美容の実力 ストレスによる「すり鉢毛穴」と「面ジワ」
女性の就業人口の増加に伴いストレスを抱える方が多く見受けられ、それにより肌トラブルで悩む方が増加している。ストレスによる肌荒れの特徴とそのメカニズムについて解説する。
【ストレスと炎症反応】
人はストレスがかかると体では交感神経が優位になり、血管が収縮して血流は低下する。血行不良が起きた皮膚では、バリア機能は低下し角層水分蒸散量が増加するだけではなく、炎症が起こることが知られている。
本来、炎症反応は紫外線や摩擦などの外部刺激に対して生体に備わっている防御反応であるが、近年、生体内の炎症反応が完全に収束せず、炎症が慢性化することでさまざまな皮膚トラブルを引き起こすことがわかっている。
【表皮細胞の異常増殖】
表皮の細胞が新しくつくられるところは、表皮最下層の基底層である。基底層でつくられた細胞は次につくられる新しい細胞に押し上げられるように皮膚の表面に向かって移動していく。そうして次々と形を変えて基底層から最後に角層の表面から角片として剥がれて落ちる。正常な成熟した細胞の場合は、表皮は約28日周期で常に新しい細胞に生まれ変わっている。この新陳代謝を表皮のターンオーバーといっている。
一方、ストレスのあるゆらぎ肌では表皮のターンオーバー速度が異常に速くなり、ゆっくりとした繁殖、分化が起きないため、正常に形成されていない未熟な角層細胞がつくられる。未熟な角層細胞は皮膚表面から角片の剥脱ができず角層は厚みを残しくすみ始める。つまり炎症によって細胞の増殖が盛んになったことの結果を示す。
【すり鉢毛穴】
外観上の目立つ毛穴は毛穴自体が大きくなっているわけではなく、毛穴の周りの皮膚が削られたようなすり鉢状構造になっている。
ストレスによって皮脂分泌量は異常に多くなることがわかっており、毛穴の目立つ皮膚は特に不飽和脂肪酸※が多い。皮脂にはさまざまな成分があるが、中でも不飽和脂肪酸は皮膚の上にあると、細胞に炎症を起こすシグナルを分泌させて、未成熟な細胞の発生要因として働き、毛穴の形状に悪影響をもたらす。
※不飽和脂肪酸・・・植物や魚の脂に多く含まれるもの。体内で合成できないため摂取する必要がある。
【面ジワ】
面ジワとは年齢に関係なく、額や目の下に広範囲に広がる細かいシワのことである。
皮膚に適度な保湿が保たれていない皮膚は、バリア機能が低下するため刺激に敏感になるだけでなく、炎症の引き金となる原因物質が表皮最上層に溜まるため、少しの刺激でも炎症を起こしやすくなり慢性的な炎症状態となる。
こういう状態の皮膚では、皮膚表面にある角層をつくる角化細胞※が硬くなることがわかっている。しなやかさを失った角層に表情の微細な動きが加わることで角層に亀裂が生じる。一度亀裂が入り折れた角層は元の形状に戻らず、そのままゆらぎ肌特有の面ジワとなってしまう。さらに皮膚炎症は真皮にあるエラスチンやコラーゲンを変性させて、弾力低下を引き起こす。
※角化細胞・・・表皮は外側から角層、顆粒層、有棘層、基底層の四つの層からなっており、その大部分を角化細胞(ケラチノサイト)と、それが変化した細胞が占めている。
【スキンケアの実際】
皮膚の吸湿性や保湿性が高いほど角片の剥脱に働く酵素が分泌上昇するため、角質が厚くなりごわついた皮膚には保湿剤を使うことで肌理の整った健康な状態に保つことができる。
炎症刺激で代謝亢進のあるゆらぎ肌は、皮脂量をコントロールして炎症を止める対策が必要になる。おすすめの化粧品の有効成分はフラーレン、APPS(アプレシエ)、脂溶性ビタミンC、ライスパワー№.6、トラネキサム酸などがある。
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