胃痛の症例
正月2日は妻の実家に行くことが慣例になっており、今年はお昼に集まってみんなで食事しようということで、我が家は少し遅れるので先に始めてもらっていたのですが、到着するや否や妻の姉が胃痛で調子が悪く横になって休んでいるので治療をすることに。
診察診断
脉状診 浮、数、虚、細。
腹診 腎肺虚、脾心実、肝平。
比較脉診 腎肺虚、脾心実、肝平。
腹証・脉証共に腎虚証になっていました。
腎虚で胃痛だから命門の陽気不足が考えられるので、この2~3日冷え込んだ覚えはないかを尋ねると、大晦日から初日の出を見に和歌山の南の方の奥地で車中泊をしたとのこと。
エンジンのかけっぱなしは怖いので停止して一晩過ごしたので凄く寒かったそう。
寒邪は陰の邪気です。
陰の部である地、即ち足元から入ってきます。
この冷えが下焦に在る腎の陽気、命門の火を弱らせると胃痛が生じます。
胃は鍋です。
命門は竈の火です。
竈の火が勢いよく燃えれば、鍋の中の具はよく煮炊きできます。
このようであれば、胃はよく消化します。
命門が弱ると、竈の火の勢いがなくなって鍋の中の具をよく炊けないように、胃の消化が悪くなります。
病因病理は、命門の陽気不足による消化不良による胃痛と診立てました。
証決定 腎虚証。
適応側の判定 未来弁証にて右。胃の裏の背中のはりをモニターしながら、左右の陰谷を取穴して緩む側を確認して判定しました。
用鍼の決定 出先でてい鍼しか持ち合わせていなかったので刺さない鍼を使用。
本治法 イトウメディカル社製中野てい鍼柳下モデル95㍉で右陰谷、右尺沢を補法。柳下圓鍼で左豊隆を瀉法。
標治法 背中のはりをチタン×アルミの異種金属圓鍼トルネード鍼法で緩める。
最後に、中脘穴→非適応側の天枢→適応側の天枢→下腹部正中の最も虚した箇所に止め鍼をしてドーゼの過ぎたると及ばざるを調節し、百会左斜め2~3㍉後ろの陥凹部にセーブ鍼して治療効果を保存して終了。
☑反省と考察 腎には水(元陰)と火(元陽)が在ります。
天一水を生じます。
水の性は陰ですので、下に降りて臍下丹田腎間の陽気に根ざします。
これを腎精とします。
あらゆる細胞・組織・器官・臓腑・経絡・四肢・百骸を潤し養います。
故に元陰です。
水だけだと冷えてしまうので、元々陽気が備わり水中を適温にします。
これを命門の火とします。
あらゆる細胞・組織・器官・臓腑・経絡・四肢・百骸を温め活動力を与えます。
故に元陽です。
腎の陰陽が渾然一体となって、生命力の根元的エネルギーである生気の原を発動します。
陰>陽で冷えます。機能が抑制されます。
陽>陰で熱を持ちます。機能が亢進します。
後は工夫してください。
姉上のお力になれてよかったです。
鍼灸師は自分のまわりの大切な人たちを救うことができる素敵なお仕事です。