い」

と思える日が来るのだろうか。


シャンプーの匂いでも

香水の匂いでもない


その人自身の匂い。



瑛斗さんの「香水」という曲があるが、

その人自身の匂いなら、

相手を思い出さずに済むかもしれない。


なぜならその匂いは

世界で唯一の匂いだから。


そんな世界で唯一の匂いに

いつか私は出逢えるのだろうか。


そしてその世界で唯一の匂いは

どんな匂いなのだろうか。




そんなことを考えながら私は

洗濯機にシーツを入れた。