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想作あれこれ

「空中マンション」

2021.01.01 04:21


大きな神殿だけでは物足りず

バビロンで王妃は故郷の森を懐かしむ

ここは日当りが悪く洗濯物も乾かない

いつだって声は神にはとどかないで

隣にとどいてしまうのです


駐車場からマンションを見上げると

不思議でもない不思議が浮かんでいる

多すぎるドアの奥に同じような玄関がやっぱりあること

そんなこと

車の下にはふくよかな猫達が共同生活を営んでいて

一番の顔なじみになった虎模様は時折じっと見つめてくるので

こちらも無言で見つめてやるのです


30年前に刑事ドラマで使われた螺旋階段も

神代に行われた身投げも

神話となっては話ばかりで

本当にあったのかなんてわかるわけないけれど

そんな話が王妃の心を慰めることに

王も家来も気がつかないで忙しそう

せっかくの狭い庭の草は伸びっぱなしで

暇なわけでもないけれど申し訳なくて

夜鳴きの猫がうらめしく思うのです


子供たちが階段を駆け上がり

屋上からどこかの花火を見ようとする

どの子がどのドアから飛び出したのか知らないけれど

ここもまんざら悪くない

夜に泣くのは猫だか赤ん坊だか

どっちがどっちかわからない不思議

今夜携帯電話でその話をしよう