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これまでと、これから。卒業を前に思うこと。2年生インタビュー #1(村上佳、池亀瑠真、小林彩)

2021.01.20 13:15

こんにちは!研修科1年の山田奈津子です。

いつも研修科の応援ありがとうございます。


次回発表会『萩家の三姉妹』で卒業となる研修科2年生(58期)。

卒業を前に、それぞれどんな思いで芝居に臨んでいるのか、インタビューをしてまいりました。

その模様を4回にわたってお届けしていきます。ぜひ最後までご覧ください!


それではどうぞ!!


第1回目となる今回は「荏田宏和役(B)/日高聡史役(A)、村上佳」「日高文絵役、小林彩」「萩仲子役(A)、池亀瑠真」にお話を伺いました。

(左から村上佳小林彩池亀瑠真

① 『萩家の三姉妹』について

―まず『萩家の三姉妹』(以下、『萩家』と省略します)を読んだ時、どんな印象でしたか?


村上

初めて読んだ時、純粋に面白い、笑えるポイントがいっぱいあると思った。

58期は現代劇は初めてだったから、すごく楽しみ。


小林

私は初めてこの作品を読んだときに、現代の、普段のリズム感の会話が素敵だなって思ったんですけど、いざ読み合わせをして、まったく簡単な作品じゃないんだなっていうのを感じています。シンプルだからむずかしいなって。でも初めて現代劇をやれるのはうれしいです。



ーでは、ご自分の役のこと、現在稽古場で感じていることを教えてください。


村上

自分の役は荏田宏和と日高聡史。去年、松本祐子さん演出で『かもめ』のシャムラーエフっていう役をやらせてもらったけど、宏和とシャムラーエフはリンクする部分が多いなって思った。会話のラインがズレてしまってる、みたいな。でも去年はディティールに拘らず、ある意味勢いでやっちゃってた自分がいて。だから今回自分にとってすごく課題なのが、しっかり理屈、筋道、芯があってズレてしまってるというのを細かく作り上げていくこと。ある意味再トライみたいな気持ちです。

で、聡史に関しては、自分と違う人間だからすごく難しいなと……。なぜそういう思考になったのか、そういう言葉がなぜ出てきてしまうのか。それこそ祐子さんがインタビューで仰ってたけど、役の履歴書を綿密に作り上げないと滲み出ない聡史の何かがあると思うので、頑張らないとと思っているところです。


小林

自分の役(文絵)については、配役されそうだなって予想はあったんですけど、やっぱり佳くんが仰ってたような、役の履歴書みたいなことを私も作り上げてちゃんと舞台の上に立っていられるように努力したいと思います。


池亀

私は言語化をするのがすごく苦手だから、仲子の「嫌い!」が口に出ることとか、「彼が好き!」と主張できること、自分の気持ちを言えるっていうのがすごいなぁと思っていて。だから勝手に配役で仲子はこないだろうなと思ってたの。だから今、闘い(笑) 闘いが勃発してる。

そういう意味で、私はみんなに甘えてたんだなって自覚できた。「言葉にしなくてもわかってもらえてた、支えられてたんだな私」って(笑)。

だから今回は私が支えます!ぐらいの強気でいつも以上に意見交換して、悔いのないものを作りたいなと思います。


村上

58期はメインの役をやることが少なかったと思うんだけど、だからこそ今回は苦労することが多いと思う。でもこの卒業公演でしっかり殻が破れるんじゃないかな。もちろん自分も含めてみんなの枠が大きくなったらいいなと思って、不安もあるけど楽しみの方が大きいです。


池亀

研修科で一緒に二年間やってきたけど、みんなの知らない一面がまた見られそうな気がすごくしてる。

(村上佳)



② 演劇との出会い、文学座との出会い

―では、みなさんが役者を志したきっかけを教えてください。


村上

僕は、中学・高校に戻りたいって思ったことが一番大きいのかなと思ってる。一クラス3,40人くらいの、ああいう場がすごい特別だったなって卒業した後に思って、これをもう一回味わうにはどうしたらいいんだろうと。

それと小さなきっかけかもしれないけど、ギターを高校から始めてライブをよくしてたんです。その頃から人前でパフォーマンスすることに興味が湧いてきて。

で、大学いるうちに自由な時間が増えてきたから、ちょっと演技のワークショップみたいなの受けてみよっかなって、で受けてみたらめっちゃおもろい!と思って、芝居を始めて……。


小林

私はずっと、学校とかで、人とコミュケーションをとる方法が分からなくて、しょうがないから黙っている人でした。だから、人と喋ったりする事に憧れていました。

演劇に興味を持ったのは、そのせいかもしれません。


池亀

私は小さい時から本を読んだりアニメを見たりするのがすごく好きで、今思えばずっとこの世界に飛び込みたいと思ってたんだと思う。

でも「表現する世界に自分が飛び込むことはおこがましいんじゃないか」って気持ちがあって。それは幼少期、芸術鑑賞会でしか演劇を観る機会がなかったから、「演劇は特別なもの、ハードルが高い」って思い込んでたから。

だから自分がそういうのを作る側にまわるっていう発想がずっとなかったの。

でも高校の時に入った演劇部が楽しくて。次第に私も芝居していいのかな……なーんて思い始めて、気がつけば今芝居やってる。


ーありがとうございます。では文学座を選んだきっかけは何でしたか?


村上

僕は地元が大阪なんだけど、大阪で芝居やるよりもいっそ東京に出てちゃんと全部ゼロから始めようと思って、大学卒業した後、東京に出てきた。で、一年間はフリーで全然右も左も分からないみたいな感じで過ごして。

そしたら東京で役者やってる高校の先輩に「文学座の研究所受けてみたら?」って言われて、どんなんやろうって調べたら丁度願書受付ぎりぎりぐらいの時で。このタイミングで見つけたのも何かの縁かなぁと思って応募したんです。それで試験を受けにアトリエに行ったら「めっちゃええなここ!」って思った。ここでお世話になれたらありがたいなと思ってたら受かったので、喜んで習わさしてもらいますみたいな感じでした。


小林

私は大学で演劇サークルに入ってみて、大学卒業後も、演じることをやってみたいなって思ったんです。

俳優という就職先はなかったので、演劇とつながりそうな職種を探して、舞台スタッフの会社などの試験を受けていました。

でも、どこも受からなくて……。

諦めるしかないのかなと思っていた時、文学座に研究所があることを知りました。

演劇を仕事につなげられる場所かもしれないと思いました。

あと、アトリエでの試験がすごくいい雰囲気でした。朗らかな人たちばかりで、試験なのに試験じゃないみたいで、面白かったです。


村上

俺もそれ思った、試験がよかったなって思って……。審査員が演出家の人たちやったけど、なんか、雰囲気のいいところやなと……。


―緊張はしませんでしたか?


村上

めっちゃ緊張した。(笑) あの、歌うたうやん? 声はちゃんと出てたけど、指先まで痺れて……。その時、祐子さんが進行してはって、俺がめっちゃ気持ちよく歌ってるみたいな感じで捉えてくれて「ハイありがとありがとー、気持ちよく歌ってるところ」みたいな感じで止められた。なんか鮮明に覚えてるなあ試験は。


小林

私も緊張はあったと思うんですけど……そのせいでガッチガチになっちゃうみたいなことはなかった。楽しかったです。


池亀

私は初めてアトリエの公演を観た時に「自分もあそこに立ちたいな」と思ったんだよね。それであそこに立つには何をすればいいんだ?と考えた時に、「もう本科受けるしか!」って試験を受けたの。

アトリエっていう空間が好き。立ちたかった。


村上

アトリエってやっぱ、初めて見たら「特別な空間」って感じがすると思う。


池亀

ほかの劇場よりめちゃめちゃ良く見える。なんなんだろうね?なんかあったかい感じ。


村上

試験のとき客電みたいなライトが点いてたんやけど、なんかあったかいライトやなぁみたいな気持ちはしてた。

(小林彩)


③ 研究所での三年間

―では次に、本科と研修科の三年間で一番印象に残っていることを教えてください。


村上

一番覚えてるのは、本科の5月頃、高橋正徳さんが講師で『ガラスの動物園』をシーンスタディーで取り上げてくださったときに、ボロカスに言われたこと。めっちゃボロカス言われたからこそ、自分のやろうとしてる芝居がなんか違うってことに気付けたし、バチコンって軌道修正してもらえたみたいな感じがあって。「やべー、俺めっちゃできへん奴やな」って思って、その悔しい思いを研究所入って早々さしてもらえたのは、すごいありがたかったな。腹の底からガラッと変えてくれた感じ。


小林

一番の衝撃だったことは、やっぱり中村彰男さんの授業で……彰男さんがいらっしゃるまでの間は、"音としてのセリフ"っていうのが分からなくて、「音を変えるんだよ」っていうことがすごく衝撃だった。俳優の人はそんなことをやっているのか、っていう。


池亀

私は研修科一年の時に参加させてもらった*こどもフェスティバルが印象に残ってて。すごく楽しかったの。


小林

楽しかった。


池亀

楽しかったよね?

『阿Q外傳』とか、岸田の発表会とかもそうなんだけど、座員さんが一緒に作品に関わってくださったときは研修生だけの時と空気感が変わるじゃん。そういう緊張感が楽しかったのかなって。

私が参加したこどもフェスの『初天神』は、上演前に来てくれたちびっ子達が絵を描く時間があったり、うちわを作る時間があって。そこでちびっ子とお話ししたり関われたことが新鮮だったし嬉しかった。

作ったうちわを使ってちびっ子達に劇中助けてもらうんだけど、ヒーローショーでみてきた「力を貸して!」っていう一体感を味わった。その都度都度のちびっ子達のパワーを浴びて、みんなで作ってるって実感したの。

色んな人と関わって、パワーをもらって、文学座が好きになった。


(池亀瑠真)



*こどもフェスティバル……2012年から始まった文学座有志の企画。


④58期の"これから"

ーでは、これから先やってみたい役や作品、将来こういう役者になりたいなど、皆さんの目標を教えてください。


村上

役者像を一つ挙げるなら渥美清さんの寅さんかな。"男はつらいよ"シリーズが大好きだからってだけの理由なんだけど、社会的にはダメ人間でも人としてとても温かい、ああいう役ができるようになりたいなとか思う。

でも今は、「求められるものをやりたいな」と思う。本科から3年間いくつか役を演じて、自分に近い役・遠い役ってことは感じるけど、果たして自分の表現の枠はどれくらいなのか未だに掴めていないって思っていて。だから今は自分がこういう役者になりたい!っていうのは置いといて、これやってくださいって言われたら、「分かりました、全うします。」というようなスタンスでいたい。

(2020年度 第一回発表会『村で一番の栗の木』

撮影:椋尾詩)


ー目の前の役を、ひとつずつ丁寧にということでしょうか。


村上

うん、とにかくエゴを控えめに、役と真っ向から向き合いたいって感じかな。自分の知らない表現がどれぐらいあるのかを見つけたいというか。俺はこうなりたいんだ!って思ったらたぶん枠がせまくなって、全然違う役もそっちに引っ張ってきちゃう気がして。


小林

私は作品に忠実に従って、作品の良さを引き出せる俳優になりたいです。

作品の一部のパーツとして存在できる俳優になりたいです。

でもその前に、漠然としていますが、人間になりたいです。


(2020年度 第一回発表会『秋の対話』

撮影:椋尾詩)


池亀

役者としてはもちろんなんだけど、人として立派になりたいなと思ってる。

研究所に3年間通って芝居ができたことは、ありがたいことに親の応援があるからで、自分の好きなことをやらせてもらっているからには、なにか形にして親に返したいな、返さないといけないなとずっと思っていて。

でもまだ努力が足りなくて、ぜんぜん返せてない。いずれこのもらったものを親とか同じ座組の人とか、関わった人たちに返していける人になりたいです。


ーありがとうございます。

ちなみに、今後やってみたい役などはありますか?


小林

『萩家』で言ったら、挑戦してみたいのは鷹子みたいな人です。自分と一番かけ離れた、一番やりにくい役をやってみたいです。


村上

やってみたいのは、『萩家』で言うと徳次とか。職人気質、江戸っ子みたいな。それこそ寅さんとかになっちゃうんだけど、そういう役ってめちゃくちゃたのしいやろなって思って。登場人物って全員そうなんだろうけど、生きることに情熱がある、活力にあふれてる、そういう人物をやりたいなって思う。


池亀

やりたい役やりたい役…。なんだろう。 


ー個人的には皆さんの悪役とかを見てみたいです。


池亀

あ!それで思い出した!

いままでの舞台写真見るとわかると思うんだけど、私悪い顔ばっかりなの(笑) すごく気に入ってるんだけど、でも…ね……?(笑)


村上

(『るつぼ』の)パトナム夫人?


池亀

パトナム夫人もそうだね(笑)

『阿Q外傳』とか『かもめ』でもすごい悪い顔でうつってて(笑)

なんだろうね、どの役でも悪い顔してる私でも、温厚な役だったら悪い顔しないですむのかな?


ーありがとうございます(笑)

(2019年度 第57期研修科卒業発表会『かもめ』

撮影:宮川舞子)


⑤58期から59期へ

ーでは最後に、59期生に対してメッセージをお願いします。


村上

59期は目を引く人が多いなって思う。存在感があって、芝居だけ磨いてもどうしようもない舞台上でのあり方、そういうのを持ってる人が多いなって。個性もしっかりあるし。だから59期の中でしっかり意見を交えて、ケンカするようなことがあってもいいと思うし、そういうことをしたらすごい相乗効果が生まれる代なんだろうな。今まで公演2回やったけどやっぱ面白かったし。来年2年生になるとまたちょっとスタンスが変わるやろうし。後輩ができて、引っ張っていかないといけないっていうのもあるやろし、いい役につくこともたぶんきっともっと増えてくるやろうから、そこでどう科学反応が起こっていくんやろなっていうのが楽しみだなって思ってます。


小林

私も、魅力的な人がたくさんいて、すごく嬉

しかったんです。

『るつぼ』ではじめて一緒に一つの作品を作

って、稽古が毎日刺激的で。なんていう

か、新しい風がさーって来て。

1年とか2年とかそういうんじゃなくて、むしろ先輩みたいで、見習いたい所をたくさん持ってる人たちだなって思います。


池亀

今年はみんなで安心して公演ができるようにずっと気をつけていたから、みんなでどこかに一緒に行くとかできなかったじゃん。

だから稽古場にいる時の感じしか知らないし、正直、まだ私が知らない一面の方が多いんだろうなって。

でも、一生懸命なところだったり、自分の意見をちゃんと言えてぶつかれることを一緒に過ごして知っているから、みんな尊敬してる。

自分にないものを持っている人がたくさんいるから。だから今年の研修科が始まった時、みんなからなにかをもらう、盗みたいなって思ってた。できたかな?(笑)難しいね。


小林

難しい。


村上

でも、去年もインタビューで先輩たちに同じように聞いたら、「(58期は)我が少ない」「もっと主張していけ」みたいなことを言われて。この1年間でどう変われたかはわからんけども、やっぱり58期は我が少ない、主張が少ないっていう自覚がある。だから、そういうのを踏まえると59期の人らはやっぱり、「自分はこういう芝居がしたい」みたいなのを持ってるから、いいなぁって思えるな。思える代っていう印象があります。



ーありがとうございました!!



インタビュー:山岡隆之介山田奈津子

写真:山田奈津子

記事編成:山田奈津子


※この記事はインタビューを元に再編成したものです。


■研修科卒業発表会■

『萩家の三姉妹』

作:永井 愛 演出:松本祐子

日程:2021年1月21日(木)~24日(日) 予定

場所:文学座アトリエ



◆発表会における新型コロナウイルス感染予防対策について◆

発表会実施にあたり、政府が発出した緊急事態宣言、および東京都の新型コロナウイルス感染予防、拡大防止策を鑑みて、 卒業発表会の一般予約を受け付けず、関係者のみの対応とさせていただきます。何卒ご了承ください。 今後の状況次第では変更、中止を余儀なくされる可能性もございます。

研究所発表会を楽しみにされていた皆様には改めてお詫び申し上げます。

※文学座HPより